6 リストの共有
お弁当を食べ終えるといつも、いつもなら教室に帰ってゆったりする。
だけど今日は、手にしたリスト端末のメモを見てうんうん唸っていた。
試験勉強じゃない。買い物のメモでもない。
これは、この前ナオヤくんにも見せた『愛のやりたいことリスト』だ。ちなみに今はナオヤくんと権限を共有しているので、二人同時に見られるし、編集もできる。
今も、ナオヤは隣の席で同じメモを見て、何やら考え込んでいる。私よりもずっと楽しげに。
「ねえ、これ……本当にやるの?」
「もちろん」
即答だ。名案だと思っているらしい……。
先日ナオヤくんは提案した。自分たち二人でこのリストを実行していこうと。「これは愛さんの希望が詰まった、愛さんの声そのものです」と、そう主張している。
それを否定するつもりはない。私もそう思ったから大事に持っていたんだもの。
だけど、生きているときですらこんなにも違うのに、リストをなぞるだけで近づけるものなんだろうか。
そう思っていると、ナオヤくんはリストの一つを指さした。
「この項目は、消してもいいのでは?」
それは『元気な私を撮る』だ。
「先日、愛さんの自己紹介を撮っていたでしょう?」
「あれは……『愛』を撮ったことになるのかな?」
「少なくとも僕は、どちらかわかりませんでしたつまり、愛さんを再現できていたということでは?」
「う、う~ん……そうなのかな?」
私が迷っていると、ナオヤくんはさっと項目を指でなぞった。するすると文字にマーカーラインがひかれていく。
「他には……」
ナオヤくんはリストに視線を走らせる。
リストは、概ねこんな内容……
・元気な私を撮る
・学校帰りに寄り道
・辛いものを克服する
・パティスリー『アリス』のスイーツを全制覇
・サークル活動をする
・尚也くんに会う
「今のところはこんな感じですね」
「どれも、すぐにできるんじゃない?」
「この『尚也くんに会う』も完了でいいのでは?」
頷きそうになったけれど、肯定できなかった。愛の思う『尚也くん』が誰かを考えると……。
「これは、ちょっと置いとこうか」
「わかりました。保留ですね。では他を優先しましょうか」
ナオヤくんはさらりと言うが、疑問はまだある。
「あの……これ、愛のリストだよ? 深海くんの方はどうするの?」
私が尋ねると、ナオヤくんは「ふむ」と考え込んだ。そして……
「このリスト、追加してもいいでしょうか?」
きっと愛は二つ返事で了承すると思う。私が頷くと、ナオヤくんはファイルをコピーして、新しい方のファイルを開いた。
そこに追加したのは……
・友達をつくる
・誰かを笑わせる
「これ……深海くんはいつもやってたね」
「僕には難しいです」
確かに。そう思ったのが、顔に表れていたかもしれない。ナオヤくんの眉根がぴくんと動いた。
「やはり難易度の低いものから試していきましょう。まずは、これから……」
そう言ってナオヤは、リストを指さした。リストにある項目『学校帰りに寄り道』を。
そんなに気合いを入れて臨むものなのか。そう思っていたのだけれど……。




