表と裏
◆ sideフィーリア ◆
「ほい、フィー様。」
シドが何やらブ厚い書類の束を渡してきた。
「何これ?」
「ルヴレフ領行く前に調べてただろうが。ブラン閣下に丸投げしたやつ。それの報告書だってさ。」
「え、決着ついたんなら直接話してくれればいいのに。」
「せっかくフィー様がいて、精霊獣まで揃ってたんだ、そんなつまらん話で時間を無駄にしたくなかったんだろうさ。」
む、それもそうか。相変わらずブラン爺は可愛いなあ。どれどれ?いったいドコのどいつが…………
「えー……と、シドさんや?なんか、子爵家が一つと男爵家が一つと商会が二つ潰れたように読めるんだけど……」
「ああ、そうみたいだな。」
前言撤回っ!ブラン爺可愛くないっ!怖ぇ!
商会二つは、それぞれ子爵家と男爵家の紐付き。色々聞きまわってたのは男爵家のほうの商会で、紙の製法について、かなり強引に情報集めようとしてたみたい。あ、うちの従業員に脅迫までしてるわ。これは有罪だね。
子爵家のほうは……男爵家ほどあからさまではないかな。でも、『保護秘匿法』の届けが出されたあたりから探りを入れ……ってことは、中央の文書官吏と繋がってたってことか。情報漏らした官吏も既に更迭されてる。お、肥料関連か。こりゃブラン爺も怒るわ。うちだけじゃなくて、公爵家の権利も侵害しようとしてるんだもの。
まあそれで、全部潰せちゃうブラン爺が凄いけど。
他にもいくつかの商会や貴族が、紙とか肥料とか謎の商会長を探ろうとしてたみたいだけど、みんなブラン爺が後見とわかった段階で手を引いてる。
うん、正しい反応だわ。ブラン爺を舐めくさった子爵家と男爵家が悪いな、こりゃ。
「読んだか?どう思う?」
「へ?何が?」
「この結果だよ。ブラン閣下の、その、やり口とか。」
「ん?別に。手間かけさせちゃったなあ、と申し訳なく思うくらいで。これくらい自分で捌けるようになりたいよね。」
シドがはあぁぁ……と大きく息を吐く。なんやねん、と訝しんだところで、唐突にクレイグの言葉が蘇る。
『やはり知られた時の反応を想像すると……そうですね、怖いでしょうね』
あー……そういうことか。だから報告書なんだ。そうだよね、ブラン爺だって一緒だよね。
「んー、あのね、私はそもそも庇護を求めてブラン爺に後見お願いしたの。自分のやり方と合わなかったり希望があったりすればちゃんと伝えるし、自分でできるときはそうするし。
私にとってブラン爺はブラン爺だよ。むしろ、権力が大きくて使い方が上手だとこんなに鮮やかに潰せるもんなんだなあ、と尊敬する。お手本だね。」
「ん?んんん?まっ待て、前半はいい、前半は。後半なんか恐ろしい発言が聞こえた気がするんだが。」
「え?だって私だったら、こんなん力任せにボコボコにして脅せるだけ脅して手を引かせるよ。一番簡単だし。やっぱブラン爺のやり方はスマートだなあ。勉強になる。」
なんかシドの顔から血の気が引いてるような気がするけど、気のせいだな、うん。
「「「フィーリア様っ!只今戻りました!」」」
お、三騎士が戻って来たか。はいはい、まずは自己PRの書類見せてね。ふむふむ、じゃあまずはうちの現状を正しく認識してもらおうか。
「まずは三人一緒に、狩人の研修を一週間受けてもらうわ。それが終わったら製紙工場と養殖場の警備を一週間。それが終わったら魔珠工場と研究所の警備を一週間。それが終わったら、最後に孤児院の手伝いを一週間してもらうわ。」
騎士ズが、ぽかんとした顔をしている。むろん、養殖場はトレントの養殖場だし、研究所はアマト研究所だ。相当キツいだろうな。
「全部の研修が終わって、それから配置を決めます。もちろん事務仕事もやってもらうわよ。言ったでしょう、うちには『ただの騎士』はいらないの。頑張って色んな適性を見出してね。」
「「「はっはいっ!」」」
「案内はシドにさせるわ。シド、よろしくね。」
「え!?俺!?」
「そりゃそうよ。全部わかってんのあなたくらいしかいないでしょ。指導役はちゃんと別の人に割り振るから。」
ホントならシドに全部の見極めをさせたいところだけど、さすがにそれはね。まあ、指導役としては、フランセル・トビー兄・シド・シャハザール、ってとこか。
んー、今欲しいのは「警備統括」「生産管理」「事務専門職」ってとこか。上手いことハマるといいなあ。あ、ドラグーンになってもらって、「輸送専門」もいいかも。「研究助手」もほしいけどいないだろうなあ。「フリー」にしておいて、新しい魔素溜まりを探す旅に出すってのもアリか。
あー、人材いっぱい欲しーーーい。




