表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/67

トレント祭り

◆ sideフィーリア ◆




 ワッカ、いつも一緒にいてくれるのかと思ったら、


『えー、それは嫌。ベッタリするの好きじゃないしー。たまに遊ぶからいいんじゃない。なんかあったら呼んでよ。』


と、浮気がちな恋人みたいなことを言われて、帰って行った。

 あんまり人と関わりたくないのかな?もしかしたら、魔力の相性良くない人が近くにいたりすると、不愉快なのかも。まあこれが精霊の基本スタンスなら、受け入れるしかないけど。

 とりあえず、ワッカのことは他の人には秘密にしておこうか。シャハザール様あたりが知ったら、狂喜乱舞しそうだけどね。あの人あんな()()だけど、聖職者だし研究者としては真面目みたいだからなあ。






 庭にドン!とトレントが放置されている。私の獲物なので、私に権利がある!ということで、トビー兄とフランセルに頑張って運び込んでもらったのだ。

 顔?部分の奥にある魔石は既に取り出されていて、横倒しに転がされている。その樹皮を一部剥がしたジョナ兄が、呟いた。


「これ、使えるかもしれない。」


 動き回るからなのか、根(足?)は割と短く、顔の両脇には太くて長い枝が両腕のように伸びている。

 樹皮が燃えやすく、その下の幹は柔らかいため、トレントは建材にも向かないのだそうだ。魔石を取ったら、たいてい燃やして処分してしまうらしい。


「かんていしてみても、いい?」

「うん、なるべく細かく調べてみて。」


 採取した原材料の鑑定をあれこれしているうちにレベルが上がったらしく、部分的に詳しい分析もできるようになってきた。

 ホラやっぱり訓練って大切なのよ。




 樹皮…うん、言われてるように、油分が多いね。一度燃えたらなかなか消えないかも。誰だ、「弱点は火だ」なんて言ったやつ。森が大惨事になるとこだったわ。いやまあ、燃えやすいんなら、確かに弱点ではあるけども。

 足というか根というか…も似たような感じ。油分が多い。ひょっとしたらコレ、薪より効率よく燃やせるんじゃね?


 樹皮の下の幹は、真っ白でぶよぶよしてる。雨の中放置された新聞紙ってこんな感じよね。って、新聞紙?え?じゃあコレもしかしたら製紙に使えるんじゃないの?いやただの連想だけどさ。でもこんなに白かったら漂白の必要もないだろうし、コレ絶対試したいわ!


 続いては上部の枝(腕?)。樹皮薄めだけど、基本的には幹部分とあまり変わらないねえ。そう言えば鉛筆作るのに色んな炭試したけど、トレント炭ってなかったなあ。ちょっとこれで炭作って試してみようか。


 葉っぱは……ぉう!久々に成分表が出てきたぜ。って、なんで鑑定で成分表?……いや違う。これ()()か!

 リン酸、カリウム、窒素、カルシウム、マグネシウム……これって、いわゆる『肥料の五要素』ってやつじゃないの?え、じゃあ、この葉っぱ肥料に使えるってことじゃん!新商品候補ゲットか?

 元素記号で出てこないあたり、自分の知識の片寄りが現れてるね。窒素すら覚えてないわ。


 あれ?顔の上のほうに付いてる小枝、なんか変だぞ。角みたいに見える枝の中ほどに、ぷくっと小さな瘤がある。その中に……小さいけど魔石じゃないの?コレ。何かが寄生してるってわけでもなさそうだ。


「うえのほうの、にほん、つのみたいなえだに、ちっちゃいませきがはいってるよ。」

「えっ?どこどこ?この瘤の付いてる枝?この瘤の中に魔石があるの?なんで?」


 いや知らんがな。……でもそう言えば、トレントがどうやって増えるかなんて確認した人いないんだよね。トレントの種なんて見たことも聞いたこともないし。

 ここに小さい魔石が入ってるってことは、これもしかして、この瘤付き枝を挿し木にしたら、トレントの幼木とか苗木になるんじゃないの?あれ?もしそうなら、トレントって養殖できるってこと?えー?




 各部位の鑑定結果……葉っぱの組成以外をジョナ兄にも伝え、今後の研究方針を決める。

 ともかく、トレント一本丸々使って、思いついたことを色々片っ端から実験してみるしかあるまい。


 まずは、根・枝・瘤付き枝・葉っぱの各部位を切り分けて、幹の樹皮は剥いでおきましょうね。


 幹の中の白ぶよぶよは、ジョナ兄に渡して紙の試作に使ってもらおう。柔らかいだけに、破砕するのがちょっと厄介かな?

 まあ最初は少量で試してもらって、必要ありそうなら破砕用の魔道具作っちゃえばいいや。それくらいならすぐだし。


 枝を炭にするのに……んー、せっかくだから樹皮と根を燃料にしてみるか。どれくらいの温度や時間で燃焼するのかも知りたいしね。使える物は使わんと。


 葉っぱは、肥料のテストをしたいところだけど、たぶん量が足りないな。だってきっとこのまんまじゃ使えないよね。しばらく置いて発酵とか色々させなきゃだろうし。

 とりあえず、そこらの麻袋にでも詰めておいて、もう少し量が溜まるようなら肥料化の実験始めようか。


 瘤付き枝は……とりあえず魔石入りのまま厳重に保管、かな。

もしもトレントが有用な原材料になるのなら、森に入って狩るだけじゃ足りない。そもそも遭遇率そんなに高くないし。

 となると後々、養殖?植樹?繁殖?なんでもいいけど増やすことが必要になって来るかもしれない。その時初めて、この枝使って増やせるかどうかの実験をすればいいや。コレで増える、って、今んとこ私の推測でしかないしね。


 わー!やることいっぱいだー!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ