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解せぬ

◆ sideフィーリア ◆




「……で、何がどうなってるんだ?」


 ルヴレフ城の一室で、歪んだ笑みを浮かべたガラリア様に詰め寄られてる。怖いよー。


 ヴェントが帰った後、その場の空気は何とも言えない微妙なものだった。

 崖崩れの事故については、起こっちゃったもんはもう仕方がない。結果的には誰にも怪我がなかったんだし、あ、キールが肘擦りむいたらしいけど知らんわ。

 一番の問題はドラゴンたちの行動。どうも、ドラグーンの制止を聞かず飛び立ったらしい。で、よくわかんないけど私を助けるために彼らの意思で動いていたように思える。ただなあ、私にその理由を聞かれても、私もワカランのよ。


「いえ、あの、どうなってると言われましても……。」

「セルガたちは明らかに、あんたを助けようと行動していた。俺の言葉も聞かず、あんたにまっしぐらだ。いったいどういうわけだ?あいつらに何をした?」


 ふぇ~ん、何もしてないよぅ。私だって教えて欲しいくらいだ。


「あいつの相棒になって四十年近くなる。だが!今まで一度もこんなことはなかった!俺の言葉より優先させることがあるなど!」


 ……ん?


「いつだって、セルガは俺を一番に優先させてきたんだ!俺だってセルガを一番大切に想ってきた!」


 ……んんん~?


「俺以外に心を移すなど……ううっ……」


 あーあーあーウゼぇ。これアレか、嫉妬か。


「フィーリア様、心の声が漏れてます。」


 ほぇ?あらま、やっちゃった。ガラリア様が凄い顔してこっち見てるわ。


「え、えーと、ガラリア様、セルガは変わらずガラリア様を一番に想ってると思いますよ。」

「じゃ、じゃあなぜセルガは俺を置いて行ったのだ?」


 いやだから知らんがな。と、シドがそろりと手を挙げた。


「あの~、もしかしてソレ、精霊獣のせいじゃないですかね?ドラゴンたち、フィー様が落ちてすぐに飛び立ったんじゃなくて、少ししてから行ったじゃないですか。」


 そう言われてみるとそうかな?先にヴェントが来て、ドラゴン来たのそのあとだもんね。


「そうっ!そのことも聞きたいのだ!あの大鷲はやはり精霊獣様なのか?なぜあんたと一緒に現れたのだ?契約と言っていたが、精霊獣様と契約したということか?」


 怒涛の質問攻め。もういやあ~!




 ガラリア様に、わかることとわからないことを丁寧に説明し、やっと解放された。まあ、明日の朝、外でヴェント呼び出して詳しく(特にドラゴンについて)話を聞くことを約束させられたけどさ。

 クレイグがお茶を淹れてくれる。やっと一息……というか、たぶんこのあとシドとクレイグからお説教だよなあ。


「俺さあ」


 ん?どした?シド。


「フィー様の従者はともかく、護衛って思うのやめることにするわ。」

「あー……それは……同意、ですかね。私もフィーリア様に護衛は必要ないと思いますよ。必要ないと言うより意味がない、ですかね。騎士たちは、まあ、馬車の護衛ということで。」


 えっ?えっ?なにそれ?私見捨てられるの?


「崖崩れはまあ、事故だししょうがねえと思うんだ。キール様助けて自分が落ちるのも……良くはないが仕方ない状況だったと思う。でもさ、ドラゴンたちタラシ込んだり、精霊獣が現れて結局契約しちゃったり、ってさ、フィー様はなんにも悪くないんだけど、もう『()()()()()()』って思うしかないよな。」

「……そうですね。もう護衛云々でどうにかできる話でもないですしね。その辺りは、フィーリア様ご自身の才覚で乗り切っていただくしかありませんね。」


 ……なんか……なんだろう、褒められてるのか貶されてるのかわかんない。てか多分貶されてるよね。()()ってなんだ、()()って。


「それで、明日の朝本当に精霊獣様を呼び出すんですか?」

「え、だって約束しちゃったし。」


 シドとクレイグが顔を見合わせる。


「フィーリア様、明日呼び出しても精霊獣様は来ない可能性があると思いますよ。」

「えっ?なんで?」

「あのさ、元々この辺りにいた精霊獣が突然姿を見せたワケだろ?それってさ、今まで人間と関わり持とうとしなかった、ってことじゃん。しかも、長年ここら一帯を治めてきたルヴレフ家の人間であっても、だ。」

「いくら契約したとは言え、それが今更、フィーリア様以外の人間と会いたいかどうか……」


 あー、なるほど。確かにそれは考えられるよね。


「ああ、うん。でも多分大丈夫だよ。ヴェント……風の精霊獣ね、来てくれると思う。」


 二人が首を捻る。


「何か根拠が?」

「根拠……って言うか、今まで人前に姿を見せてなかったのも、私の前に姿を現したのも、理由があるみたいだから。」

「「理由?」」


 んーと、クレイグにはワッカとクダンのことは内緒だったっけな。


「アイナもそうだけど、精霊って基本的には、人間が好きなんだよ。そうじゃなきゃ、魔法自体存在しないじゃん。精霊の力借りてるんだから。ただ、よっぽど魔力が高くないと彼らの声は人間には聞こえない。

 話したいのに通じないって辛いじゃない。それがもどかしくて、あんまり人前に姿を見せなかったんだと思う。」

「……確かに以前、アイナ様は山津波で子供を助けていたと、旦那様がおっしゃっていましたね。人嫌い……ではない、ということですか。」

「あ、そう言えば、ブラン閣下も水の精霊と契約してたって言ってたな。もっと魔力が高かったら、精霊獣と契約できたかも、ってことか。」


 そうか、ブラン爺って元々契約者だったっけ。あれ?でも精霊獣以外の精霊とも契約できるんなら、なんでこんなに契約者が少ないんだろう?他にもいたっておかしくないのに、今まで聞いたことないもんなあ。

 あとでワッカにでも聞いてみるか。


「うん。で、今回ヴェントは強い魔力を感じたから気になって来てみた、って言ってたの。私必死で崖にしがみついてたから、たぶんその時使った風魔法のことだと思う。

 私が通訳できるんだから、ヴェントは来ると思うよ。」

「「なるほど」」


 自分でも自分に言い聞かせてる自覚はちょっとある。でもホント、明日ヴェントが来てくれなかったら、またガラリア様に詰め寄られちゃう。

 頼むよ~、ヴェントぉ~。




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