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仕方ない(でも臭い)

◆ sideフィーリア ◆




 今日は、父様とアンディ兄様と一緒に、管理地の視察に連れられてきてる。製紙工場を建てて以来、こうして視察に同行することも多くなってきた。

 なんで幼女を連れ回すのよ。研究したいものいっぱいあって忙しいのにぃ。


「お前から見て、何か気付くことがあったら言ってくれ。」

「フィーは発想が面白いからね。父上は頭が固いから、フィーの自由な思いつきが欲しいんだと思うよ。」


 私の能力の情報が、家族全員(+ダルトンとマーサ)に共有されたはいいけど、な~んか便利に使われてる気がしないでもない。まあ、男爵家のためになるならいいんだけどさ。


「……なんか、ここのはたけの土のいろ、へんじゃない?」

「ああ、この辺りはなぜだか土が良くなくて、あまり作物も育たないらしい。」


 ん?それって「土が痩せてる」ってことじゃないの?


「ひりょうは何をつかってるの?」

「ひりょう……って何だい?お祈りのことかい?」

「土の精霊への祈りなら、毎年種を蒔く前に、兎の頭骨を捧げて祝詞をあげてるぞ。」


 なんですとー!祈り!骨粉ですらない!


 えとえと、トレント葉だけじゃ全然足りない。肥料と言えば鶏糞とか牛糞とかだけど、作り方知らない!辛うじて発酵させなきゃいけない、ってことしかわからん!だって肥料ってホムセンに売ってる物だもの!


「ねえ父様、みのりのわるい畑だけ、()()()()()()()()にできないかな。ひりょう、っていう、土を良くするものを作りたいの。」

「ひりょう……それは金がかかるのか?もし土が良くなるなら試したいが……。」

「もと手はたぶんそんなにかからないし、今はかみのりえきもあるから、そっちからまわすよ。」

「む、それは、クレアが…………いや、お前がそこまで言うなら試す価値はあるか。」

「ホントに!?じゃあじゃあ、よういしてほしい物があるの!」

「何だ?」

「牛の()()とにわとりの()()!」

「「!!!」」


 あ、父様もアンディ兄様も絶句しちゃった。てへ。






 なんと、村三つ合わせても牛は四頭しかいなかった。鶏は二十羽くらいいるけどね。兄三人とフランセルを駆り出して、荷車いっぱいに牛糞と鶏糞を掻き集める。

 家からちょっと離れたところに、雨除けだけ建ててもらって、とりあえず積んで積んでー。

 あ、双子は溜まってるトレント葉運んできてね。

 アンディ兄様とフランセルは、森へ行って腐葉土集めてきて。あ、腐葉土ってのはね、枯葉とかが腐った感じにグダグダになって土みたいになってるやつだよ。

 はーい、全部集まったら、みんなで混ぜて混ぜて~。


 とかやってたら、アリシア姉様と母様に泣かれたでござる。


「女の子がそんな……そんな……糞とか集めたり……臭いっ!」

「やっと製紙も利益が上がってきたのに、またこんな設備……臭いっ!」


 いや、結局ソコかーい。


 まあ確かに、私と三兄とフランセル、洗ってもなかなか匂いが取れなくなってる。

 この前ワッカと会ったときにも、物凄い顔されたもんなあ。あ、でも、そのとき貰った木の実、アレでかなり匂い取れたっけ。こっちでの名前は無い植物みたいで、でも鑑定した限りではムクロジに近い種なのかもしれない。サポニン入ってるし。

 あ?なにこれ、私もしかして石鹸の開発しなきゃいけないってこと?えーやだよーめんどくさーい。つか作り方知らなーい。だいたいこの植物だって、どこに生えてるかも知らないもん。


 とりあえず、ワッカにこのムクロジ似の実を集めてきてもらって、当面はそれでやり過ごそう。

 兄たちとフランセルにも渡さなきゃね。みんな臭いし。そしたら、紙の研究が一段落したジョナ兄あたりが興味持って、石鹸の研究してくれるかもしれないし。

 うん、そうだ。それがいい。






 そんなこんなで材料の混合比率とか変えながら、数種類のトレント葉入りの肥料を作ってみた。

 発酵が終わったらしく、匂いがちょっと埃っぽい感じに変わってきたね。土魔法の練習ついでに、いくつかの痩せ畑に混ぜ込んで、ふんわり耕してみる。

 ん~、これで何だっけ、ひと月くらい二次発酵させてから種蒔くんだっけ。上手くいくといいけどなあ。


 上手くいったら、それで商売、っていうよりも、全国的に普及させたいな。一次産業が安定しないと、贅沢品が売れないじゃない。

 今はまだ、鉛筆とフィールペン(金属ペン先のつけペン・母様命名)もウィング紙(トレントで作った紙・父様命名)も贅沢品だからね。




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