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魔素溜まり

◆ sideフィーリア ◆




 狩り、というか戦闘訓練をするようになって、最初はただの体力作りから始まったんだけど、ここ最近トビー兄の成長が著しい。まあ予想はついてたけど。ちなみにジョナ兄は、準備体操とランニングが終わったら、そそくさと研究室へと移動。これもある意味予想通りだね。おかげで石鹸の質が良くなってる。

 アンディ兄様はいつも父様やフランセルと訓練してるんだけど、気付いたら横で一緒に素振りしてたはずのトビー兄が、いつのまにやらフランセルと手合わせしてる。いーなー。


「フランセルっ!わたしも手あわせするっ!」

「え、いや、俺まだクレア様に殺されたくないんスけど。」


 ……断られた。ならば実力行使だ!


 休憩中や見かけたときに、素振り用の木剣を持ってフランセルに奇襲をかけまくる。防がれる。奇襲をかける。躱される。奇襲をかける。受けられる。

 そんな日々の攻防を見ていたダルトンが、


「お嬢様、よろしければ私がナイフの手解きをいたしましょうか?」


 おおお!ナイフいいね!木剣て意外と重いのよー。まだ体小さいし、ナイフのほうが実戦的かもね。




 ダルトンは、父様や母様に手解きの許可をもらってくれた。なにやらすごい話し込んでいたようだけど、私の能力とか性格とかを考えた上で、許可やむなしということにになったらしい。

 母様の、残念な子を見るような目が、ちょっと解せぬ。


 ダルトンは本当は剣のほうが得意なんだけど、家令になってからナイフを覚えたそうだ。服に隠せるからだって。こっわ。

 まずは体に合うナイフを選び、手入れの仕方や扱いから始まって、持ち方、攻撃の防ぎ方、投げ方、それに合間合間に魔法を挟むように指導された。ダルトンわかってんじゃーん。




 体力・技術がそれなりになってきたところで、時々森に狩りの実地訓練に行くようになった。メンバーは、私、トビー兄、アンディ兄様、フランセル。ダルトンが時間のあるときは付いてきてくれるけど、たいていはこの四人。

 普通の兎や猪、魔物もホーンラビットやイビルバットくらいなら単独で倒せるようになった。あとは、いかに素材を傷つけずにキレイに倒すかだね。

 大ムカデが出たときだけは一人で速攻逃げ出した。足の多い虫嫌いなのよ。解体や素材の剥ぎ取り作業は平気なのにね。

 あとでダルトンに「そういうときは魔法で遠距離攻撃をなさい」って説教されちゃった。まあ確かにな。でもそもそも見たくないんだよ。ぞわぞわする。






 今日も今日とて、四人で森で実地訓練。いつもより、ちょっと奥まで足を延ばしている。

 これくらいなら、あんまり出てくる魔物に違いはないもんなんだね。小物を狩って、肉や素材を確保しながら奥へと進む。


 と、植生が変わった。なんか空気も変だぞ。魔法で索敵してみたら、生物はいないが、なんかこう……上手く言えないけど変な感じのところがある。


「あー、コレたぶん、魔素溜まりがあるっスね。トビー坊とフィー嬢ちゃんは見るの初めてっスか?」


 魔素溜まり?何それ?


 フランセル曰く、魔力の元となる魔素の濃度がたまに高い部分があって、そこに魔物が長時間晒されたりすると、魔物が狂化したり変異することがあるんだそうだ。

 稀に中心地に呪物が埋まってることもあるけど、たいていは地形や風の具合で溜まりやすい場所にあるんだって。ガスみたいなもんなのかな?


 フランセルの先導で、魔素溜まりの中心に行ってみる。


「ぅあ~、何か気持ちわりぃ。吐きそー。」

「体が重い感じがするよね。頭も痛くなるし。」

「そっスね。あんまり長いこといないように、って狩人になったばっかの頃言われたっス。」


 あれ?兄ズ二人ともそんな感じ?確かにちょっと空気がねっとり重い感じはするけど、私そんなに体調に変化ないなあ。

 フランセルが、荷物の中から小さな魔石を取り出した。半球型にカットしてある。それにちょっと魔力を通すと、そのまま地面に置いた。やがて緩やかに辺りの空気が舞い上がり始める。


「それ、なあに?」

「魔素溜まりの浄化用の魔石っス。裏に風と光の紋が刻んであって、教会で買えるんスよ。魔力通して置いておくと、ゆる~んと風が流れて、魔素を散らすっス。光はほんのちょっとで、魔物除け程度。魔物に魔石持ってかれないようにしてるんス。一年くらいは持つっスよ。」

「風のまほうで、わーっていっぺんにふきとばしたらダメなの?」

「それでもいいスけど、またちょっとずつ溜まり始めちゃうんで、狩人はたいていこっち使うんス。どうせ魔石は使い捨てだし。あと俺、風魔法使えないんスよ。」


 ありゃ、それは失礼しました。

 にしてもちょっと気になる。なんで私は平気なんだ?あとでワッカとアイナに聞いてみるか。






 夜中、予め用意してあったお茶とお菓子を精霊獣たちにふるまう。精霊は飲み食いしなくても平気だけど、これはこれで嗜好品扱いで楽しいんだそうな。こっそり静かなティーパーティーだね。


『あー、そう言えばそんなんもあったわねえ。』

『地上ではほとんど地形のせいですが、地下では魔脈から噴き出したり滲み出したりして溜まっている場所もありますよ。』

《え?魔脈?なにそれ?》

『そうですね、地下水のようなものをイメージするといいかもしれません。地下には魔素の大きな流れがあり、地表に染み出しても風に乗って霧散するのがほとんどですが、出てくる量が多かったり空気の流れが悪かったりすると、そのまま溜まり続けることもあるんです。』

《へー、ホントに地下水みたいだねえ。ところで、何で私は具合悪くならなかったの?》


 精霊獣たちが顔を見合わせる。


『……そりゃアンタ、小皿に水を入れるのと、タライに水を入れるのが同じなワケないでしょーが。』

『ふうむ、許容量の問題ですね。基礎魔力が多ければ多いほど、魔力酔いになりにくくなりますから。』


『アンタは規格外でしょ。』

『貴方は規格外ですからねえ。』


 なんか二人とも酷い。私は普通の女の子なのに。




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