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乙ゲー回避?

◆ sideフィーリア ◆




 日々の勉強を通して、ジョナ兄とはかなり距離が近くなった。そりゃそうだよね、ジョナ兄を削る勢いで色々教えてもらってるんだもん。

 ちょっと皮肉な物言いは多いけど、こちらが真剣なのが伝わるのか、馬鹿にしたりせずに丁寧に教えてくれる。一度、改めてお礼を言ったら、「トビアスに教えるよりも遥かに理解力があるから、楽だし楽しいよ」ときたもんだ。トビー兄……。


 時々、肉体年齢に引っ張られるのか何なのか、無性に誰かに甘えたくなったり、逆に思う通りにできなくて癇癪を起こして泣き喚きたくなることがある。感情が先立って、思考が上手く働かないのだ。

 そういうときは、ちょっと恥ずかしいけど、素直に母様の元へ一直線に向かうことにしてる。抱っこしてもらって、母様の匂いをすんすん嗅ぎながら甘やかしてもらうのだ。たまにアリシア姉様のときもある。

 何かね、そういう感情に逆らってはいけない気がするんだ。()()()()()()()()()()()がそこにあるような気がするの。まあ見た目二歳なので、みんな普通に甘えさせてくれるから助かってるのだが。


 アンディ兄様とのいちゃらぶお膝読書も、あと数か月。アンディ兄様が十歳になったら、家庭教師が付いての勉強と、本格的な剣の稽古が始まるそうだ。そうなれば、たぶん今までのようには時間取れないよね。

 ……時々は甘えに行ってやろーっと。アンディ兄様には、いつまでもシスコンでいてもらわなきゃ。




 うち、男爵家だったわ。びっくり。イヴァン・ダーウィング男爵家。父様そんな名前だったのね。

 でも領地とかは持ってなくて、モンユグレ公爵領に属している、我が家のあるロクス村と近隣のポサ村・ヨデル村の三つの村を、代官として治めてるらしい。村の経営とか、隣接した森で魔物を退治する狩人をまとめたりしているんだと。つまりは雇われ店長みたいなもんか。

 んで、オーナーもとい領主様である公爵家が、我がダーウィング家の寄り親なんだってさ。まあ後見とか派閥とかそんな感じなのかねえ。


 実は、我が男爵家や寄り親の公爵家が仕えるサウデリア王国には、()()()()()()()()()()()()()

 平民は簡易な手習い所みたいなところもあるみたいだけど、大きめの街にしかないそうなので、田舎の子供たちは、近所のジジババに最低限の読み書き計算を教わるのが普通らしい。

 貴族はだいたい十歳前後から家庭教師を付け、三年から五年をかけて『学問基礎宝典』という本を元に、基礎的な勉強を終える。その後は進路によってかなり違うけど、騎士だったり文官だったりの勉強とか修行とかを更にするそうな。

 んで、十七歳で成人。結婚とかもできるんだって。


 乙女ゲームなら、男爵令嬢ってヒロインポジションかあ?と思ったけど、学校が存在しない時点で乙ゲーの確立はグンと下がったんじゃないかな。

 一応王都で、王族だの貴族だのの社交はあるらしいけど、父様や母様だってそんなんほぼ行かないものね。乙ゲー世界だとしても私ゃモブだモブ。


 いや、しかし、油断は大敵だ。もしかしたらここ数年のうちに貴族学校とかが設立される可能性だってあるもんね。

 最悪の事態を回避するための努力は惜しまないでおこう。体力作りに魔法の練習、そして金儲け……金儲けねえ。

 もし乙ゲーがベースだとしたら、「真実の愛」とか言っちゃう浮気二股お花畑王子が次期国王として治める国になるかもだよなあ。トップがそんな国って、どう考えても荒れるよね。そうなったら金儲けも苦労しそうだなあ……




 今現在、わかる範囲で金になりそうなのは、紙とペンくらいかな。


 紙は、あるけどお高い。お城で使う書類や高位貴族様の手紙は上級紙と呼ばれ、栽培の難しい植物を原料としてるらしい。それ以外はぼろ布やそこらの樹皮なんかから作った、ちょっと汚くて破れやすくて書きにくい下級紙を使う。

 うちで父様の書斎に積まれているのも、ほとんどがその下級紙だ。たま~に薄い木の板や竹簡らしき物も混じってる。アレ書類だったんか……。

 だから本も高い。お高い紙に手書きで写本。そりゃ高くもなるよね。そう考えると、うちに図書室があるのはすごいな。ジジババあたりがよっぽど甘いんかな?私が生まれたときに会ったきりだそうだから、全然記憶にないけど、感謝。


 ペンは、なんと羽ペンだ。羽の飾りが付いてるんじゃないのよ。ぶっとい羽の根元を削りだしてインクを付けて書くシロモノ。

 いやあ!つけペンならせめて金属のペン先作ろうよお!そしたら万年筆まであと一歩じゃん!


 とりあえずは、紙を安価に一定品質で作り出す研究と、金属製のペン先の提案。あとは、ん~、鉛筆なんかも手軽でいいんじゃないかなあ。


 我が家は、男爵家と言えどそこそこ貧乏……までは行かなくても、決して金持ちではない、と思う。てことは、まずはお家を富ませるのが先決よね。まだまだ個人の財産なんぞ持てないおこちゃまですもの。そうすると、紙と筆記具は男爵家の事業にしないとな。

 さてさて、どうやってプレゼンしたものだか……




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