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話だけじゃダメ?

◆ sideフィーリア ◆ 




「フィーリアっ!約束だ!竜舎へ行くぞっ!」


 ……待てや、このクソジジイ、なんで朝っぱらから乙女の寝室に押し入ってんだよ。


「おはようございます、ガラリア様。お約束は覚えてますけど、ちょっとこの訪問の仕方はどうかと思いますわ。シド、クレイグ、着替えをするので、ガラリア様を外にお連れしてくれるかしら。」


 ガラリア様の後ろからわたわたと付いてきた二人に、(あるじ)らしく命じる。大丈夫、わかってるよ。あんたたちの立場じゃこの爺さん止めようがないって。

 二人に促され、不満げではあるがやっとガラリア様が出て行ってくれた。仕方ないので急いで着替えると、ドアのすぐ外でガラリア様が待ち構えている。


「遅いぞ。さあすぐに竜舎へ行こう。そこで精霊獣様を呼んでくれ。」


 早口で言われ、そのまま脇に抱えるように抱き上げられ、シドやクレイグが止めるのも聞かずに竜舎へ連れて行かれた。フットボール抱き?いやあれは上向きだ。人をセカンドバッグみたいに運んでんじゃねえ。危ないから暴れないけども。はー、ダメだこのジジイ。




「さ、精霊獣様を!」


 仕方ないので溜息をつきつつ、ヴェントを呼ぶ。


《ヴェント、この地を治めてる領主が、話をしたいそうなの。悪いけど来てくれる?》


 たぶん通じるだろうな、と、敢えて念話で呼んでみた。すると、竜舎の離着陸用の開口部から、ヴェントがバサバサと降りてきた。


『何だここは?トカゲどもの寝床ではないか。なんだってわしがこんなとこどぅえええぇぇぇーーーー!』


 ヴェントが来た途端、ドラゴン舎にいたドラゴンたちが一斉にヴェントに押し寄せた。ぎゃおぎゃうと、ドラゴン団子再び。


『えええい!わかったと言っておるだろう!ちゃんと話をつけてやるから、いい加減離れんか!』


 団子解除。もみくちゃにされたヴェントは、昨日よりも羽がボサボサになっている。「()()()()」ってなんだろう?私に?それであんな風に契約したの?


『あー、(あるじ)、フィーリアよ。バタバタしてすまぬな。』

《いやいいけど……大丈夫?》

『ああうん、実はこやつらがな――』

《あ、ちょっと待って。いちいち通訳するのも面倒だから、必要そうな人にコレ着けていい?》


 ヴェントにピラっと取り出して見せたのは、【精霊との会話の魔法陣】。相変わらず使い捨てだが、ちょっとだけ魔法陣そのものを改良してあるので、一枚で今日一日くらいは持つはずだ。

 昨夜のうちに、入り用になるかと思い、十枚ほど描いておいた。ガラリア様があんまりうるさいから、なら直接話してもらおうと思ってね。


《コレ着けるとね、ヴェントの声が直接聞こえるようになるの。私の従者二人と、ここの領主様の三人。いいかな?》

『ん、む、まあ良いだろう。』

《ありがとう!でね、あとでヴェントから領主に、この魔法陣のことを内緒にしておくように()()()()()おいてね。あんまり他に知られたくないのよ。》

『そなた……思ったよりも()()性格をしておるのだな……』


 ……ちょっと引っ掛かる表現があったが、ともかくこれで手間はひとつ省けた。良しとしよう。




 シドとクレイグ、そしてガラリア様の三人に陣を渡し、胸元に貼って魔力を少し流すようにお願いした。

 ガラリア様は始めはちょっと渋ったけど、「コレがあると直接話せるようになります」の一言で、あっさりと了承した。どんだけ話したかったのよ。


「お初にお目にかかります、精霊獣様。私はルヴレフ辺境伯家当主、ガラリア・ルヴレフと申します。」

『うむ、わしは風の精霊獣、名はヴェントだ。そこな我が(あるじ)フィーリアが名付けてくれた。』

「おお!やはりフィーリアと契約しなさったのですか!それは羨ましい。……ときに、昨日から何やらドラゴンたちと揉めておったように見受けられるのですが……」

『む、それか。それなら……フィーリア、ドラゴンたちがそなたに頼みがあるらしい。わしはつまりその……通訳を頼まれた。』


「はあっ?通訳ぅ?え?でもそれなら、わざわざ契約させなくても話はできたんじゃないの?」

『それが、ドラゴンたちが、そなたに頼みを引き受けてもらうためには、わしの加護があったほうが良い、と。』


 はあ?ドラゴンたち、いったい私に何させる気なのよ!


『ともかく、まずは巣まで来て欲しいと……。あー、つまり、山頂にある野生のドラゴンの巣、だな。そこで(おさ)から詳しい話を――』

「なっっ!あそこは相棒を求めるドラグーンしか入ってはイカンことになっておる!いくら精霊獣様のご要望でも、了承しかね――」

『ドラゴンどもの総意だ!!』


 いや、そもそも私の意見を聞けよ。と思う間もなく、周りにわちゃわちゃとドラゴンたちが集まってきた。私を取り囲んで頭を下げ、上目遣いで見つめてくる。うー、可愛いな、チクショウ。


「ぅあ~……コレ、行かなくっちゃ駄目?」


 シドとクレイグを見る。何だよその気の毒そうな顔。


「だから言ったじゃないか。()()()()()()だ、って。」

「高所が苦手、とか言ってる暇はなさそうですね。何があるかわかりませんし、ご一緒しますよ。」


 とりあえず行かなきゃ話は始まらない、ってことか。あーもう!行けばいいんでしょ!行けば!




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