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山頂の巣へ

◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇




「客人のみをドラゴンの巣へ連れて行くわけにはいかん。」


 ガラリアはそう頑なに主張し、同行を許された。当初は、精霊獣とフィーリア、それに従者二人で行くはずだった。そこに無理矢理同行を願い出た。もちろん、愛する騎竜のセルガも一緒にだ。

 フィーリアたちは何やらボソボソと相談し、訊ねてきた。


「ガラリア様、山頂に行くのに道はありますか?」

「あ、ああ。新人ドラグーンが使う道がある。ほぼ獣道だが、城の裏門から続いている。」

「では、裏門を出たところで集合しましょう。人払いをお願いします。ガラリア様はセルガに乗ってきてください。ヴェントもそこで待ってて。私も支度をしたらすぐに行きます。」


 精霊獣とドラゴンに乗ればすぐに山頂に行けるのに、なぜそうしないのかガラリアには疑問だったが、生憎この場の決定権は精霊獣とフィーリアにある。ガラリアは従うしかなかった。


 精霊獣の姿が消え、フィーリアは準備をするために従者と部屋へ戻った。

 ガラリアは鞍を用意し、セルガに着けながらボヤいていた。


「……セルガ、なぜ俺にはお前の言葉がわからんのだろうな。お前から直接話を聞ければ、こんな詰まらん嫉妬などせずに済むのにな……」




 フィーリアは軽装に着替え、更にナイフを装着していた。普段森へ狩りに向かうときの格好だ。シドとクレイグも武装している。


「ドラゴンとは正直戦いたくないんだがな。」

「たぶんそこは大丈夫だと思うよ。「頼み」っつってんだし。ただねえ、その「頼み」が何だかさっぱりわかんないからねえ。」

「備えておくに越したことはないでしょうね。……それよりフィーリア様、よろしいのですか?」

「あー、うん。どうせヴェントのこととか魔法陣のこととか、口止めしなきゃなんないことたくさんあるしね。ここまで来たら一緒でしょ。それにクレイグにもちゃんと戦力になって欲しいから、飛んで行くわけにはいかないよ。」


 フィーリアが楽しそうにニヤリと笑う。


「はー、旦那様といる時よりも、こき使われてるように感じるのは気のせいでしょうか……」


 そうボヤきながらも、どこか楽し気なクレイグだった。




 裏門の外には、既にガラリアとセルガが待っていた。そこにフィーリアたちが合流すると、どこからともなくヴェントも舞い降りてきた。

 城の裏門側は巨大な岩山へと繋がっており、門を閉めてしまえばそこに他の人影はない。


「アイナー、ちょっと手伝ってー。」


 フィーリアが空中にそう呼び掛けると、地面がモコモコと盛り上がり、やがて巨大な白狼の姿になった。


『お呼びですか、(あるじ)。おお、この辺りに来るのは久し振りですね。』

『むっ、おぬし、()ではないか!(あるじ)、ということは……』

『おや、()()。お久し振りです。私は今はアイナと言う名をいただいてるのですよ。』

「あーやっぱり知り合い?でもごめん、積もる話は後回しね。

 ガラリア様、こちらは土の精霊獣のアイナです。アイナ、こちらはここ一帯の領主をしていらっしゃるガラリア様。で、()()、の名はヴェントね。」


 ガラリアの口がぽっかりと開けられている。目も真ん丸だ。


「ふぃっ、あの、この、せいれ――」

「シドはガラリア様と一緒にセルガに乗せてもらって。アイナ、山頂まで行くから、クレイグ乗せたげてって。私はヴェントに運んでもらって先導する。ヴェント、前みたいに足がいい?」

『いや、背で構わん。』

「ん、ありがと。じゃあみんな乗り込んで。出発するよ。」


 フィーリアがヴェントの、クレイグがアイナの背に乗る。事態が把握しきれずぽかんとしているガラリアの肩を、シドがぽんと叩いた。


「辺境伯様、参りましょう。モタモタしてると、フィー様は平気で置いて行くお人ですよ。」






 男を背に乗せた白狼が、山道を散歩するかのように軽い足取りで登って行く。空には大鷲と一頭のドラゴン。


 フィーリアは、道すがらアイナに念話で、ここまでの経緯を説明しておいた。


《ヴェント、この山の地形、森や川の位置も含めてよく覚えておいてね。アイナ、地中の空間、特に地割れとか洞窟とかチェックしておいて。この先どうなるかわからないから。》

『承知しました。それにしても、ドラゴンからの頼まれ事とは……主といると、退屈しませんね。』

『ほう、ではフィーリアと契約できたのは僥倖かもしれんな。わしも楽しませてもらうとするか。』

《……いや、あんたら、別に私遊んでるわけじゃないのよ……》


 詳しい話は誰もわからぬまま、一行は山頂にあるというドラゴンの巣へと向かった。




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