金儲けへの道
◆ sideフィーリア ◆
「これ、均一にするの難しくない?思ったより力もいるし。」
「あー、そこだけトビーにいに、おねがいする?」
「いや、アイツは雑だからダメじゃないかなあ。」
「ふは、ひどい。アンディにいさまなら、てつだってくれそうだけど、いそがしそうだしねえ。このこうていだけ、さきにまどうぐつくっておこうか。」
「できるの?」
「うん、どうさじたいは、そんなにふくざつじゃないし。」
前々から熱望していた紙とペンの研究、私はそこにジョナ兄を引っ張り込むことに成功、と言うか、ほぼメインでやってもらっている。
研究室……とは名ばかりの、離れ?物置小屋?そこに小さな竈と流し台を作り、作業台や書棚などを揃えた。
一応研究施設なので、関係者(研究者?)以外立ち入り禁止で鍵が掛けられるようになっている。私とジョナ兄と、万が一用に父様に鍵を預けてある。
紙作り、難しいなあ。
まず、現行の上級紙は、別の領地の特産品であるため、細かい材料や作り方は秘匿されている。では知識チートで、と思ったら、作り方調べたことなかったらしく記憶になくて結局わかんない。しょぼん。
薄らぼんやりした知識で、和紙ってこうだったかなーくらいの手順で……いや、間違ってるかもしれんけど。
とにかく今は試行錯誤の真っ最中。てか、紙できないとペンだけあってもしょうがないしね。
紙の研究はジョナ兄を担当にしてブン投げ、私はまずは目先の金儲け、つまり金属のペン先担当だ。
弾性のある金属が良いんだけど、そんなのゼロから作る気ゼロなので、魔力鑑定の後にデールラントの中央街で鍛冶屋に寄って、入手しやすい金属板を数種類、お祖父様に買ってもらった。
だって、欲しい物何でも買ってくれるって言うんだもん。メモに使う下級紙と、インクと羽ペンも買ってもらったけど、なんかお祖父様もお祖母様もちょっとガッカリしてた。
ごめんね、お人形とかドレスとかアクセサリーのおねだりじゃなくって。
ペン先は、形さえ決まってしまえば、あとは金属の向き不向きを調べるだけだから、商品化早いと思うんだよね。
土魔法の応用で、金属板に魔力通して薄くして、そのまま魔法で形を整える。ここが難しい!んで、同じ物を全種類の金属で作って、使い心地と耐久性を確認したら、原形のできあがり。
父様の領地……じゃないや、管理地の村にある鍛冶屋に製作を委託しちゃうのだ。まあ、父様に相談してからだけどね。
あ、ペン軸も必要だな。木工職人て村にいたっけか。
「とーさまっ!ペンのつかいごこちは、いかが?」
執務室に顔を出すなり聞いてみる。あら?母様もいらしてたのね。お仕事お疲れ様です。
実は、原形になるペン先を父様に預けて、モニターをしてもらってるのだ。ペン軸はダルトンにお願いしてそこらの木を削り出して作ってもらった。ペン先と同数作ってもらって嵌め込んで、番号を振れば試作品完成。
「お、おう。これは使いやすいな。羽ペンより長く書けるし、書き心地もいい。」
「なんばんのペンさきが一ばんよかった?あ、ペンじくはべつだよ。ペンさきつけかえれば、どれでもつかえるし。」
「二番が良かったかな。四番も悪くはないが、ちょっと硬い感じがする。一番は、すぐぱーっと先っちょが開きっ放しになったぞ。」
ふむふむ、耐久テストと合致してるね。コスト的には四番がいいけど、二番を高級ラインナップで出す手もあるな。忘れないようにメモメモ。
「……ねえ、フィー、あなたそれ何で書き取ってるの?」
「えんぴつ。」
そう!ペン先より先に、炭を元に簡易的な鉛筆を作って、研究メモを取るのに使ってるのだ!ちょっと折れやすいけど、インクに浸ける面倒もなく、手軽に使えてジョナ兄も大喜び。
「フィー、このペンとえん…ぴつ?どうするつもりなの?」
あっ、やべ。なんか母様が怖い顔してる。
「んと、うちでつくって、うりだせないかなー、って。」
「!!あなたっっ!!商機よっっ!!」
母様が父様に飛びついた。母様かーさま、父様の襟元そんなに締めちゃ死んじゃうよ。え?なに?母様てそんなに商売っ気ある人だったの?
「ペン先はもちろん、柄のほうも素材や色、彫りなんかで差別化できるわっ!この『えんぴつ』も、もうちょっと改良すれば、充分商品になるわっ!フィーっ!詳細を説明なさいっ!ダーウィング家の名前で売り出すわよっ!」
いや、母様が音頭取って商品化してくれるのは、願ったり叶ったりと言うか、有難いんだけども……。
……ねえ母様、もしかしてうちって、私が思ってる以上に貧乏だったりするの……?




