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道行き 3

◆ sideフィーリア ◆




 街道を先へ進む。馬車の中は無言だ。

 途中見つけた小川で返り血を洗い流し、野営地まで来た。騎士たちが、火を起こして野営の準備をする。


「さあて、フィー様はこっち来て座って。」


 う!やな予感!クレイグも待ち構えてるよ。


「まずは、フィーリア様のお力のお蔭で助かりました。ありがとうございます。 () () () ! 」


 ああホラ、やっぱりお説教だ。ううう~。


「一つ目、何かあれば真っ先に飛び出ようとするのはお止めください。我々は護衛です。我々だけで済むものまで出ようとしないでください。」

   「や、でも、戦力差が……」

「二つ目だ。素材だ何だ言ってないで、素直に精霊獣呼べ。戦力差云々言うならまずソコだろうが。」

   「や、騎士さんたちもいるし……」

「三つ目です。なぜ魔法を使わないのですか。ほぼ身体強化だけで肉弾戦をしてらしたでしょう。フィーリア様のお力なら、魔法を使えばもっと楽に倒せたでしょうに。」

   「や、それは隠し技と言うか……」

「で!四つ目!返り血まみれで良い笑顔してんじゃねえ!あんた一応貴族令嬢なんだぞ!」

   「……や……」


 ダメだ~、完全に私が悪いや。精霊獣呼ばなかったのや魔法使わなかったのは、騎士たちにあまり見せたくなかったってのもあるけど、どう考えても私が暴れたかった、ってのが一番だもんなあ。

 だってぇ、狩りの訓練だとこっち有利の集団戦だし、そもそもそんなに強い魔物出るとこまで行かないし。フラストレーション溜まってたんだよお!


「ゴメンナサイ。今後はナルベクお任せスルようにしマス。」

「……はあ、棒読みやめろ。」

「食事の支度ができたようですよ。行きましょう。」


 あーあ、ついにクレイグにまでも残念な子を見る目をされてしまった。




 大人しく二人の後について行き、パンとチーズ、簡単なスープだけの食事をする。


「ところでフィーリア様、馬が全く動揺していなかったのはなぜですか?通常の結界とはちょっと違うように見えたのですが。」

「あー、アレね。んと、魔物が押し寄せちゃうと馬が怯えて暴れたり逃げたりするじゃない。それを防ぐのに、結界を重ねたの。」

「重ねる?それだけですか?」

「うん。一番外側に光の結界で魔物が近寄らないようにして、その内側に双方向の遮音結界かけて、その内側に土の結界かけて中と外両方から見えないようにしたの。あ、ちょっとだけ馬本人?に直接魔法もかけたよ。念のために隠密と、あと鎮静と精神耐性強化と身体強化かな。」


 クレイグとシドが大きく溜息をついた。


「……力を入れるところが間違ってます。」

「え、だって馬大事じゃない。」

「いや!大事だけど!そうじゃなくて!」


 なんだよーう。馬いなくなったらヤバいんだぞー。馬車本体と人間六人だけでどうすんだよー。




 そこから王都までは、特に何事もなく過ぎた。


「王都に寄るの?」

「いえ、特に用事はないのですが……。寄りたいですか?」

「微妙かなー。タウンハウスあるわけじゃないし。あ、でも騎士さんたち、一度宿取って休息入れたほうがいいかな?」

「この馬車で護衛付きだと、高級宿じゃないと目立つかもしれませんね。だからと言って公爵家のタウンハウスを使うわけにもいきませんし。」

「あーそれなら、ちょっと過ぎたとこに小さめの街があるから、そこで宿を取ったらどうだ?まあまあ良い宿があったはずだぜ。」

「んじゃそうしようか。お風呂入りたいし、久し振りに手足伸ばして寝たいかも。」


 シドとクレイグが急に何かに気付いたような顔をし、こっちを見てくる。眉が八の字になっている。何よう。


「フィー様、侍女いないのマズかったか?宿で誰か雇うか?」

「へ?なんで侍女?なんの話?」

「……フィーリア様、このままでは私かシドが入浴のお手伝いをすることになります……」


 はあー?何言ってんのよ!六歳だけどレディーだぞ!


「バっっ!風呂くらい一人で入れるわ!」

「そっそうか?なら念のためにドアの外で待機しとくからな。何かあったら呼べよ。」


 なんか久々に幼女扱いされたわ。いや、貴族令嬢扱いかな?てか、あんたら急にそのこと思い出して慌ててんだろうけど、オタオタしすぎだわ!




 王都を過ぎたところの街で宿を取り、しばしの休息。丸一日ゆっくり休んで、再びルヴレフ領へと向かう。


「ねえシドぉ、なんか騎士さんたちが、キラッキラした目で色々貢いでくるんだけど……」

「あー、それな。街で花だの菓子だのリボンだの買ってるから、俺も気になって聞いてみたんだよ。そしたら、どうもあいつら、フィー様を崇拝してるみたいだぜ。」


 は?すうはい?なんだそりゃ。どーでもいいけどそのニヨニヨ顔やめんか!


「まあ、負傷した二人はフィーリア様に命を救われてますし、もう一人はあの鬼神のような闘いを目の当たりにしてますからねえ。仕方ないかと。」

「天使か女神か、みたいに言ってたぜ。ま、大人しく貢がれておくんだな。」


 マジかー。勘弁してくれー。仲良くなるのはいいけど、そんなん望んでないわー。




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