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一夜明けて

◆ sideフィーリア ◆




 いやあ、お恥ずかしい。まさか六歳にもなって、お腹が減って泣くとは思わなんだ。


 子ドラを治した後、空腹でふらついた私は、直後に猛烈に腹が立ってきて、涙目で怒涛の指示を出した。


「精霊獣はみんな念のためにここに留まって。子ドラになんかあったらすぐ私を呼ぶこと。」

(おさ)以下ドラゴンたちはこれ以上騒ぐな。大人しく子ドラを見守ってろ。」

「セルガは単独で城まで帰ってきて。ガラリア様は私が連れて帰るから。」

「ガラリア様は城に戻ったら、大至急食事の用意をすること。もちろんシドとクレイグのぶんも。」


 そこまで一気に言って、ガラリア様に飛びついて襟首を締め上げた。


「今日ここで見たことは一切他言しない!私たちを(うるさ)く質問攻めにもしない!もし破ったら……はい!ヴェント!どうするんだっけ?」

『っぐ!ああ、え、二度とこの領地では、精霊の加護が受けられぬと心得よ!ドラゴンとの縁も切る!』

「と、いうこと!わかった?あ、あと、乙女の部屋に許可なく押し入ることもしない!今度やったら、ドラゴンたち全力で説得して、人とドラゴンの縁切らせるからね!」


 以上の指示(と脅迫)を泣きながら並べ立て、コクコクと頷くガラリア様の首を締め上げたまま城の裏門へと飛ぶ。

 そこにぺいっとガラリア様をブン投げると、もう二往復してシドとクレイグを連れ帰った。


 そこからは、飯→風呂→就寝、と一言も喋らず。実際疲れ果ててたし。


 もうね、被ってた猫なんてどっか行っちゃったよ。【精霊との会話の魔法陣】のことも、転移魔法が使えることも、精霊獣四体と契約してることも、ぜ~んぶバレちゃったんだもん。あとは脅して口止めするしかないでしょ。




「いや~、切羽詰まってたとは言え、アレはすごかったわ。や、指示の内容は何一つ間違っちゃいなかったけどね。にしたって、辺境伯様にアレ大丈夫なの?」


 朝食に呼びに来たシドにそう聞かれた。いや、もうこうなったら、開き直るしかないでしょ。あんな脅迫しちゃったんだし、淑女モードに戻しても今更だわ。


「あー、それとね、クレイグがすっげえ不機嫌なんだわ。フィー様、ワッカ様とクダン様のことブラン閣下たちにも内緒にしてたじゃん。クレイグ()()()だからあまり顔には出さないけど、ワッカ様とクダン様が現れたとき、あいつ眉ピクピクさせてたぜ。ま、昨夜のうちにサラッとは話しておいたけど。」


 あーそうだったー!なんかもう、ドラゴン見て魔鉱仕入れてすぐ帰るつもりだったのに、色々ありすぎて忘れてたよー!お説教確定だー!


 しょもしょもしながら食堂へと向かうと、途中でキール様と会った。会った?ん?待ち伏せ?


「あ、お、おはよう、フィーリア嬢。」

「おはようございます、キール様。」


 んー?なんで道開けてくんないの?なんだかモジモジしてるし。なんやコラ。しばくぞ。


「その、フィーリア嬢、今日もし予定がなければ、城下を案内したいのだが……」

「申し訳ありません。まだ色々と立て込んでおりまして、いつ予定が空くかわかりませんの。お申し出は嬉しいのですけど、またの機会にさせてくださいませ。」

「ぅ、あ、そうか……。では、また……」


 肩を落として食堂へ向かうキール様。なんだコイツ。そう言えば、コイツから礼も謝罪もされてないな。ん、()で良し。


 なんでか呆れてる風のシドと共に、食堂へ向かい、いざ朝飯じゃ!




「……あー、フィーリア…嬢は、今日の予定は……?」

「フィーリアで構いませんわ(にっこり)、ガラリア様。今日は、()()()()()が気になるので、食事が済んだら出向こうと思っていますの。ガラリア様もご一緒しますか?」

「んっ!も、もちろん、お供させていただく!」

「では、支度が整いましたらシドを迎えに行かせますね。」


 ガラリア様、ウゼぇ。脅迫効き過ぎちゃったかな。何いきなり「嬢」て。「お供」ってなんだよ、「お供」って。




 食事が終わって、支度をする前にそのまま竜舎へと向かう。


「フィーリア様、なぜ竜舎に?」

「あ、ちょっとセルガに聞きたいことあって。……ごめんね、クレイグ。ワッカとクダンのこと黙ってて。」

「……私は別に構いませんが、旦那様がお知りになったら悲しまれると思いますよ。そんなに信用がなかったのか、と。」


 ぐっ!すげえ勢いで刺さった!……参ったな。化け物扱いされたくなかっただけなんだけどな。可愛いひ孫でいたかっただけなのにな。あ、ちょっと涙出てきた。


「……まあ、わからなくもないです。旦那様の見る目が変わるのが嫌だったのでしょう?まだご家族、ジョナス様以外にも明かされていないのですよね。」

「怖がるの……変かな……?」

「いえ……いずれわかるとしても、フィーリア様がお決めになった時で構わないと思いますよ。『他人と違う』というのは、やはり知られた時の反応を想像すると……そうですね、怖いでしょうね。」


 うー、なんだよー、クレイグめっちゃイケメンだー。()()()に手ぇ繋いでくれちゃったりしてるしさ。後ろでシドがなんか「俺には刺し殺しそうな圧で尋問したクセに」とかぶつくさ言ってるけど、知らね。




 竜舎に着いて、試しに世話係のドラグーンさんに人払いをお願いしてみたら、「フィーリア様の命には従うよう言いつかっております!」ときたもんだ。なんだ、やるじゃないか、ガラリア様。


《ごめん、ヴェント。そっち行く前に、ちょっと通訳お願いしたいの。来てくれる?》

『む、どうした?子ドラゴンはまだ眠っておるぞ。』


 バサリ、とヴェントが来てくれた。そのまま頭を垂れるセルガの前へ行く。


「セルガ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」


 いや、頼むからそんなに怯えないでちょうだいよー。




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