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反撃の狼煙

◆ sideフィーリア ◆




 いや、これヤバい!父様と母様ブチ切れ寸前だ!あああアンディ兄様も!ダルトンまで殺気が漏れてるぅ!

 こんな馬鹿げた発言、完全に想定外だわ!隊長も侍従も固まってる!なにこれ、私が何とかせにゃいかんの!?


 とりあえず、誰かが何かしでかさないように、立ち上がる。父様、私のターンだからね!変なことしないでよ!



「ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下に直答申し上げることお許しいただけますでしょうか。」

「う、む、ゆ、許す。」

「ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下のお申し出、大変光栄なことと存じますが、私のような者がジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下のお側に侍るなど、ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下の御名を汚すだ――」

「まっ待て!あの時はもっと砕けた物言いをしていたではないか。なぜそんな仰々しい話し方をする?」

「あの時はジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下とは存じ上げませんでしたので、今となってはジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下とお呼びするしか……」

「普通に『殿下』で良い!」


 良し、かかった。


「そういうわけには参りません。ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下を気安くお呼びして、周りの者にジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下への不敬罪を問われては言い訳できませんし。」

「そんっ、私はお前に助けられたのだぞ!恩人を無下にするような真似は、私が許さん!」


 イラつき最高。そろそろかな?


「では、ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下をお助けできたことに対しての褒美として、不敬問わず、をお約束いただいてもよろしいでしょうか?」

「もっ、もちろんだ!」

「では、こちらの書状に、ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下の署名をいただいてもよろしいですか?」


 シドから書状を受け取り、殿下に渡す。さすがにチェックのために侍従と隊長が覗き込む。


「ジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下に対する不敬を問わず、というだけのものです。問わないのはジョシュア・バライアス・サウデリア第三王子殿下への不敬罪だけですので、それ以外は普通に王国法に(のっと)っております。」


 いやー、自分で呼んでてイラつくわ。めんど。


「会話……くらいですかね……?」

「ふむ、度を越した暴言等は普通に侮辱罪を適用できるだろうし……気楽にお話されたいのなら、まあ問題はないかと。」


 侍従と隊長の許可も出たので、シドが差し出したペンとインクで殿下が署名をした。

 おっし!第一段階突破!あー、面倒臭かった。これであとは楽に話せる。


 書状を受け取り一言呪文を唱えると、書状が光り始めた。


「なっ……!魔法契約だと!?」


 隊長が焦るがもう遅い。成立しちゃったもんねー。

 書状だけチェックしても魔法契約書とは気付かないんだな、これが。ジョナ兄の魔法陣研究の副産物、特殊なペンとインクでサインして、成立した瞬間に魔法契約として発動するのだ。

 ふはは、まーた表に出せない物作っちゃったよ。



「さて、じゃあ、これを取り上げられても厄介だし、安全な所へ送りましょうかね。」


 窓を開け、ヴェントを呼ぶ。ここのバルコニー大きめにしておいて良かったわ。

 突然現れた大鷲に室内どころか外で待機してた騎士たちも大慌て。中には剣に手をかけてる奴までいる。あんたら、やたらめったら敵対行動取るんじゃないわよ。


「ヴェント、これブラン爺のところに届けてくれる?」

『承知。』


 書状を引っ掴んでヴェントが飛び去る。それを見送る王族側の人たちはぽっか~ん。ま、何が起きたかわかってないんだろうね。


「今の……大鷲は、もしかして精霊なのか?」

「お、鋭いね~。あそっか、あなた…ヘリオス隊長、森で精霊見てたっけね。あの大鷲、私の契約精霊だよ。」


 ()かけにゃならんからね。これくらいは言ってもいいだろう。


「契約精霊……だと?精霊付きなどモンユグレ閣下以来聞いたことがない。」

「あら、ブラン爺のこと知ってるんだ。あーまあ、英雄だからね、騎士なら知ってるか。」

「ブラン爺!……とはモンユグレ閣下のことか!?」

「そだよー。ブランドン・モンユグレ前公爵。私のひい祖父(じい)ちゃんで後見人。」

「「「「「!!」」」」」


 王族側の五人が、ジョシュア殿下までも固まった。さすがに英雄ブランドン・モンユグレの名は効くねえ。てかお前ら、ホントまともに調査もしてないんだな。


「さっきの書状はブラン爺に保管してもらうから、取り消し利かないよ。ああ、ちなみに私、もう一人後見人がいてね、ガラリア・ルヴレフ辺境伯はご存じ?この前お願いしたら大喜びで引き受けてくれたの。」


 五人が再び固まる。この国の二大巨頭と言って差し支えない二人を後見にしてるんだもんね。王族と言えど迂闊なことはできまいて。

 これで無事、第二段階まできた。




 さて、こっから大詰めだ。まずは「どーーーん」。


「「ぐフッ……」」


 侍従と後ろにいた侍女が、魔力の塊に圧し潰される。


「なっ何をする!」


 焦るヘリオス隊長。


「ああ、ごめんね。この二人(うるさ)そうだから、ちょっと黙ってて欲しくて。さて、ジョシュア殿下、さっき何かふざけたこと抜かしてたよね?側室にしてやるとか何とか。」

「ぅ……それは、その、紙の作り方をどうしても知りたくてだな……」

「うーわ、最低。まだ「一目惚れした」とかのほうが許せるわ。」


 ジョシュア殿下が小さくなって半べそをかく。お前はママに叱られる幼児か。


「ま、それはひとまず置いといてあげる。問題は、あなたが『側室』だの『第二妃』だのと口にしたことよ。」


 ヘリオス隊長と護衛騎士が青くなる。ジョシュア殿下はわかってないみたいだけど、この二人は何がマズいのかわかってるみたいね。


「これ、国家反逆罪よね。」




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