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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter6 約束
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10 愛の語り

 背景は、一面の星空。

 愛が一番気に入っていた、冬の北半球の夜空を再現したドームスクリーンだ。春、夏、秋、冬……どの星空も好きだけど、冬が一番綺麗だと言っていた。

 一番、空気が澄んでいて、星がたくさん見えるから――そう、星々と同じくらい目を輝かせて、言っていた。

 そんな一番のお気に入りの空を背にして、愛はカメラに向かってニッコリと笑った。

『私は天宮愛です。十四歳で……学校には行ってません。だけど友達はたくさんいます……たぶん』

 そう、自分について語り出す。

 私があの日、夕日を背に語っていたのと、同じように。

『好きな食べ物はミルフィーユ。趣味は星を見ること。星座や星の名前をたくさん知っています。得意教科は、古文と地学と美術。体育は……苦手です。将来の夢は……』

 私が覚えて語ったことと同じことを、愛は語った。

 良かった。私、ちゃんと愛を理解できていた。そう安心してしまったけれど、同時に不安になった。だって私は、そこから先を知らず、語れなかったから。

 愛は、どう思っていたんだろう。いったいこの先、何をしたかったんだろう。その言葉を、私は待った。

『将来の夢……うーん……想像できないなぁ。私、大人になれるかわからないし』

 そう、愛は困ったように言った。心臓が抉られるような衝撃が走った。

 愛は、たぶんこの動画を撮ってからそれほど時を置かずに、旅立ってしまう。

 自分の運命をわかっているかのような言い方だった。思わず息を呑むと、そのまま声まで喉の奥に置き去りにしてしまったかのように、何も、言えなくなった。

 だけど愛は、映像の中の愛は、そんなことは何も知らない明るい笑顔で続けるのだった。

『私の将来はわからないから……じゃあ代わりに、ヒトミの将来を想像します!』

「……え」

『ヒトミはどうなってるかなぁ。高校では絶対に優等生だと思う。大学は、どうするのかな……何に一番興味持ってたかなぁ。とりあえず、ヒトミの凄いとこ挙げていくね。えーと……成績がすごく良い。どの教科もトップクラス。あと、走るのがすごく速い! 球技も上手いし、空手も柔道も合気道も全部強い。あとは……いつも皆に優しいし、誰か困ってたらこっそり助けてあげるヒーローだし。あ、女の子だからヒロインかな? 絵とか裁縫は……ちょっと苦手なんだった。でもヒトミならそのうち絶対上手になるだろうしなぁ。ピアノも上手いし、実は歌も上手いし……ふふ、こっそり部屋で歌ってたの、知ってるんだ。あの歌、私も好き。あと料理も上手! ヒトミが作ってくれたあっさり卵スープ、大好き。なんだ、ヒトミ何でもできるじゃない。じゃあ、なんにでもなれるね!』

――なんにでもなれる

 愛は、私のことをそう言った。確かに、言った。

『私の分まで頑張れって言うのはちょっと違うと思うから言わないけど……ヒトミは、凄いんだよ。なりたいって思うもの、なんにでもなれるよ……なってね。家族三人、協力したら、きっとできるよね』

 そう、真っ直ぐに言うと、愛は急に恥ずかしくなったかのように、そそくさと停止してしまった。愛の姿は、真っ暗なモニターの奥に消えた。だけど私の目にも耳にも、さっきの映像は刻まれている。

「これ……」

「愛のリスト端末に残っていた」


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