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人材不足と人手不足

◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇




「一人、こちらにいただきますよ。」

「いやっ、待ってください。うちは魔力操作必須なんです。」

「なら腕っ節が強いのはこちらに回してください。」

「そうはいくか。強いのはうち優先だ。」


 フィーリアの執務室で、男が四人大騒ぎをしている。そしてそれを呆れ顔で眺めるフィーリアとシド。

 騒ぐ男四人のうち三人は、元ブランドンの騎士だったデイル、ケルコム、セイクナだ。残る一人は、なんとダルトンである。


 四人が争っているのは、シャハザールの孤児院から回されてきた六人の新人の奪い合いである。

 孤児院の最初の卒業生ということでシャハザールが厳選したのか、六人はそれぞれにかなり優秀な子たちであった。


「ねえ、ちょっと待ってよ。一応本人たちの希望優先で考えたいと思って――」

「希望はわかりますが、本人のやりたいことと適性が違う場合もあるのでは?」

「いや、だから研修で全部一通りやらせたんじゃん。それで適性がなくても頑張りたいって言うなら尊重しても――」

「それではいつまで経っても人手不足が解消されない分野が出てくるではありませんか。」

「だからそれは、順次一般採用をして――」

「今!戦力が欲しいんですよ!」

「いや、それはわかるけど――」

「こんな優秀な人材を今から仕込めるなんて、はっきり言って幹部候補なんですよ!」


 珍しくフィーリアが押されている。しかし四人が色めき立つのも無理もない。

 紙もペン先もどんどん需要が増え、魔珠に至っては大規模工場を新設したばかりだ。販売はシューベリー商会の仕事だからそちらから人を回してもらえるが、生産は全部ダーウィング家主体の事業な上、守秘契約が必須だったりとかなり人材を揃えにくい。

 あとは単純に、田舎なので人が少ない。末端の作業員もなかなか確保できていないのが現状だ。


 やいのやいの言われて頭を抱えていたフィーリアが、ふ、と頭を上げた。目が座っている。


「あんたたち、誰が欲しいのか、誰がどこに向いてると思ったのか、理由を添えて紙に書いて提出しなさい。そこでまず、本人たちの希望と合わせてマッチングする。どうせ競合するんだろうから、そうなったらドラフトやるわよ。」


 聞き覚えの無い言葉を使って宣言されても、誰一人正確な意味がわからない。が、とりあえず希望をまとめろ、ということは伝わったので、全員一斉に書類書きのため部屋を出た。


「……なあ、フィー様時々聞いたことない言葉使うけど、あれ何なんだ?まさかのエルフ語とかか?」

「……エルフはもういいって……。頭ん中で考えてた物や仕組みに適当に呼び名付けてるだけよ。そのほうが考えまとまるから。」


 さすがに、前世で使っていた言葉だとは言えない。


「ちょっと……公爵領都(ユグレリア)に行ってくるわ。ブラン爺とグラントさんに会って相談してくる。」

「また人材もらってくるのか?」

「いや……どっちかと言うと、移民の募集かな。国じゃないから移民はおかしいか。移住、かな。」

「は?おい、まさか、街丸ごと作っちまおうとか考えてるわけじゃねえよな?」

「…………」

「これ以上仕事増やしてどーすんだよぉ!」


 あーついでに温泉作ろうかな……、などと考えているフィーリアだった。






◆ sideフィーリア ◆




「ブラン爺、この前は名前出す許可くれてありがとね。」

「大したことではない。それよりも、最悪の事態がなかったようで安心したぞ。まさか日付を遡って貴族籍から除籍できるようにしてくれ、とはな。」

「はは、だってそれが一番みんなに迷惑かけなくて済むじゃない。まあ、最後の手段だから。」

「……誰も迷惑などとは思っておらんのだがな。」


 お茶を一口飲んだブラン爺は、書類を手に取り、読む。


「今度は、また随分と……大胆と言うか、雑と言うか、思い切ったことを考えたものだな。」


 ブランドン邸の一室。ブラン爺が出してくれた美味しいお菓子を食べながらも、私の眉間には皺が寄りっ放しだ。


「ん~、人材不足もそうだけど、単純に人手が足りないのよね。管理職はまあ育てられるけど、その下で働く人の絶対数が足りない。もう村で余ってる人手はないのよ。」

「ふむ、それで儂に何をして欲しいのだ?人集めか?」

「ううん、それはグラントさんにお願いしようかと思って。うちの従業員だけじゃなくって、宿屋とか食堂とか、それに伴う色んなお店とかも必要になってくるからね。商業ギルド経由でそのあたりは進めようかと思ってるの。」

「うん?ではなんだ?」


 ブラン爺、おねだりされたくって()()()()してるみたいね。まあそこら辺織り込み済みでブラン爺のとこ来てるんだけどさ。


「……モンユグレ公爵に繋ぎ取れないかなあ?」

「グリッドに?」

「今まで移住してきた人たちは、全部うちで雇う形だったから問題なかったけど、これだけ大きな計画になっちゃうと、いくら何でも領主様に黙って、ってわけにはいかないじゃない?」

「ふぅむ。」

「だからできれば、公爵様の領地開拓の一端として認めてもらえればありがたいんだけど。」


 あれれ?ブラン爺考えこんじゃった。アナタんとこの長男ですよ。私の大叔父ですよ。なんか問題あるの?


「……フィーリアは、グリッド…モンユグレ公爵についてどれくらい知ってる?」

「どれくらい、と言われても……。私は会ったことないし、父様も新年の挨拶くらいしか喋ったことないって。母様もあんまり喋ったことないって言ってたな。トレントの取り引きはしてるけど、最初に「商会作れ」って言ってきた後は、商会同士のやり取りだけだからなあ……」

「そうか……」


 んんん?なんだ?もしかして不仲とか確執あるとかそんな感じか?シドに言って調べ……違うな。これきっとブラン爺から聞いたほうが良い。


「なんか……問題あった?」

「いや……表立っては何もない。公爵としての仕事は全てあいつに譲ってるし、派閥の長としても堅実にこなしておる。ただなあ……二年ほど前に、大喧嘩をしてしまってなあ……それから没交渉なのだよ。」


 な、なんですとー?


「喧嘩……って、何が原因で?」

「…………」


 黙り込むブラン爺。えー、私に話すってことは、間を取り持ってくれるの期待とかそういうことじゃないの?


「その……儂がフィーリアの後見をしたことで、あいつ、臍を曲げてしまってな……」


 まさかの私が原因だったあー!




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