11 懺悔
いつの間に、撮っていたんだろう。
十四歳ということは、たぶん亡くなるほんの少し前だ。きっと、苦しかっただろうに。
その頃は療養施設にいて、一緒だった友達とも離れて、寂しかっただろう頃だ。友達が誰も来てくれないことが悲しくて、こっそり泣いていたのを知ってる。お父さんたちから、友達に声を掛けないように言われていた私には、どうすることもできなかったけれど。
何も知らなかったし、何もできなかった。
そんな私に、愛は、こんなメッセージを残してくれていたのか。
自分が一番苦しいはずなのに、どうしてこんなに笑えるのか、私を応援できるのか……全然わからない。
わからないから、涙が止まらない。
「愛は、自分の死を受け入れていた」
さっきまで愛がいたモニターには、今は記録さている動画ファイルの一覧が表示されている。たくさんの愛が笑って、そこにいた。
そんなたくさんの笑顔の愛を見つめながら、お父さんは言う。その横顔を見ると、優しい笑みが浮かんでいた。懐かしそうに娘を愛おしむ、父親の笑みだ。その頬は、一筋濡れていた。
「……幼いお前に、とても残酷なことを言った。ただの言い訳だが……その考えは法改正のずっと前に、変わっていたんだ。愛に、怒られてな」
「愛に……?」
「愛は、細胞再生手術では治療が間に合わないと診断されていた。臓器ごと換えなければ今後生きていくのは難しいと……。だから俺は、一つ決断をしようとしていた……決断なんて言葉で、片付けられないことだが」
その言葉が何を意味するのか、なんとなくわかった。私が『本来の役目』を果たす時だった、ということだろう。
「それをな、愛に言ったんだ。何としてでも生きながらえさせてやる……ただし、ヒトミとは離ればなれになってしまうが、勘弁してくれと」
「愛は、なんて?」
「烈火の如く怒っていた。泣くやら喚くやら叩くやら……『ヒトミの体を貰わなきゃいけないなら嫌だ』って……そう言われたよ」
ヒトミは、知っていたんだ。私がスペアだっていうことを。両親は妹としか言っていなかったはずなのに。
驚きを隠せない私に、お父さんは、苦い笑みを零した。
「聡い子だったからな……。俺たちの態度からも、気付いていたんだろう。だからだろうな……他の誰よりも、愛は……愛こそが、お前をクローンじゃなくて妹として可愛がった。俺も……目が覚めた」
『目が覚めた』
そんな簡単な言葉では済まされないことを言われた。だけど、確かにいつの頃からか、お父さんの態度が変わったことは感じていた。
異物を見る目だったのが、気遣う視線に変わり、いつしか愛に向けるものと似た視線に思えるようになった。
それがどこか不気味に思ってもいたけど、どこか、嬉しく思うときもあった。




