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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter2 『実験』の始まり
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13 常識の範囲

 次の日、学校に着くと、ナオヤくんは既に隣の席に着席済みだった。なんだか待ち構えられていたようで、落ち着かない。

 そして私の顔を見るなり、同じような無表情のまま、言う。

「今日は何の実験をしましょうか」

 今日も何かするのは、確定事項らしい。

 よく考えたら、昨日の『実験』は達成はしたけど、失敗だったような気もする。本物の愛だったら辛すぎるものは食べられなかったし、深海くんならきっとあの後完食していた。

 昨日の結果に満足していないのかもしれない。

「うーん、わかった。行こう」

「ありがとうございます」

「ううん。リストのほとんどは私がやることだし」

 私がそう言うと、ナオヤくんはふんわりと微笑んだ。まるで、深海くんがそこにいるようで、なんだか不思議な気分だ。

 そんな私とナオヤくんの間に、にゅっと誰かが割って入ってきた。

「おはよう! 昨日はありがとな!」

 加地くんだ。挨拶代わりに、お店のクーポンをくれた。今時珍しい紙の券だ。

「ありがとう。でも紙だとすぐにボロボロになっちゃわない?」

「ボロボロになる前に使いに来てくれたらいいから」

 なるほど、そういう魂胆か。去年から同じクラスだったけど、商売上手な面があるとは初めて知った。

 ナオヤくんはナオヤくんで、もらったクーポンをしげしげと見つめていた。

「この券……有効期限はいつですか?」

「別に期限なんてねえよ。好きなときに来てくれよ。激辛は……食べ過ぎない方がいいけど」

「善処します。あと、今日は行かないかもしれません。申し訳ない」

「いいって。んで、今日は何するんだ? やるんだろ、実験?」

「その予定です」

 加地くんはあのリストを見せて見せてとせがんでくる。ナオヤくんがあのリストをモニターに広げて見せると、どれどれと興味津々で覗き込んでいた。

「えーと……やっぱり簡単そうなやつから達成していくと、続けやすいよな。これなんか、いいんじゃないか?」

 いつの間に選定係になっていたのか、加地くんはモニターのリストを一つ指さしていた。そこに書かれていた項目は……


・パティスリー『アリス』のスイーツを全制覇

 

「昨日は激辛で、今日は甘いもの尽くし……振れ幅が大きすぎない?」

「でもこれ簡単じゃん。天宮さん、辛いのはダメでも甘いのは好きとかねえの?」

「甘いものも辛いものも好きだよ。あくまで常識の範囲内で……」

「ああ、昨日の深海は規格外だったな」

「何がですか?」

 きょとんとするナオヤくんを前に、私と加地くんはちょっとだけ頭痛を覚えていた。加地くんも、あのメニューを頼んだ大半のお客さんは汗だくで顔を真っ赤にして帰って行くし、そうさせるために作っていると言っていた。まさか汗ひとつかかず嬉々として頬張る人間がいるとは思わなかったらしい。神妙な顔でそっと聞いてくる。

「甘いものでも規格外だったらどうする?」

「私に聞かれても……」

 昨日の麻婆豆腐を何かしらのスイーツメニューに置き換えて想像して……ちょっとゾッとしてしまった。ああでも、昨日と同じ状況になる可能性があるから、私がついていないと……そう、思った。

「なになに? 何の話? スイーツ?」


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