12 危険信号
わたしたちが 目を見合わせているのにも気付かずに、ナオヤくんはもう一口、すくっていた。さっきよりもちょっとだけ多い。
「美味しいです。舌がピリピリするところが刺激的で……」
「あ、そう……?」
普段辛いものは得意な方の私ですら音を上げた辛さなのに? しかもさっき、刺激の強いものは食べられないと言っていたのに? その口で『刺激的』と称賛するとはなんだか不可解だけど……美味しいのなら、いいのかな。そう、思わざるを得ない様子だった。
私が迷っている間にも、ナオヤくんは食べていた。私が一口でリタイヤしかかっていた料理を、次々頬張ろうとする。
「す、ストップ! ナオヤくん、それ以上は……!」
「……あ」
私が止めると、ナオヤくんははっとしてレンゲを置いた。どうも美味しさのあまり無意識で食べていたようだ。とっても危険だ……。
止まってくれて良かった。
「危ないところでした。さすがにこれ以上は、健康に支障をきたします」
「うん、うん。あとは私が完食するから」
そう言って、そろっとレンゲとお皿をナオヤくんから取り上げた。そして入れ替わるように、ナオヤくんの目の前に牛乳のコップが置かれた。加地くんが用意してくれたみたいだ。
「これ飲んどけ。ちょっとはマシになるんじゃないか?」
「ありがとうございます。でも、あの刺激をなかったことにするのは、忍びないですね」
「いいから飲め。命のために」
「……はい」
その言葉が大袈裟でもなさそうな辛さだから余計に、大人しく飲んでくれてホッとした。それは加地くんも同じだったようで、ため息を漏らした私と目が合った。そして、苦笑いを浮かべながら言うのだった。
「大変だな」
私は曖昧に笑い返すしかできなかったけど、ナオヤくんは何故か大きく頷いていた。
「確かに大変ですね。挑戦するにも、毎回、限度を考えなければ」
「ああ、うん……そうだね」
ちらりとテーブルを向く。お皿の上に、真っ赤な要理がまだ半分以上残っている。挑める選手は、もはや私一人。
「よし……じゃあ残りの『激辛』は私が攻略するぞ!」
グッと気合いを入れた。この気分のまま、実験を本当に成功に導こうと、私は渾身の力で挑んだのだった。
結果は……。なんとか完食。牛乳やお菓子をつけてもらっての、だいぶオマケの敢闘だった。
どっと疲れた私の前で、ナオヤくんはまたあのリストを端末から開いていた。そして私にも見えるように広げると、指で画面に触れた。
ナオヤくんの指を感知して、その動きに合わせて色が塗られていく。
そして『辛いものを克服する』と『寄り道をする』の項目が、マーカーのように赤く塗りつぶされたのだった。
「この二つは、実験成功ですね」
何を以て成功としているのか、よくわからなかった。けれど、無表情な中にも満足そうに声を弾ませる様子を見ていたら、こだわる必要はないかと思えた。
わかりにくいけれど、今、ナオヤくんは楽しいのでは? そう思ったら、なんだか私も、胸の奥がぽかぽかして、ふわりと軽やかな気分になった。




