ぶっちゃけた
◆ sideフィーリア ◆
さっきまで描いてた魔法陣を、ジョナ兄とシドの胸元に貼り付ける。まだ慣れてないから陣もでかいのよ。
「二人とも、これにほんのちょっと魔力流してくれる?これで精霊獣の声が聞こえるから。
アイナぁ、ちょっと来てくれる?」
巨大な白狼が姿を現す。ジョナ兄が息を飲んで固まった。シドは顔見知り?なので平気な顔だ。
「土の精霊獣のアイナだよ。アイナ、こっちはジョナス、私の兄。で、シドのことは知ってるよね。」
『お初にお目にかかります。主の兄君と……そちらの人間の名は『ちゃらお』ではありませんでしたか?』
「ちげーよ!ほらー!あんたが変な名前で呼ぶからー!」
ああ、ごめんごめん。でもちゃんと声が聞こえてるみたいで良かった。んで、まだ終わりじゃないんだ。
「ワッカ、こっち来て。」
『はぁーい。何なにー?おやつー?』
「あとであげるよ。えーと、水の精霊獣のワッカです。ワッカ、こっちは私の兄のジョナスと従者のシド。覚えておいてね。」
『へー、あに?似てるねー。アタシ、ワッカだよー。よろしくねー。』
突然現れた喋る黒猫に、今度はシドまでもが固まる。
「クダ……ちょっ、なんでもういるの?まあいいや。闇の精霊獣のクダンです。クダン、私の兄のジョナスと従者のシドだよ。」
『我はクダンと申す。よしなに。ほう、魔法陣は上手く使えてるようだな。』
あれ?ジョナ兄もシドも、ドア近くまで後退っちゃってる。どしたん?怖くないよ。
「んー、それで、今この子たちに協力してもらって、研究を進めてるの。研究所は……まあ一度は案内したいけど、私一人でしか飛べないしどうしよう?」
『明日、森まで来て呼んでいただければ、私が案内しましょう。二人くらいなら乗せて運べますし。フィーリアはそこから先に室内に飛んでおけばいいでしょう。』
「えー、どうせなら私も一緒に森の中行きたいなあ。」
『ならば我も運ぼう。人間を乗せたことはないが、そこの大きなほうの人間なら、多少の無理も効くだろう。』
「え、だって走るよ。クダン走れるの?」
『汝は我を何だと……まあ良い。我も行くからな。』
ワッカにお土産のおやつを持たせて、一先ず精霊獣は解散。した途端に、ジョナ兄とシドから矢継ぎ早に質問が飛んだ。
「ナニあれ?精霊獣って何?」「なんで三匹もいるんだ?全部あんたの契約獣なのか?」「どういう経緯で契約なんてすることになったのさ!しかも三匹も!」「コレ、ブラン閣下に報告しても大丈夫なのか?」「飛ぶってなにさ、飛ぶって!空を飛ぶってこと?」「なんで『ちゃらお』の訂正してねえんだよ!」
あーもう、うるさい……。
翌日、三人で森に入ってアイナとクダンを呼ぶ。私とジョナ兄はアイナに乗り、シドはクダンに乗せてもらう。シドの腰がちょっと引けてて笑えるな。軽い駆け足くらいのスピードで森の奥、アマト研究所に向かう。
魔物が出たら闘う気満々だったんだけど、アイナとクダンいたらほぼ出てこないね。普通の野生動物すら出てこないわ。のんびりお喋りしながら進めるね。
「これ、シャハザール様に知られたら大騒ぎするんじゃないの?」
「だろうね。だから話す気ない。」
「シャハザール……デールラントの元副神官長で孤児院の院長してる奴か。確か精霊研究の第一人者だったな。」
「んあ?なんでシドが知ってるの?」
「クレア様、と言うかダーウィング家のことは定期的に報告が入るんだよ。まあ、ジジ馬鹿だな。」
怖ぇな、諜報部!ってか、だからブラン爺すぐに私のことわかったんだ。母様の手紙より前に色々バレてたってことか。
結局生き物とは一切遭遇せずに、研究所へ辿り着いた。
入り口の隠蔽を解く。
「ここが、アマト研究所の入り口だよ。」
『はぁ~い、ここからはアタシが先導してあげるわよ~。』
突然ワッカが現れた。まあ、ここの通路って、アイナでギリギリ、クダンは全く通れないしね。君ら先に中行ってていいよ。
かなり狭い入り口を抜け、光の玉を出して照らしながら奥へと進む。ジョナ兄の息が上がってきた辺りで、ようやく最奥へと着いた。
『はぁ~い、とうちゃ~く。』
「……なんだ?ここ。部屋か?」
「いや、設備おかしいでしょ!研究室より広いし!」
あー、ごめんごめん。だってゼロから作れる秘密基地だったんだもん。そりゃ張り切るさね。
「ここなら研究……も…………」
「ジョナ兄?」
「ジョナス様、顔色悪いぞ。」
「……ごめん、ここ……僕には無理みたいだ……」
「ジョナ兄!」
倒れかけたジョナ兄の手を慌てて掴む。と、次の瞬間二人で自宅の研究室にいた。あれ?
「な……ここ……うち?なんで……?」
「あー、えーと、ちょっとここで休んでて。今シドも連れてくるから。」
アマト研究所へ転移すると、シドが取り乱してる。
「おいっ!何だよ今の!急に消えるとか、まるで――」
「あーごめーん。いつの間にか連れて飛べるようになってたみたい。みんな、今日は解散でいいよ。ありがとね。さ、シド、行くよ。」
言うや否や、シドの手を引っ掴んで自宅研究室へと転移。
「……は?ここ、研究室、か?」
二人ともポカーンとしてる。
「とりあえず、ジョナ兄まだ顔色悪いし、横になってて。魔力酔いだから回復魔法も効かないの。シドも適当に座りなよ。今、お茶淹れてあげるから。」
そうしてお茶を淹れながら、この後どう話したもんかと考えを巡らせる。転移魔法って反則みたいなもんだからね。
でも、もしシドも転移使えるようになったら便利だよね。あちこちへの連絡を時間のロスなく伝えられるし。あー魔法陣で転移魔法使う手もあるか。いや、時間のロスを考えるなら、電話のようなリアタイの連絡手段を開発するほうが使い勝手がいいか。魔力媒介でメッセージを飛ばすとしたら…………
「フィー様っ!溢れてる!お茶っ!」
ん?ああ、やっちゃった。まあ、いつものことか。




