2 ランチ
「カフェテリアに行くの? ランチボックスの予約してなかったの? 今から行ったら……混むよ?」
「問題ありません」
ナオヤくんは表情を微動だにせずに断言した。
カフェテリアでは当然、昼ご飯を提供しているのだから間違ってはいない。だけど昼までに予約しておくランチボックスと違って、昼休みに提供している一般メニューは競争率が高い。
こんな風に悠々と歩いていては、その熾烈な争いを勝ち抜けるはずもない。少なくとも転校してすぐはなかなかに茨の道だと思う。
そう言ったのだけど……
「ええ。ですが、『尚也』はいつもカフェテリアでその日その時食べたいメニューを買っていました。果敢に挑むのは、非常に『尚也』らしい行いです……おすすめはありますか?」
「ごめん。わからない」
私は手に持っているお弁当箱を見せた。幸か不幸か毎日持たされるので、カフェテリアのお世話になることが今までなかった。
「毎日、お弁当を?」
「うん、お母さんがね……食べないわけにいかないでしょ?」
「そういえば、愛さんとも、よく昼食をご一緒したと記録されています。その隣には確か、あなたもいましたね」
「……愛が行くところには、私もついていかないとね」
私は愛の側から離れることはできなかった。両親から愛を見ているようにといつも言われていた。それこそ産まれた時から。
刷り込みのように言われ続けてきて、それを疑問に思ったことなんて一度もなかった。
「そう言っていましたね。あの頃、愛さんは母親が作った弁当を持参し、あなたは別のものを購入していました」
「愛は……ほら、食事にも気を遣わないといけなかったから。お母さんは私にまで手が回らなかったの」
「今は、手が回ると?」
その言葉に、思わず呼吸を止めてしまった。何か言いたかったけれど、言わずに飲み込み、ただ視線だけナオヤくんに向けた。
ナオヤくんも、少しして、何か気付いたようだった。
「すみません。大変失礼なことを言いました」
「……わかってくれれば、いいよ。気をつけてね」
「はい。ただ……愛に関すること以外にも、またご迷惑をおかけするかもしれません」
「気をつけてって言ったそばから……」
「注意は十分にするつもりですが、その……後で説明します」
もしかして、ナオヤくん自身の生まれに関することで、何かあるんだろうか。
口をつぐんだのは、カフェテリアで大行列ができている光景を見てしまったからだろう。
全校生徒の半分が入れるほど広い店内だというのに、昼休みの今は、人で溢れかえっていた。座席は埋まっているし、外で食べるために並んでいる生徒たちも長蛇の列になっている。
「どうする? 挑む?」




