魔力鑑定
◆ sideフィーリア ◆
……うぅ……馬車キツい……尻が痛い……。サスペンション改良しようっていう気概のある職人はおらんのか……。
魔力鑑定に向かう馬車には、両親と双子たちと私とでぎゅうぎゅう詰めだ。この状態でデールラントまでってのは、かなり辛いのう。でもあと少しだ。頑張れ私の尻。
「今日は、モンデールのお祖父様とお祖母様もいらっしゃるわ。前モンデール伯爵夫妻で、母様の両親なのよ。みんなお行儀良くね。」
母様、目が怖いです。てかトビー兄を凝視しすぎ。言いたいことはわかるけど。
苦行の末、ようやく教会に到着。創世神を祀り精霊に感謝を捧げるための場所だ。ここで魔力鑑定が行われる。かなり荘厳な造りの教会……なんだ、窓ガラスあるんじゃん。あー、アレか、板ガラスは高価で田舎までは普及してないってことか。
通常、神官が二人以上立ち会って鑑定をするんだけど、神官長・副神官長だと一人でもオッケー。今回はモンデールのお祖父様のコネで、副神官長様お一人に鑑定してもらうのだ。
教会に入ってすぐのロビーのようなところで、お祖父様とお祖母様が待っていた。
「おおお!フィーリア!大きくなったなあ!双子も元気そうだ!顔がしっかりしてきたな!」
「まあ、ホント、大きくなったわ!赤ちゃんの時以来ですものね。」
あれ?モンデール前伯爵って、母様の親よね?なんで父様チックな熊タイプなの?もしかして母様ファザコン?だから熊の父様と結婚したの?父様が赤熊ならお祖父様は金熊だね。
お祖母様は、うん、上品な美人さん。ふふっ、母様そっくり。いや母様がお祖母様にそっくりなのか。目の色だけはお祖父様譲りなのね。
まずはご挨拶……って、トビー兄、緊張しすぎ。
「すぐに神官様がいらっしゃるわ。お行儀良くね。」
またもやトビー兄を見る母様。母様、トビー兄にプレッシャーかけすぎです。そろそろ石になりそうです。あ、神官様が来た。
「あー……モンデール伯爵、先日はどうも。奥様もお久し振りです。」
「もう伯爵ではないと言っとるだろうが。パーシーで良い。パーシーで。」
この人が神官様?銀髪ロン毛美中年だけど、神官服の雰囲気も相まって、なんか『昔売れてたビジュアル系』って感じだなあ。ちょっとショボくれた印象がするのも、よりそれっぽい。
お祖父様よりちょっと年下くらいかな。お祖父様と仲良さそうだし、どういう関係かちょっと気になる。
「やあ、クレアお嬢様、お久し振りです。そちらが御夫君のダーウィング男爵ですね。初めまして。当教会で副神官長を務めておりますシャハザールと申します。」
「ご無沙汰しております、シャハザール様。十一……十二年振りかしら。お変わりなく。」
「初めまして。イヴァン・ダーウィングと申します。本日はよろしくお願いいたします。」
「魔力鑑定を希望されてるのは、こちらのお子様たちですか?そちらのお嬢様は、かなりお小さいように見受けられますが。」
「双子はトビアスとジョナス、八歳です。そしてこの子が末娘のフィーリアですわ。三歳になったばかりですの。」
「フィーリアは、ちょっと前に魔力暴走を起こしまして、今は落ち着いてますが、早めに鑑定を受けさせたいと思っております。義父が副神官長様と懇意にさせていただいてると聞き及びまして、今回の鑑定をお願いした次第です。」
「なるほど、わかりました。ではこちらへどうぞ。」
教会なのにお祈りもしないで、いきなりかい!
副神官長の案内で、ゾロゾロと奥の小部屋へ向かう。今回の鑑定は、外部に結果が漏れないようにするため、家族以外シャットアウトして個室で行うんだってさ。
お祖父様とお祖母様は今回の手配をしてくれたし、それを了承してくれたのがこの副神官長様だし、このメンツなら色々バレても問題な……あれ?私トビー兄に話したっけ?あれ?
小部屋の中には、硬そうなソファーが二つと、向き合う形で小さな教卓のような台があった。教卓の上には、水晶玉……水晶玉だよな、アレ。アレで鑑定するのかな?
「はー……もう人目もないしいいだろ。ねえクレアちゃん、ホントにこんなチビっ子がそうなの?」
うぉ!いきなり砕けおった。このイケオジこっちが素だな?母様とも仲良さそうだな。マジで関係性が気になる。ていうか、そうってナニよ!そうって!
「ええ。たぶん『賢者級』だと思います。王宮に見つかったら、まず間違いなく拉致されるでしょうね。だからシャハザール様にお願いしたのですよ。」
母様、怖いこと言ってるんですけどー!てか聞きなれない言葉が出てきたんですけどー!『賢者級』てナニよ!
「んーそういうことなら、まずは坊ちゃんたちから調べよっか。あ、ダンナさん、念のため窓の鎧戸閉めといて。」
この神官、強者だ。父様が顎で使われとる……。
「じゃ、坊ちゃん、何くん?トビアスくん?ここ来てこの水晶に左手で触って、ちょこーっとだけ魔力流して。それで繋がるから。」




