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商会設立への道

フィーリア、五歳です。身体強化では筋肉は増えません。

◆ sideフィーリア ◆




「というわけで、商会を設立しようと思う。」


 夕食の席で、全員を前に父様が宣言した。いや、「というわけ」って何よ、「というわけ」って。何が何やらわかりませんがな。


「……あなた、それじゃ誰にも何も伝わりません。」


 あ、母様静かに怒っとる。父様ってこういうとこホントにポンコツよねえ。


「旦那様、一通り資料は作ってありますので、夕食後にお話しされてはいかがでしょう。」

「お、う、うむ、そうだな。そうするか。」


 ダルトンありがとう。ダーウィング家はアナタで持ってるようなものだよ……。




 マーサにお茶を淹れてもらって、リビングに全員集合。父様が改めて話を切り出す。


「実は来月から、モンユグレ公爵とトレント葉の専売契約を結ぶことになった。まあ、トレント葉とは明かさず、特別な効能を持った葉、と説明したのだが。葉が全部破砕してあって助かった。」


 おお!公爵との折衝、上手くいったんだね!三人がかりで上手いこと誘導できたみたいだ。

 てか、最初から「原材料を秘匿」っつってんだから、トレント葉の破砕くらいはしときますよ。


「それで、今まではダーウィング家として商品を卸してきたが、公爵家と継続した取引を行うなら、いっそ商会を作ってはどうか、と公爵から提案があった。」


 は?え?それってもしかしてハメようとしてない?ヤバくない?


「ちょ、ちょっと待って父様。それって、商会作ってやるから利権に噛ませろ、的な……?」

「ああ、いや、そうではなくてだな……ダルトン、フィーリアに資料を見せてやってくれ。」


 慌てた父様に制され、ダルトンから資料を受け取る。ふむふむ……。


 なるほど。公爵側も自分のお抱え商会を通して契約したいということなのね。まあそりゃそうか。公爵家ともなれば、事業の一つ一つを公爵自身が動かしてらんないし、手持ちの商会に指示を出せば済む話だしね。

 そうなると、商会同士のやり取りで契約結ぶほうが確かだし、うちも、うちの意向を酌んだ商会を作るのが今後を考えると良いのではないか、という提案か。うん、悪くない。


「公爵閣下も、クレアの大伯父にあたるしな。そこまで阿漕な真似はしないよ。」


 父様に苦笑されちゃった。大伯父てことはお祖父(じい)様の兄弟……いや、お祖父様が伯爵だから、公爵家を継いでんなら兄か。まあそれなら、おかしな画策はしたりはしないかな。


「う~ん、そうだね。うちも商売に明るいわけじゃないし、商会を持つのは悪くはないと思うよ。フィールペンとかウィング紙とか鉛筆とか、その辺りの主力商品もそのまま商会の扱いに移せるしね。」


 両親とダルトンがホッとしたような顔をする。ん?なんで私の顔色伺うの?

 おずおず……といった感じで、父様が喋り始める。


「それで……だな、商会を始めるにあたって、実務を務める会長代行となる商人は、今出入りしている商人とか、候補者はいるんだが、その、商会長の名義を誰にするかという……」

「「「そんなのフィーリアに決まってるでしょう!!!」」」


 あ、びっくり。アリシア姉様とアンディ兄様とジョナ兄の声が揃った。ちなみにトビー兄はよくわかってない様子でお茶を飲んでいる。安定のトビー兄だな。


「フィーちゃんが頑張って始めた事業ですのよ!」

「立ち上げから経営まで、フィーリアの努力の賜物です!」

「どの商品もフィーリアの発想と研究で作り上げた物なんだ!」


 あらららら……何だかエラい高く評価してもらって、きょうだい愛からだとしても、嬉しいなあ。


「まっ待て待て、お前たちの言いたいこともわかる。今ある商品は、全てフィーリアあってこそ、だ。だがな、フィーリアが優秀であればあるほど、今はそれを隠さなければならん。

 もし、全ての商品をフィーリアが開発したことが世間に知れたら、どうなると思う?ただでさえ全属性持ちなのを隠しているのに、金になる能力まで高いとなったら、高位貴族だけじゃない、まず間違いなく国がフィーリアを手に入れようとするぞ。」

「そもそも、成人もしていない僅か五歳の少女が代表となれば、それだけで注目を集めてしまうもの。今フィーリアの能力が(おおやけ)になってしまうのは、得策ではないわ。」


 ん、まあ、確かに。まだ自分自身はともかく、家族や家を守り切るだけの財力も権力もないもんなあ。

 私だけの都合なら、父様でも母様でも、何ならダルトンでも名前だけ借りて代役立てたっていいんだけどなあ。でも、家族の気持ち考えると、ここはやっぱり私が代表になったほうがいいのかな。


「私も、まだ自分の名前が表に出るのは避けたいかな。もう誘拐とかはされない…というか返り討ちにできるだろうけど、高位貴族とか王族とかは関わりたくないなあ。なんかこう、名前が(おおやけ)にならないような良い方法ないかな。」


 私の発言を聞き、両親とダルトンが顔を見合わせて頷く。何なになんなのー。


「我々も同じように、商会はフィーリアの名でなければ意味がないと思ってる。だが今は表に出すのはあまり良くない、というのも同意だ。」

「そこでですね、抜け道を考え出しました。ここ二十年以上サウデリアでは適用されておりませんが、間違いなく王国法には則っております。」


 へ?なに?ダルトン、ちょっと悪い顔になってるよ。


「『国内に於ける要人・重要人物保護の為の名義人秘匿法』を使うのでございます。」



 …………長っ!なにそれ???




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