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台風一過

◆ sideフィーリア ◆




 いや、なんつーか、怒涛の数日だったなあ。


 王子御一行の中でどんな話し合いがなされたのかはわからないが、ジョシュア殿下はすっかり紙の製法は諦めたようだった。

 まあ元々ママンに言いつかっただけだし、それどころじゃない事態になっちゃってるからね。


 一応視察って名目で来てるんで、村の案内とかもしたんだが、土壌改良した畑とか、狩人の集会場とか、魔物の素材の買い取り場とかそんなんばっか。

 だって他はみんな丸ごと機密なんだもの。守秘契約交わしてるから、見せてもいいっちゃいいんだけど、面倒だから却下。第一、急に王子の視察なんて、現場の従業員が可哀想だ。

 前世でもあったじゃない。現場の迷惑(かえり)みない大臣の急な訪問とかさ。国の施設じゃないんだから、私の判断でそんなん却下よ却下。


 更に、うちの人間、全員ジョシュア殿下に塩対応。騎士さんたちとは普通に話すけど、ジョシュア殿下に対しては笑顔も見せずに必要事項を伝えるのみ。

 言ったじゃない。側室発言は許さない、って。なんと、素材の買い取り場の案内を頼んだフランセルまで同じ対応をしてる。さてはトビー兄、チクったな。


 そうして三日ほどかけて(実際は初日の昼前で終了したが)村の中を案内し、やっと一行が帰る日になった。


 おや?シャハザールが見送りに来てるな。

 あー、視察初日以降に図書室に引き籠りになったジョシュア殿下放っぽって、アリシア姉様がヘリオス隊長とマルクさんを孤児院に案内してたっけ。シャハザールとヘリオス隊長、仲良くなったみたいだな。笑いながらお喋りして……


 ……ぉん?


 なんだかアリシア姉様とマルクさんの距離、近くないか?

 いやそりゃアリシア姉様もお年頃だし、マルクさんも二十越えたくらいか?釣り合わない年齢じゃないけども。

 マルクさんなあ……。脳筋の我が家とは相性良さそうなんだよなあ。アリシア姉様、十七歳になってからいくつか縁談来てるみたいだけど、父様が首を縦に振らないんだよな。


「ねえ、シド……」

「男女の機微を俺に聞くなよ。俺にとっちゃ女なんて、情報取るか寝るかしかない生き物なんだからな。」


 あんたねえ、仮にも私の「婿候補」なんでしょうが。なんて言い草してんだよ。つか七歳女児に「寝る」とか言うな。ブラン爺に怒られるぞ。


「……調べるか?」

「や、それは……う~ん……」


 身上調査と思えばいいのかな。私だって、もし姉様がモラハラDVクソ野郎とかに嫁いだりしたら、五ミリ刻みで細切れにしてやる自信あるもん。

 とは言え、姉様の気持ちが一番だからな。調べるにしても、もう少し二人の気持ちが進んでからでいいか。


「今はまだいいや。本格的に話が進むようだったら……ね。」

「了解。ブラン閣下もそうだけど、フィー様もたいがい過保護だよなあ。」


 いや私七歳児だからね?普通は過保護にされるほうなのよ?




 ジョシュア殿下が出てきた。見送りに並ぶ私たちと正対する。


「世話になった。その、数々の無礼、心苦しく思っている。許せ、とは言えないが、だが……その……」


 なんだよ、こっち見んな。

 まあ、王族だからね。簡単に頭下げられないのはわかってるよ。それにしても歯切れ悪いな。


「その……だな……王城に招待したら、遊びに来てくれるだろうか……?」

「お断りします。」


 あ、やべ、即答しちゃった。ついうっかり。


 目に見えてショックを受けてるジョシュア殿下。エンリコさんが後ろでわたわたしてる。


「側近決めるのに人集めればいいじゃないですか。人を見るのもまた勉強ですよ。それに、そろそろ婚約者選びも始まるのでしょう?王城に呼ばれてあらぬ誤解を受けるのも嫌ですわ。」


 友達欲しいのもわかるけどさあ、何がフラグになるかわかんないからね。王城なんぞ絶対行きたくない。つか王族と関わりたくない。


「そ……そうか……そうだな……。また私の考えが足りなかったようだ。許せ。」


 あんたは友達作るより、まず勉強だよ。圧倒的に知識が足りてない。しばらくは重鎮のおっさんたちに揉まれてなさい。


 しょんもりしたジョシュア殿下を趣味の悪い馬車に押し込み、ようやっと御一行様は帰路についた。


 あ、ちなみに元従者ズの二人は、こっちにいる間ずっと拘束されて死なない程度の食事だけ与えられていたそうだ。

 帰り道、奴らが徒歩では行程も遅くなるだろう、と、昔うちで牛糞集めた時に使って臭いが取れなくて放置してた荷車を提供して、それを騎馬二頭に繋いで奴らを乗せて行った。荷車と騎馬を繋ぐロープがなぜだかとっても長かったけど、きっと気のせいだろう。

 うむ、フィーちゃん、なんて気の利く良い子だろう。




 ん、やっぱりアリシア姉様ちょっと寂しそう……に見えるかな?でもマルクさんは王都勤めの騎士だし、連絡手段に乏しい今の状況だと、この先どうなるのかはわからんね。

 つか何でトビー兄までそんなに寂しそうなんだ?


「俺さ、もっと強くなりたい。」


 うんまあそれは知ってる。


「手の空いてる騎士に、ずっと剣の稽古つけてもらってたんだ。」


 ああ、それで寂しそうだったのか。


「俺……騎士になりたい。」


 ……トビアス、ちょっとそこに座りなさい。


 現在トビー兄は十二歳。で!十歳から始めてる『学問基礎宝典』が全くと言っていいほど進んでない。十六歳になる前に終わればすぐ騎士団でもどこでも修行に行けるが、終わらない限りは終わるまで家から出られない。下手すりゃ貴族籍剥奪だ。

 あのなあ、とりあえずギリッギリでもいいから『宝典』終わらせられるようにしろよ。じゃないと誰もトビー兄の話なんか聞いてくれないぞ。


 王国騎士団の入団試験を受けられるのは十三歳から。十三歳になったら貴族籍を抜けて、すぐに入団試験を受けるというウルトラCもある。でも教えない。

 それ聞いたらコイツ、すぐに貴族籍抜けるとか言い出しかねない馬鹿だから。


 はあ、ジョナ兄と交代で勉強教えるか。




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