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公爵領都

◆ sideフィーリア ◆




「ブーラーンーじーいー!」


 両手を広げて待ち構えてくれたブラン爺に、ぴょ~んと飛びつく。さすが金熊、安定感抜群。


「おかえり、フィーリア。楽しかったか?ドラゴンには会えたか?」

「うんっ!色んな事ありすぎて面白かったよ!ブラン爺のおかげ!ありがとっ!」


 ブラン爺もニコニコ。たっくさんのお土産とたっくさんのお土産話……の前に、精霊獣のこと白状しなきゃだったわ……。ブラン爺、ゴメンナサイ……。




 アイナとワッカはともかく、クダンとヴェントは応接室じゃちょっと厳しい。ホールにお茶のセッティングをしてもらって、他の使用人は遠ざけてくれた。クレイグがすぐに通常体制に戻って、そのあたりの手配してくれて、ホント助かるわ。


「ブラン爺に言わなきゃならないことがあって……」


と、精霊獣四体を呼び出す。彼らを見たブラン爺、びっくり……あれ?すぐ立ち直ったな。


「ははは!フィーリア、お前ほどの幸運の持ち主、初めてだ。

 さて、精霊獣様、儂はフィーリアの曽祖父、ブランドン・モンユグレと申す。お名前を伺ってもよろしいかな?」

『水の精霊獣のワッカよー。よろしくね。』

『闇の精霊獣のクダンである。よしなに。』

『風の精霊獣のヴェントだ。よろしくな。』


「えっ、ちょっ、なんでブラン爺もみんなもそんなに普通なの?もっとこう、びっくりしたりとか動揺したりとか少し嫌な顔したりとか、なんかこう、反応が……」


「びっくりはしたぞ。同時に、嬉しくもなった。」

『『『今更だし』』』


 な、なんで私だけこんなに動揺してるわけ?


『フィーリア、ドラゴンの巣であれだけのことがあった後です。今更、何があったところで、貴方が我々の(あるじ)である限り、貴方のすることを嫌がったりはしませんよ。』

「アイナどの、「()()()()()()()」とは?儂はまだフィーリアから何も聞いておらんのだが。何かあったのか?」

『もー大変だったのよー。長くなるからお茶淹れてよー。』

「ワッカ様も皿でよろしいですか?クダン様とヴェント様は何をお飲みになります?」

『いや、我は――『酒をもらおうか。わしは嘴が入る深い器で。クダンには吸い筒を付けてくれ』

「承知しました。すぐ用意いたします。」


 ……なんで私置いてけぼりで話進んでんの?ねえ、シド……っていねえや。あ、敷物とクッション用意してるわ。手際良いな。まあ、ブラン爺の元従者だし。


 …………なんか面白くなーいっ。




『前に、「相性の良い出会いは奇跡」って言ったじゃない。フィーリアちゃんは、それがもう四回も起きたのよ。しかも全員精霊獣だし。幸運どころの騒ぎじゃないわ。』

「ああ、ブラン爺の言った『幸運の持ち主』ってそういうことか。」

『そそそ。契約するにはそれなりの縛りがあるんだから。複数の精霊と契約をできた人間なんて、アタシの知ってる限りでもほんの数人しかいないわよ。』


 ホールの真ん中に敷かれた絨毯の上で、ブラン爺とクダンとヴェント、いつの間にかアイナまで加わって楽し気に酒盛りをしてる。

 ……そう言えば、ブラン爺は自分の精霊を戦場で失ってるんだっけ。違う精霊ではあるけど、しかもみんなクセ強めだけど、精霊とまた関わりができることが嬉しいのかもしれないなあ…………


『シドちゃ~ん、フィーリアちゃん寝ちゃったわよー。寝床に運んであげてー。さ、アタシも酒盛りに参加しましょっかね。』




 ま、疲れてたのは確かだよね。六歳児ムーブ出て寝落ちしたところで、別に恥ずかしくもなんともないわ。

 翌朝目が覚めると、ブラン爺にお土産を渡していないことに気が付いた。慌ててシドを呼び、朝食が終わるまでに準備するようお願いする。


 ブラン爺へのお土産は、竜鱗のお守り(高級工芸品)、竜爪の短剣(超高級工芸品)、ギガントベアの角、そしてオリハルコンだ。

 ギガントベアの角はガラリア様にあげたのよりはほんのちょっと小さいけど、それでもかなりの大きさなのでびっくりされた。

 オリハルコンは、ドラゴンの(おさ)から見せられた物を、小さめの木箱一つぶん分けて持ってきた。超希少鉱物だし、自分で稼いだ立派なお土産さっ。好きに使ってね。




 昼からは、小さめの馬車を借りて、シューベリー商会の店舗へ。グラントさんとトマスにお土産渡すのだ。あ、仕事の話もしなきゃ。


 うっわー!めちゃめちゃ立地良いじゃん。大通りに面してるし、馬車停めのスペースもちゃんとある。ブラン爺が口利いてくれたって言ってたけど、随分頑張ってくれたんだなあ。

 正面から入ると、「いらっしゃいませ」と一斉に声がかかった。ん、まずは店内チェックしようかね。


 広めの店内は、シンプルで清潔感がある。

 一階は鉛筆とフィールペンを並べてある。スタンダードなタイプのペンを手前に、奥に行けば行くほど高級品になる。いずれはオーダーメイドとかもアリかな?

 二階に行くと、ウィング紙がずらり。ちょっとずつトレントの配合を変え、比較的リーズナブルな物から高級トレント紙まで。和紙の感覚で花びらや葉を漉き込んだ紙や、薄く色の付いた紙、縁に箔押しをしてる厚手の超高級紙まで、種類は色々。いいね。紙売り場、大好き。


「フィ、フィーリアお嬢様っ!」


 店内をうろうろ見て回ってると、グラントさんとトマスがバタバタとやってきた。口の前に人差し指を出し、上を指差す。三階が事務所、って聞いてたからね。さて、上でお話しましょうか。


「お出迎えもせず失礼いたしました。」

「いえ、知らせてませんでしたもの、気にしないで。とても素敵なお店ね。気に入ったわ。」

「それはよろしゅうございました。お嬢様の店なのですから、お好みでいかようにも模様替えいたします。いつでもお申し付けください。」


 そりゃまあ商会長は私だけどさあ。偽名登録のなんちゃって商会長なんだから、そこまで気にしなくていいよ。

 あ、そうだ。お土産と仕事の話だ。


 グラントさんとトマスにも、竜鱗のお守りを渡した。グラントさんは涙目で喜ぶし、トマスは真っ赤な顔で「一生大事にします」ってぐっと握りしめてた。

 うんうん、体に気を付けて頑張って働いてね。


 で、魔鉱の安定仕入れの目途が立ったので、人造魔石の話と、ルヴレフ領から竜鱗仕入れてきたんで、それで高級ペン軸作ってくれ、って話をした。あー、あとはねー……


「鉛筆やペンのコーナーに、試し書きできる見本のペンと紙を置くのはどうかしら?毎朝チェックして、ダメになってたらすぐ取り換えるようにして。それくらいは必要経費だと思うわ。

 それから、字の奇麗な人にお願いして、奇麗で華やかな紙に……そうね、流行りの詩を一文書いてもらって、見本として置いておくのもいいかも。

 あと、花の漉き紙はサイズを半分にすると手紙用にちょうど良いわ。揃いの紙で封筒も作って横に置くといいわね。あとは…………」


 グラントさんが目ぇ吊り上げてメモを取ってる。トマスはペン先と漉き紙の在庫チェックに走った。二人とも勤勉でよろしい。

 シドが二人を気の毒そうな顔で見てる。なによー、やり甲斐とそれに見合う報酬は出してるわよう。




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