表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter2 『実験』の始まり
18/114

8 挑戦

 目的のお店は学校の近くにあって、ゆっくり歩いてもそれほど時間はかからなかった。混み合う時間帯じゃなかったのか、すぐに店に入れたのは運が良かった。

 いざ入ってみると、なんだか緊張した。今までは店の看板を見ても、今は帰宅途中だからと目を逸らせていたから。そう、お母さんに『厳命』されていた。GPSまでつけて、寄り道なんて絶対にさせまいとしていたくらいだ。

 そんな過去があったせいで、本当に来て良かったんだろうか、なんて今更思ってしまっている。だけどナオヤくんは私の正面で悠々とメニュー端末を見ている。

「あった。これが噂の激辛料理ですね」

『伝説の麻婆豆腐』……メニュー画面にはそう書いてある。そしてわざわざ他の料理とは違う『激辛』という文字が躍っていた。

「はぁ、激辛……え? そんなの頼むの⁉」

 ぎょっとする私に、ナオヤくんはさらりと頷いた。

「大は小を兼ねると昔から言います。これを完食できれば、『辛いものを克服』できたことになるでしょう」

「なるだろうけど……そこまで極端にしなくても」

「ですが、メニューには普通の辛さのものと『激辛』しかありません。克服したと言える挑戦になるのはどちらか、明らかではないでしょうか?」

 確かに、普通のメニューの方も辛そうではあるけど、耐えられないほどではなさそう。私自身が辛いものが苦手ではないし、ここはより強いものに挑戦してみるべきなのかもしれない。

「『激辛』……でお願いします」

「わかりました」

 ナオヤくんは迷いなくそのメニューを選択したかと思うと、再び私に向けてメニュー端末を見せた。

「ここにあなたのリスト端末を読み込ませてください」

「なんで?」

「健康に関係するので血圧と脈拍のデータが必要なようです」

「はぁ……さすが激辛料理……って、私だけ測るの? てことは、私だけが食べるの?」

「……え? 辛いもの云々については愛さんの項目でしたよね?」

 言われてみれば、確かに。だけど二人のリストだって言うから、どれも二等分するものだとばかり思っていた……。

「僕はここまで刺激の強い料理は食べられません。それに脈拍も、僕が測るとオーダー拒否になる可能性があります」

 最後の一言に何かひっかかりを感じたけれども、今、重要なのはそこじゃない。

 ナオヤくんは私に親指を催促するばかりだ。逃げられそうにない。

 ここは、腹を括るしかない。そう思って、私は狸吸ったん松を読み込ませた。血圧などの数字と共に『Accepted(承りました)!』の文字が浮かぶのを確認する。

 それから、料理が届くまで時間はかからなかった。つまりは、心の準備をする時間も短かったわけだ。

 配膳ロボットはテーブルの真ん中に湯気の上るお皿を静かに置いた。真っ白なお皿に、燃え立つような真っ赤な麻婆豆腐がよく映える。色だけ見れば、純白の陶磁器の花瓶に生けた、大輪のバラのよう。もっとも、バラと同じく、だいぶ尖った部分があるみたいだけど。

「さあ、どうぞ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ