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君はプロトタイプ  作者: 真鳥カノ
chapter6 約束
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8 私は、愛じゃない

「それは……許してくれとは言わない。だが、今はもう……」

「だって……肝心の愛は、もういませんからね」

 思わず棘にまみれた言葉が飛び出た。

 私がそんな口をきくなんて思ってもみなかったんだろう。お父さんは、心底驚いた顔をしていた。

「それだけじゃない。私たちが小学校に上がった年に、クローンに関する法が一斉改訂されましたね」

『実子登録されたクローン体は、何人もオリジナル体と同等に扱われる権利を有する』

『実子登録されたクローン体からのオリジナル体への臓器、四肢、皮膚、細胞等一切の身体譲渡を認めない』

 そう、はっきりと法令に刻まれた。この年、私たちクローンの運命が変わったのは、言うまでもない。もちろん、クローンを生成した人間にとっても、それは同じ。

「あの時のお父さんの悔しそうな顔……覚えています」

「そ、それは違う……いや、すまない。きっと一瞬でも、そう思ってしまったんだろう。否定できないほどに、はっきりと」

 肩を落とすお父さんは、いつもよりほんの少し小さな印象になった。

 大きな人だと思っていた。私の運命を決める人。逆らえない人。超えられない壁となる人。そう、思ってきた。

 それなのに、今は、私を言い負かすこともできずにいる。それを、不思議と心地よいとは、思わなかった。何故かわからないけれど、胸のもやもやは全然晴れない。

「お母さんは……愛がいなくなったことに耐えられなくて、私を愛だって思い込もうとしてる」

「ああ」

「お父さんも、そうですよね。愛がいなくなって悲しい。だから……愛の代わりに私を可愛がろうとしてる」

 お父さんは、ピクリと動いたけれど、それ以上は何もしなかった。

「だから私、言いに来ました。私は、愛じゃない」

「……わかっている」

「愛にはなれない。愛の模造品にも、お人形にも、何にもなれない。愛の代わりになってあげることは、できません。それがもし気に入らなければ……生み出した価値がないって思うなら、追い出してもらって構いません」

「何を言ってるんだ。そんなこと、しないよ」

「でもお父さんにとっては、私はもう……」

「するわけないだろうが、そんなこと!!」

 怒鳴り声と一緒に、机を叩く音が響いた。室外には聞こえない分。部屋の中で反芻して、より大きな音となっている。

「親が、子どもを、追い出すなど……するはずがない。しないんだよ、親なんだから」

 今度は、私が驚く番だった。

 お父さんは、息を切らせて、震えながら、そう告げた。

「……怒鳴って悪かった。座りなさい」

 そう言って、お父さんは椅子を勧めてくれた。私に座らせると、自分は部屋の中の一角にしゃがみ込んで、何かを探している。

 やがて小さな箱を取り出したかと思うと、中から記録チップをいくつか手にした。それを壁の端末に読み込ませて、モニタに表示させた。


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