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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter2 『実験』の始まり
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9 実食

 ナオヤくんは恭しくレンゲを差し出してきた。奇妙なレディーファーストに、ほんのちょっと眉をしかめながら、私はそのレンゲを受け取った。その後、ナオヤくんがご丁寧にお皿の中をきれいにかき混ぜて均一にしてくれた。

 この真っ赤な料理を口に入れなければいけない。そう思うと、手が震えた。

 だけど注文してしまったし、何より目の前のナオヤくんの視線が突き刺さる。いつ食べるんだろう、どんな顔をするんだろう、食べたらなんて言うんだろう……そう考えているのがありありと見て取れる視線だ。

 ごくり、とつばを飲み込む。そして、レンゲを握る手にぐっと力を込め、思い切って真っ赤な海へと真っ白なれんげを鎮めた。

 いざ、実食――!

 肉と大量の調味料(全部が全部、舌が焼けそうに辛い)によってマグマみたいに真っ赤な餡と、その中においてまだ純白を保つ豆腐を、よーく混ぜて絡めて、レンゲにすくう。とろんとした餡が、したたり落ちる。

 レンゲごと真っ赤にそまったそれを、ぱくっと一気に頬張る。思ったほどは辛くない。なんだか拍子抜けだなと思って、もう一口すくった、その時だった。

「う……か、から……っ!!」

 徐々に、辛さが増してくる。一旦引いた波がどどんと押し寄せてきて舌を覆い尽くすようだった。普段、担々麺なんかの辛いものは苦手じゃないのに、このひと口はとても耐えられるものじゃなかった。

 衝撃と舌の痺れで、「辛い」と言うことすらできない。

「大丈夫ですか」

 ナオヤくんはそっと水のコップを差し出した。一気に飲み干すけれど、辛味からくる痛みはいっこうに引かない。

「あ、すみません。辛味に水は逆効果なんでした」

「……わざとじゃないよね……!?」

「まさか。反応が遅れると言ったじゃないですか」

 咄嗟の気遣いにまで影響するとは……いやでも、気を使ってくれたのは確かだから、怒れない。

 それに、店員さんに何か伝えている様子が見える。申し訳なさそうな顔を見るに、たぶん、悪気はないのだと思う。

 そんな考えを巡らせていると、ストンと、目の前にコップが置かれた。

「こっちをどうぞ。牛乳です。辛さが和らぎますよ」

「え、本当……?」

 目の前にあるコップには、真っ白な牛乳がなみなみと注がれていた。今度こそ、と信じて一気に飲んだ。

「……あ、ちょっとマシになった」

「乳製品はカプサイシンを分解する効果がありますから」

「あ、ありがとう……」

 お礼を言うと、ナオヤはほんの少し微笑んだ。安心した、と言いたげな顔だ。

 なんだか直視できなくて、俯いて牛乳をもう一口飲む。

「でも、牛乳なんてメニューにあった? 辛さを和らげるなら、激辛料理と一緒に飲んだら邪道なんじゃ……」

「彼に頼んだら快く了承してくれました」

「彼?」

 ナオヤくんが手で指し示した先には、高校生くらいの若い男性がいた。というか、同じクラスの男の子だ。

 呼ばれたと思ったのか、その男の子はこちらに手を振りながらぴょこっとやって来た。

「よ! 一時間ぶりくらい? ご贔屓にどうも」


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