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竜石の謎

◆ sideフィーリア ◆




「ずっと疑問だったんだけどさ、ドラゴンの巣で起きたトラブル、なんで竜舎のみんなが把握してたの?ドラゴン同士で念話できるってこと?」


 ぎゃおぅ ぐるぅぐるる ぎゃわぉるる……

『全部を把握してたわけではない。緊急・高魔力の人間・助け、の三点だけだ。かなりの緊急事態ということは、崖崩れ……あの、フィーリアの落ちた崖崩れだな、あれでわかった、と。』

「ん?アレで?てことはあの崖崩れ、ドラゴンが伝言の為に起こしたってこと?」

『わざとではない。どうも(おさ)が癇癪を起こして、その、()()()()()()()ことが原因らしい。』


 おぅ、なんてこったい。あそこから繋がってたんかい。てか巻き込まれ事故ー!


『で、だ。ドラゴンたちには念話はできん。ただ、巣を出る者は、緊急で連絡がつくように、竜石を置いて行くことになっている。今回はそれで竜舎の者たちに連絡を取ったのであろう。』

「竜石?なにそれ?」


 セルガがけほんっ、と一つ咳をすると、口から小さな石のかけらが飛び出てきた。


『これが竜石、正しくはそのかけらだな。かけらのもう一方は巣に置いてある。これで簡単な連絡なら取りあえる。』


 ん?んんん?通信機?ってかその石……


『元は共鳴石という石だ。それをいくつか飲み込んでおいて、自分の魔力が馴染んだ頃に取り出して、割ると、一方で合図を出せばもう一方にそれが伝わる。魔力を馴染ませておくことで、それが誰の竜石か判別できるようになっておる。巣を出る者は、安否確認の為にみな――』

「待って待って、それってこの石のこと?」


 ポケットから、昨日魔素溜まりで拾った石を出して見せる。セルガが「キョェッッ」と小さな悲鳴をあげた。ヴェントに懸命に何かを訴える。


『そ、それはどこで?』

「え?昨日の魔素溜まり。割れてるのも多かったけど、いっぱい落ちてたよ。」

『そっ……それは、あー、コレわしから話していいのか?あ、いや、わししか話せないのか。』


 ん?なした?


『えー、その竜石はな、持ち主のドラゴンが死んだら処分する掟なのだ。遠くで死んでそっちのかけらが回収されなくとも、もう片方に死んだことは伝わるので、そうしたらそれを処分する。』

「えっ!?じゃあコレ形見みたいなもんなの?」

『いや、そこまで大仰な物ではない。竜核や竜鱗を弔う場所は別にあるからな。その竜石は、あー、その……頼むから、奴らを笑ったり蔑んだりはせんでくれ。遥か古代からの伝承なのだ。』


 ?笑う?何を?


『……遥か昔、巣から離れたところで死んだドラゴンがいた。仲間がその遺体を回収し、墓所へと弔った。竜核も竜石も持ったまま。竜石の片割れは巣に百年ほど残されておったが、それが……急に合図を出し始めた。「助けて」とな。』


 ひょっ!ホラーだったでござる!


『それを皮切りに、巣に残してあった他の、持ち主のいなくなった竜石が一斉に合図を出した。「助けて」と。墓所には何の異常もなく、誰かが侵入した形跡もなかった。

 ……ドラゴンとて創世神が創りたもうた身、既に死んでいる仲間にできることなどあるはずもなく、魂の安寧を祈るしかなかった。そして彼らは、合図を出し続ける竜石に怯え、墓所とは別の場所に処分することにしたのだ。それがあの、誰も行くことのできない魔素溜まりだ。』


 あっあー!そういうことかー。だからあの場所の環境変えたくなかったんだ。あそこまで濃過ぎると、魔物ですら近寄れないもんね。そりゃ大事な場所だわ。

 んで割れてない石は、使われずに体の中にストックしてあった石だったんだね。で、死後それもあそこに処分した、と。


「あーうん、全部腑に落ちたわ。笑ったりなんかしないよ。神を(おそ)れることが恥ずかしいことであるわけがない。コレも巣に行ったら、元の場所に戻しておくよ。セルガ、ごめんね。(おさ)にも他のドラゴンにもちゃんと謝るから。」


 セルガは「とんでもない」とでも言うようにかぶりを振った。

 あの場所に、そしてこの石ころに、そんなバックストーリーがあったなんてなあ。


「さ、それじゃ子ドラちゃんの様子見に行くかね。ヴェントは先に戻ってて。セルガはガラリア様と一緒にきてね。私も支度したら転移で向かうから。」




 先にガラリア様に声をかけ、支度を終えてシドとクレイグを連れて巣へ行くと、まだガラリア様は着いてなかった。ん、やっぱ転移って便利だわ。

 周りにわきゃわきゃとドラゴンたちが寄って来る。すわ!ドラゴン団子か?と思ったら、みんな近くまで来たら一様に頭を垂れる。あ、コレ、敬意とか服従っぽいな。


 遠くから「きゃぉきゃぉ」という声が聞こえ、伏せるドラゴンたちの間から、子ドラが現れた。


「わぁ、げんk」ドゴッッ!


 み……みぞおちヤメレ……。まあでも飛びつくことができるくらい元気になって良かった。


『もうすっかり元通りのようだ。しばらくは(うな)されたりすることもあるやもしれぬが、それもいずれ治まっていくだろう。』

「そか、時間薬は大事だものね。」


 子ドラの後ろからのっそりやってきたクダンの言葉にホッとする。

 バサバサと上から音がして、ガラリア様とセルガが到着した。さて、では、長に挨拶に行くかね。




 (おさ)に会い、真っ先に竜石を持ち出したことを詫びる。長は、恥じるような申し訳ないような顔で許してくれた。

 巣の端の裂け目に竜石を落とし、これで良し。


 んで、帰ろうとしたら長に引き留められた。何?


『こ奴らが、礼にこれを、と。』


 ヴェントの言葉で恭しく引き出されたのは、鉱石。しかも荷車一杯くらいある。えと、コレ、なんぞ?と鑑定してみたら


 おっっオリハルコンっっ!!


 なっなんちゅう希少鉱石出してくんだ!しかもこの量!


「ぅぐ、いや、ありがたいんだけど、この量はさすがに運べないよー、はは。」


 長たちがこしょこしょ相談して、ヴェントに何かを告げた。


『あー、どうやらドラゴンたちでフィーリアの家まで運んでくれるらしい。』

「家までっ?いやそれはありがたいけど、私が家に着くのなんてまだしばらく先の話だよ。私がいる時に受け取らないと、突然ドラゴンが来たら狩人と戦闘になっちゃう!」

『大丈夫だ。運んで良い時期に連絡をくれるよう、長の竜石をフィーリアに預けるそうだ。』


 長がけほり、と咳と共に石を吐き出した。それを爪先でパキンと二つに割る。そっか、竜石って一つじゃないもんね。いったいいくつくらい飲み込んでんだろう。


『受け取りの用意ができたら、これに短く三回魔力を流せばいい。ここからならそうだな……連絡してから荷が届くまでにだいたい二日といったところか。』

「いや、そこまでせんでも、ヴェントに伝言頼めば良くない?こんな大事な物を……」

『……一応わしは精霊獣だからな、これ以上雑用に使うわけにいかん、と。』


 ……雑用……通訳ってどうなんだい。ドラゴンの精霊獣に対するスタンスがわからん。


「そ、そか。じゃあありがたく……あ!もう一つ、差し支えないのであれば、ちょっと欲しい物が……」


 ヴェントにごにょごにょと内緒話。


『わかった。長に言っておこう。』


 ふう、これにてようやく一件落着だね。




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