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賢者爆誕?

◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇




 トビアスは、恐る恐る水晶玉に触れた。魔法が苦手で、魔力操作も下手くそなトビアスだが、なんとか水晶玉に魔力を流す。すると、水晶玉が淡く光った。


「はーい、いいよ。属性の適性は土、魔力量は二かな。魔力量は一から五まであってね、三が平均。二は、やや少なめ、って感じだよ。」

「元々トビアスは体を動かすほうが得意だものね。父様も魔力量は二なのよ。」


 クレアが、「少なめ」と言われて少々落ち込むトビアスを慰めるように声をかけた。父と同じ、と聞いて、顔を上げてイヴァンを見るトビアス。イヴァンは「お揃いだな」と言って歯を見せてニッと笑う。トビアスも笑顔になった。


「じゃ次は、何くん?ジョナスくん?同じようにやってみて。」


 ジョナスが水晶玉に触れ、魔力を流す。トビアスのときよりも、少しだけ光が強い。


「はい、いいよ。君は、適性は水、魔力量は三だね。」

「僕は水魔法以外は使えないんですか?」

「んー、そんなことはないけど、生活魔法レベルかな?

 適性の判断は、精霊の()()で決まると言われてるんだ。他の属性を練習しても、好みじゃないから精霊の力が借りられず、あまり上達しない、という話だ。まあ、教会で言われてるだけだから、誰も確認はできてないけどね。」


 シャハザールは、ジョナスの頭をぽんぽんと叩くように撫でると、そのままクレアのほうへ押しやった。ジョナスは釈然としない顔をしている。


「さーて……いよいよお嬢ちゃんの番だ。お名前は?」

「……フィーリア……」

「じゃあフィーリアちゃん、お兄ちゃんと同じようにこの玉に手を乗せて、ほんのすこーしだけ魔力を流して。出来るかな?」


 フィーリアは、言われた通りに左手を乗せ、少しだけ魔力を流した。その瞬間





 部屋の中に充満する強烈な光。



 やがて パァン と乾いた音が響き、光が収まっていく。





「え……えええええええええ!!!」


 唖然として教卓の上を見つめるシャハザール。水晶玉があったはずのそこには、何もなかった。いや正しくは、元は水晶玉であっただろう細かく砕けた破片が散っていた。


「え、いや、なんなのコレ。水晶割れちゃったんだけど。なんでこんなああいやそうじゃない、フィーリアちゃん、怪我はない?」


 慌てたシャハザールが、フィーリアの手を調べる。掌は傷ひとつなく、奇麗なままだ。

 シャハザールは天を仰ぎ、ふ~~~~っと大きく息をつくと、まだ呆然とする全員へ向き直った。


「とりあえず、落ち着いて話そうか。」




 砕けた水晶は、ざっとひとところへ寄せておく。二つのソファーは、それぞれモンデール夫妻と子供三人でいっぱいなので、足りないぶんは部屋の隅にあった木のスツールを引っ張り出してきた。

 全員が腰を落ち着けたところで、シャハザールが話し始める。


「ええと、まずフィーリアちゃんの魔力量だけど、正直、前例がないのでわからない。ただ、伝承として、大昔に時の大賢者様が水晶を真っ二つに割った話は残ってる。そこから考えると、計測不能なほどのクッソ高い魔力量じゃないか、と思う。

 で、適性なんだけど……こっちもハッキリとしたことはわからない。光り始めの一瞬だけ見えた気がするけど、すぐに目を瞑っちゃったからね。ちゃんと確認できてない。」


 誰ともなく、全員が顔を見合わせる。何を言うべきか、聞くべきか、混乱する中で、フィーリアが口を開いた。


「ぞくせいは、すいしょうだまのいろではんだんするの?」

「え?あ?うん。一応、属性の判べ…決まりとする色があって、属性が同時に三種…三つ現れる場合まで、色の確認はできているんだ。」

「三しゅるいって、はんするぞくせいはどうじにつかえない、っていうほうそくから?かくぞくせいの、()()()()()ででるの?それとも()()()()()が三つでるの?」


(え?この子、意味わかって言ってるのか?)

「あ、ああ、そうだね、その…………」


 シャハザールが言葉に詰まる。クレアが諦めたようにため息をついた。


「シャハザール様、この子には普通に話してもらって大丈夫ですよ。私たちの言ってることは、だいたい理解していますわ。」


 シャハザールだけではなく、モンデール夫妻も驚いたようにぽっかりと口を開いた。


「……っっ、えと、それじゃ説明するね。

 水晶に現れる色は、適性が一種類のときは単色、二種類以上の適性が現れる時は混色だ。単色六種類、混色三十五種類の色見本があって、それで判断をするんだ。」

「わたしは、なにいろだったの?」

「……一瞬だったし、見間違いかもしれない。そもそもそんな色は確認されてないし……」

「なにいろ?」



「…………無色透明に見えた。色見本には無い…………」



 フィーリアはちょっと考え、以前両親とダルトンの前でやって見せたように、全属性の玉を同時に出した。風だけは目に見えないので、自分の前髪を巻き上げることにしたが。


 シャハザールが目を剥いて立ち上がる。


「あの二十年前の仮説は合ってたんだ!もし全属性持ちが存在したら、混色ではなく限りなく透明になるはずだと!」




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