14 メンバー追加
ふんわりとした声が、近づいて来た。昨日、席をひとつ空けてくれた女子……『弓槻 紗菜』さんだ。
あまり話したことがなくて思わず萎縮してしまったけれど、加地くんがさらっと会話を続けてくれた。
「天宮さんと深海がさ、『青春の実験』やってんだって」
加地くんは、昨日私が話した内容をほぼそのまま説明してくれた。最初は怪訝な顔をしていた弓槻さんが、徐々に顔を綻ばせていく。まるで蕾が花びらを広げていく過程のようだった。
「すごい! 何ソレ、面白そう! 応援したい! ていうか、私もやりたい!」
立候補すると言わんばかりに、弓槻さんが挙手をする。それに倣って、加地くんまで挙手した。
「俺も俺も。実験やってみたい」
「僕はかまいませんが……」
ナオヤくんはそう言って、私に視線を送ってくる。私こそ、二人が加入してもいいのか聞きたいんだけど……。
そもそも『青春の実験』なんかじゃないし。自分探しのためなんかじゃなく、自分じゃないもう一人になるための実験で、完全に趣旨が真逆だ。
それなのに、ナオヤくんは何でもないように二人からの質問に答えている。主な活動内容、加入条件など……なにかしらのサークル活動みたいだ。
「ナ……深海くんがいいなら、私もいいけど……」
「では、決まりですね。第二回目の実験は本日の放課後に決行予定です」
「了解!」
「了解です、隊長!」
サークルどころか軍隊になりつつある……。
「それで何だっけ? パティスリー『アリス』? いいね、私も行ってみたかった」
弓槻さんがそう言って、不敵な笑みを浮かべる。自信あり、といった様子だ。
「任せて。あそこのイチ押しスイーツはちゃんと調査済みだから」
悲鳴が上がるくらい辛いものを昨日食べたばかりだっていうのに。行動の振れ幅が大きすぎて、ついていけるか不安だ……そう思っていると、弓槻さんが首を傾げて、尋ねた。
「ところで……なんで実験でカフェのスイーツ?」
その問いに答えられる人間は、その場にはいなかった……。




