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潜入

◆ sideフィーリア ◆




 事前情報によると、ひい祖父(じい)ちゃんは滅多に家を離れることがないらしい。その代わり、偉そうな人から怪しげな人まで、訪れる人は絶えないそうな。なにその溢れるフィクサー感。


 ちょっとだけジョナ兄に協力してもらって、今日の夕方から明日の朝まではフリータイム。最近研究で籠ることも多いから、これくらいなら怪しまれずに行動できるのさっ。

 もっともジョナ兄は、私が前公爵邸に乗り込む気なのは知らないけどなっ。






 日が落ち始め、伯爵領都(デールラント)外縁の目立たないところに転移。うっ、やっぱそこそこ距離あると、魔力消費激しいねえ。さてと、アイナを呼び出すか。


「アイナ、急に呼び出してゴメンね。今からユグレリアの前公爵の家まで乗せてって欲しいの。だいたいの場所は聞いてるから、目立たないように運んでもらえる?」

『無論、是非もありません。ワッカやクダンではできないでしょうしね。』


 そう言って、アイナは楽しそうに笑って、背中に乗せてくれた。アイナごと、認識阻害をかけた上で隠密魔法で包み込む。これだけやれば、滅多なことでは見つからない。

 これで準備は万端。ユグレリアまでレッツらゴー!




《この辺りだと思うんだよね。》

『この右側の高い塀ではありませんか?』

《うーん、ぽいよねえ。表札も番地もないと、探すのがこんなに難しいとは。》

『門まで行けば、家紋が掲げてあるはずですから、とりあえず門まで行ってみましょう。』


 アイナ、頭いいな。そっか、家紋ね。

 塀に沿って歩き始める。あ、これ門?小っちゃくない?


『裏門ですね。そこそこ人の出入りはあるようですが。あ、すぐ横に掲げている旗、家紋が入っていませんか?』

《あ、ホントだ!……うん、公爵家の家紋だね。》

『さて、これからどうしますか?』

《うーん、中の様子探りたいんだよね。塀乗り越えて、入ったところで待機しててくれる?身体強化使えるし、私だけで隠密かけたまんま、あちこち覗いてみるよ。》


 裏庭に降り立ち、アイナと別れて屋敷を探りに行く。てか、屋敷って言うより城とか砦っぽいな。やたらゴツい造りをしてるよ、この建物。


 身体強化で二階辺りに飛びつき壁伝いに進んで、正門正面にある高窓を覗いてみる。一・二階ぶち抜きのホール、かな?人多いな。なんかの夜会みたいだ。最初に正門に回らないで正解だったかも。

 そのまま二階の窓をちょこちょこ覗いていく。控室っぽかったり、カードやってる部屋があったり、二階は客用の部屋が集まってるみたいだな。四階建てってことは、四階がプライベートエリアだろうから、三階は……なんだろう?


 聞いてた前公爵の風貌は、金髪ウェーブの赤目。ホールにも二階にも、金髪はいたけど赤目はいなかった。

 夜会っぽいのやってるってことは、主がプライベートエリアに引っ込むってことはないだろうし、三階探してみるか。




 おっ?アレかな?


 何部屋か覗いたところで、裏庭に面したバルコニー付きの部屋の中に、金髪赤目の爺さんを見つけた。お付きの人らしき若い男二人を後ろに従え、ソファーにどっかり座って、目の前のおっさん二人組を威圧してる。

 おっさんたち、顔色悪過ぎー。やたらとペコペコしてるし。


 やがて話が終わったのか、おっさんたちはペコペコと頭を下げつつ部屋を出て行った。

 爺さんの後ろにいたお付きの、チャラいほうの男が、爺さんに何やら耳打ちをした。爺さんはひとつ頷くと、真面目っぽいほうのお付きを連れて部屋を出て行った。残ってるのはチャラい感じの男だけ。




 ……()()()()()?めっちゃ見られてるよねこれ!なんで?あのチャラ男、私のこと見えてんのっ!?


 チャラ男がゆっくりと私のいるバルコニーへ近づいてくる。後ずさる私から、決して目を離すことはない。チャラ男が窓を開ける。


「やあお嬢ちゃん、迷子かな?」


 くっそ!今まで隠密見破られたことなかったのに、それ見破るってことは、コイツかなりできるぞ!


「その幻視も解いたらどうだ?さすがにこんなところに幼女ってのは面白過ぎる。何者だ?」


 ……ん?は?コイツ、私の見た目が幻視で作ったものって思ってんの?ああいや、わからんでもないけどさ。


「観念したらどうだ?どうせなら絶世の美女にでもすればいいものを、そんなちんちくりん――」

「ちんちくりんで悪かったなあっ!これでも地元じゃ美少女で通ってんだ!チャラ男のくせに舐めんじゃねえっ!」

「え?幻視?じゃない?え?え?」


 混乱したチャラ男が手を伸ばしてくる。そう簡単に捕まってたまるか!目を合わせたまま後ろに飛びすさって手摺りを越え、バルコニーの下へ飛び降りた。

 こりゃまた見事な庭園だね、と感心する間もなく、すぐさまチャラ男が追ってきた。その手にはナイフがある。


 バっ、てめえ、こんなとこでやりあったら、バラが散って勿体ないだろうがっ!




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