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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter6 約束
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9 記録

 映し出されたのは、どこかの学校だ。小学生くらいの子どもが、体操服で走り回っている。たぶん運動会だ。たくさんの小学生が順番に四人ずつ並んで走って行く。流れるように走って行く子どもたちを、カメラは定点で捉えて見ている。だけど次の走者がスタートラインに立つと、変わった。

 スタートの位置にカメラを向け、たった一人に焦点を当てている。その、一人は……

『行け! ヒトミ!』

 画面の外から、声が聞こえた。叫んでいるのは誰だろう。そう思ったのも一瞬のこと。すぐに、その声に思い至った。

「愛……!」

『ヒトミ! 頑張れー! あとちょっと……やったぁ! 一位だよ、凄いよ凄い!』

 声と共に、画面が上下に大きく揺れる。カメラの主がぴょんぴょん跳ねているせいだ。跳ねているのは、きっと愛だ。

 思い出した。小学一年の時の運動会だ。愛は激しい運動は禁止されていたから、運動会の競技は私が二人分出場していたんだ。誰も、何も言わなかった。それが当然だという雰囲気だったのを覚えている。

 映像の中でも、愛以外は何も言っていなかった。むしろはしゃぎすぎている愛を心配したり窘める声ばかり。

 だけど、愛は何を言われてもやめなかった。

『私の分も徒競走、走ってくれるんだよ。……やった! また一位だ!』

『玉入れも凄い! 投げたら全部入ってる!』

『綱引きも勝った! ヒトミが引いたからだ!』

 私が何か競技に出る度に応援して、勝てば跳ね回って喜ぶ。最初は冷めた反応だった周囲の子たちも、いつしか一緒に応援するようになっていた。

『頑張れ』の声が、一つ、二つと徐々に増えていく。

『見た? ヒトミ、一人で何人も抜いたよ! リレーでも一位だ!』

『凄いね! 愛ちゃんの妹』

『ヒトミだってば。ヒトミは本当に凄いんだからね!』

 周囲の友達に、そう言っている。リレーが終わる頃には、誰もその言葉を否定しなくなっていた。そうだ、この頃から、愛の友達から無視されないことが増えたんだった。

「こんなことが、あったんだ……」

「ああ、あった。それも、一つじゃない」 

 お父さんはそう言うと、箱をひっくり返した。雪崩のように、チップの山が流れてくる。

 リスト端末のメモリを外付けチップに移し替えたものだ。もしや、と思った。

「これ……もしかして全部?」

「ああ。愛のリスト端末に残っていた記録動画だ。お前のな」

「私の?」

 信じられない、という声音でそう聞くと、お父さんは箱の蓋部分を見せた。何が入っているのか、インデックスシールが貼られていた。

『ヒトミ』……そう書かれていた。

「中には俺の端末で撮ったものもある。愛にせがまれてな」

「愛に……」

 何度も目を瞬かせていると、お父さんはさっきのチップを取り出して、別のチップを読み込ませた。

 映し出されたのは、愛――さっきの映像よりも大きくなった、中学生の頃の愛だ。

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