色々と衝撃
フィーリア、八歳です。心と体がアンバランスです。
◆ sideフィーリア ◆
私の八歳の誕生日に合わせて、アリシア姉様とトビー兄はロクス村に一時帰宅した。驚くべきニュースと共に。
「私、マルク・ホール騎士爵様に嫁ぎます。」
目ん玉飛び出るかと思ったわ。いや、飛び出てたかも。だって本人とトビー兄以外の全員、目ん玉飛び出てたし。
王都には、仕事の都合もあって度々様子を見に行ってたけど、姉様がマルクさんとちょいちょいデートしてたのは知ってる。だって姉様自身が教えてくれるんだもの。
頬を染めながら、どこそこに行ったと楽しそうに語る姉様の、まあなんと可愛らしいこと。そっかあ、恋してるんだね。
もちろん速攻で、シドにマルクさんの身辺調査を依頼した。過保護?それの何が悪い。
第三王子の教育放棄騒動を受けて、それまでの第七分隊は人員が全て移動となった。と言うか、ほぼまるっと第八分隊と入れ替わり。第三王子の警護は、入れ替わった元第八分隊が新第七分隊となって当たることに。
八・九・十分隊は、交代制で王女たちの警護や王城の警備に当たる。だから、マルクさんは八分隊所属で王城勤めには変わりなし。ついでに、ヘリオス分隊長は第八分隊長だし、魔力色変態エンリコ君も八分隊所属。
まあ、妥当な処遇なんでない?
王城勤めの騎士爵って、男爵家の娘が嫁ぐ相手としては上等な部類に入ると思う。格上の家に無理矢理入ってイビられるよりずっといいしね。
手紙で相談を受けてた母様も、同じことを思ったみたい。さりげなく父様に、「嫁に出すなら、安定した騎士爵か裕福な商家。でも一番はアリシアの気持ち」ってプッシュしてたもの。
で、半年近くの交際を経て、今回の話になったわけだ。
もちろん、きちんとした手順を踏むために、姉様自らマルクさんからの縁組申し込みの書状を持ってきてたんだけど、それを父様に渡す前に衝撃の結婚宣言。
いや、どんだけ舞い上がってるんだよ。
相手が誰であろうと却下したがってた父様だけど、姉様の懇願と母様の叱責とで、とうとう認めざるを得なくなった。元々マルクさんのことは気に入ってたしね。
無事に父様から了承の書状をもらって、これで晴れてアリシア姉様とマルクさんは婚約成立。順調にいけば結婚は約一年後となる。
うふふ、良かったね姉様。幸せになってね。
「アリシアと相談したのだけれど、新しく侍女を雇うことにしたわ。」
母様からそう聞いたのは、マルクさんがうちに挨拶に来るのに先立って、姉様とトビー兄がまた帰省した翌日。
新しい侍女?王都のタウンハウスに?
「王都じゃないわよ。うちに、と言うか、フィーの専属みたいなものかしら?前々から話はいただいてたの。ポサ村の女の子で、フィーの三歳上。ずっとフィーの侍女になりたくて、頑張って勉強してたんですって。」
「なんで私の?」
「それがね、実は……フィーが二歳の時の誘拐事件、あの時に一緒に拐われてた女の子なの。」
誘拐……あの時一緒にいた男の子はトマスで、もう一人、いたね、女の子。
「その子もトマスと同じように、フィーが助けてくれたのを何となくわかってたみたいで、恩返ししたい、って頑張ってたんですって。それで以前から父様に話があったのよ。」
恩義に厚過ぎるわ!重真面目か!
「フィーが了承してくれるなら、明日からでも、ってことなの。今ならアリシアもいるし、全員と顔合わせできるでしょ。」
はあ、まあ、それもう確定事項ですね。
そうして翌日には侍女見習いとしてメイチャが紹介された。とても朗らかな女の子。即、住み込み決定で、早速マーサと姉様から色々教わっていた。
「フィーリアお嬢様ー!あっさでっすよー!」
高めの少女の声で目が覚める。煩いなー……?誰だっけ、この子。……あー、確かメイチャ、だったっけ。
「……んあ~、おはよ、メイチャ。」
「おはようございます。今日も良いお天気ですよー。」
「……初日から元気だねえ……」
「もっちろんです。私、お嬢様の侍女になることだけを目標に、何年も勉強もお作法も頑張って来たんですから。これから毎日お嬢様の為に働けると思うと、腹の底から元気が湧いてきます!」
お前さんの元気は腹から沸くのかい……。どうでもいいけど、朝っぱらからこのハイテンションは暑苦しいな……。
「ハイ、お顔洗ってくださーい。お着替えは今日はどうなさいますか?」
「あー、今日は執務と打ち合わせだから、簡単なワンピースでいいよ。紺色のやつ。」
「えー、あんな地味な色合いでいいんですか?お嬢様せっかく可愛いんだから、ピンクとか赤とか、リボンもフリルもたっぷりのほうがお似合いなのにー。」
いや、そういうのはブラン爺が買ってくれるぶんでお腹いっぱいだよ……。てか、言葉遣い、絶対マーサに叱られるぞ。
「じゃ、こちらにお掛けくださいねー。髪はどんな風に結いますか?」
「んあ、テキトーでいいよ。」
「じゃあ、ふわふわを生かしてハーフアップに……あれ?」
廊下から物凄い勢いの足音が近づいてくる。
「お嬢様、ここ、ハゲが――」
「だめええええええええ!」
え?アリシア姉さま?いや、待て、今何つった?
ハ ゲ ?
執務室では、もうシドが書類の仕分けをしていた。
「おはようフィー様。どしたよ?朝からぐったりしてんな。」
「……あー、ちょっと聞きたいことあるんだけど。」
「あ?なんだその恨みがましい目。」
「あんたも知ってたの?」
「?何をだ?」
「私の…………ハゲ…………」
「…………あー……ついにバレたか。」
よく考えたら、おかしいって気付きそうなモンだったよなあ。姉様と母様とマーサ以外触らせないで、自分で髪結うのも駄目だって言われてたし、外泊時はシドが姉様に厳命されてた。
私のハゲ、みんなで隠してたってことかい。
つか、このハゲって、一歳の時のブランコ事故の怪我のやつだよなあ。あん時、なんか誰かがそんなこと言ってた気がするわ。
え、ちょっと待て。七年間も家族みんなで隠してきたってこと?いやそれ別の意味で凹むわ。私どんだけ自分の身なりに疎いのよ。
「今朝気付いた、ってことは、あの新入りの侍女か。まあ気にすんなよ。髪型で隠せるんだし、大した瑕疵にはならないさ。」
瑕疵?ハゲって瑕疵なの?え?酷くない?淑女の世界ってそんな厳しいの?
「万一、貰い手なかったら俺がもらってやるからさ。ホラ、一応婿候補だし。」
「……黙れ、チャラ男。ブラン爺んとこ泊まるたび、夜中にこっそり娼館行ってんのは気が付いてるからな。」
「ぬなっ!いや、アレはだな、情報収集の一環で……」
別にシドが娼館通ってようが何だろうがいいんだけどさ。
ハゲを知ってんのは、家族とダルトンとマーサとシドか。あ、あとブランドン邸の侍女さんたちだな。一流の侍女は察しも良いか。ありがたや。
いや、髪で隠れるんなら、私は別にどーでもいいんだけどさ。こうまで必死に隠してきたってことは、一般的に見て、まあまあな傷物ってことだよな。
古傷って、治癒魔法効かないんだよな……はあ……
今回から、更新日を変更いたしました。
毎週 月・水・金 の週3回更新となります。
フィーリアの奮闘をお楽しみいただけると幸いです。




