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人使いは荒い

◆ sideフィーリア ◆




 結局、魔素溜まり発見直後は視察には行けなかった。シドが厳しい……。いや自分が悪いんだけどさあ。

 翌日に、一晩中馬を飛ばしたセイクナが帰ってきて、詳しい報告を聞いた。てか、夜中じゅう走らせるなんて危ないじゃないの。


『フィーリアがすぐに行けないとわかった段階で、私がセイクナのフォローに戻りました。彼の性格上、そうするのはわかってましたからね。』


 う、アイナの判断が正しい。

 セイクナの報告を一通り聞き、とりあえず彼は休ませた。で、シドとアイナとちょうど来ていたトマスとで検討を始める。

 魔素溜まりの関係があるので、トマスには、魔素溜まりの情報収集をお願いした頃に、アイナだけは紹介しておいたから大丈夫。もっとも、紹介直後はトマスがひれ伏しちゃって話が進まなかったけど。


『だいたいこの辺り(ビリッ)ですね。ポサ村の集落から道はほとんどありませんが、ほぼ平地なので馬で行けるでしょう。』

「魔素の濃さはどれくらいなの?濃いのは調整できるけど、薄いのはどうもならないからね。」

『アマトに近いですね。吹き出し口はこの辺り(ズボッ)です。』

「擂り鉢状、だっけ。なら調整しやすいか。」


 どうでもいいが、アイナが「この辺」と爪を立てるたびに地図に穴が開く。新しい地図用意しなくちゃ。ってか、三村まとめて測量やり直すかな。

 こっちの、というかこの時代の地図って、機密扱いだからね。そもそもが大雑把な地形と方向が描いてあるくらいで、いい加減なことこの上ない。

 測量技術は……ん、記憶にないな。でも私にはヴェントがいるもんね。上空から見たまま描いていけばいいだけだ。裏技っぽくていいね。


「王領にけっこう近いんですね。」

「ここに決まれば、俺のほうからブラン閣下に報告して根回ししてもらうから、ちょっかいはかけて来ないと思うぞ。」


 トマスの不安をシドが払拭する。この二人、割と仲良いよね。前に聞いたら「兄連中の塩対応が気の毒で……な」とシドが言っていた。


「…………」

『どうしたんですか?フィーリア。』

「いや、ちょっと話はズレるんだけど、誰か絵とか図とか描くの得意な人いないかな、と思って。この先も正確な地図が必要になると思うから、ヴェントに乗せて空から地図描いてもらおうかと。」


 シドが絶句する。トマスはわかってない。


「ヴェント……とは?空からということは、まさか空を飛ぶ乗り物を開発されたのですかっ!?」


 あ、そうなりますよね、スミマセン。もうトマスに精霊獣全部紹介しちゃおかな。グラントさんよりもよっぽど会う機会多そうだしなあ。元々色んな秘密共有してんだし、そのほうが便利だ。うん、そうしよう。


「……フィー様、悪い顔になってんぞ……」




 翌日の早朝、ポサ村魔素溜まりへの視察に出発。セイクナとトマスは自分で馬に乗り、私はシドに乗せてもらう。

 くっそー、私だって一人で馬に乗りたいのにー。トマスは体が大きいほうだからいいけど、私は(あぶみ)に足が届かんのよ。自分専用の(くら)開発しようとしたら止められたし。「馬車と精霊獣と転移あるんだからいいだろ」とシドに言われた。ごもっとも。

 てか、なんでトビー兄までくっ付いて来てんだ?お前は勉強しろ、勉強。




 昼前にはアイナの待つ現場に到着。いや~、アイナに教えてもらった方法速くていいわ~。馬に強化魔法かけるだけなんだけどね。


「ここです。一番底、中心部分に深い亀裂があって、底から魔素が噴き出しているようです。」

「セイクナは亀裂のところまで行ってみた?どんな感じだった?」


 セイクナは、母様よりちょっと魔力が少ないくらい。自己申告は魔力量四だったけど、五に近い四の母様の下なら四半ってとこなのかな?


「長時間ならわかりませんが、さほど異常は感じられません。」


 ほう。アイナも「アマトに近い」って言ってたし、これは候補地として優秀かも。


 にしても、変な地形だなあ。五十メートルほどの円形の擂り鉢地、深さは三メートルくらいか。中心に亀裂。隕石とかならもう少し擂り鉢の縁が盛り上がるはずだし、まず小さすぎる。陥没や噴火と言うには縁が奇麗な円すぎる。そして意外と擂り鉢が深い。


「アイナ、この地形ってどうやってできたの?」

『さあ?地割れか陥没か、星が降ったのではありませんか?』


 あら、アイナでもわかんないんだ。まあいいか。今危険がなければそれでいいや。


「私は中心に降りてみるけど、トマスとトビー兄はここにいて。二人とも顔色悪いよ。」


 トビー兄は魔力量二だし、トマスに至ってはギリギリ二を切る、つまり一らしい。二人とも、魔素が溜まってない擂り鉢の縁にいても、やっぱり気持ち悪いみたい。


 アイナとシド、セイクナと一緒に擂り鉢の底へ降りてみる。中心部へ近づくにつれ、空気が重苦しくなってくる。うん、充填用と考えると良い感じの魔素溜まりだね。

 アマトの吹き出し口に似た感じだけど、アマトと違って淀みがないぶん、もしかしたらこっちのほうが魔素の吹き出し量多いのかも。


「アイナ、地盤のほうはどう?外縁がすっぽり入る大きさで上物(うわもの)建てることになると思うけど。」

『問題ないですね。かなりしっかりした岩盤があります。』

「そんな大きく作るのか?」

「うん。充填設備はまた別に囲うけど、基本は敷地そのものを覆い隠すような感じで建てるつもり。最重要機密になるからね。」

「さっ最重要機密っ!?」


 セイクナが大声を出した。なんだよ急に、びっくりするな、もう。


「わっ私がそんな重要なことを知って良いのでしょうか!私はただの斥候で……」

「何言ってんの。ここに魔珠の充填施設建てたら、そこの管理と運営はあなたがやるのよ。」

「へっ……?」

「言ったでしょ、「ただの騎士はうちにはいらない」って。だからデイルは警備統括をやってるし、ケルコムは生産管理責任者をやってもらってる。あなたはここの管理者になるの。」

「へっ…あっ…やっ…そっ…」

「セイクナ、あなたをここに建設する施設の所長に命じます。名称その他はこれから詰めるけどね。返事は?」

「……っはっ!承知いたしました!このセイクナ、フィーリア様の御為に、至誠至愛尽力させていただきますっ!」


 ……ん?ちょっと違うニュアンス入った気もするけど、頑張ってくれるんならそれでヨシ。ま、向かないようだったら配置変えればいいだけだしね。

 鼻息の荒いセイクナの肩を、なぜかシドが哀れんだような眼をしてポンポン叩く。その目やめれ。まるで私がセイクナのことを鬼のようにこき使うつもりに見えるじゃないか。まあ、こき使うけども。




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