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ちゃんと作戦会議

◆ sideフィーリア ◆




 陛下と宰相様からの謝罪があり、ひとまず事態は収束した。宰相様がお茶を淹れ直してくれる。てか、気まずい。

 こんな時にはオヤツだー!


 報告書入れるのに持ってきてたカバンから取り出す振りをして、空間収納からオヤツを出す。バスケットごと入れておいて良かった。


「あの、よろしければ召し上がってください。これはユグレリアの――」

『あーーー!モンナパンナのマカロンだーーー!これカワイイし美味しいよねー!』


 ワッカ、きみはオヤツに詳しすぎる。


「モンナパンナ?有名なのか?どれ、一ついただこうか。」

「へっ陛下!毒見を――」

「いや、毒なぞ盛らなくてもフィーリア嬢がその気なら、余など簡単に()れるであろう?」


 いや、言い方よ。殺れるけどさあ。殺らないよ?


「ほう、甘さは控えめなのだな。これは美味い。」

『でしょでしょー?この軽さがいいのよねー。』


 軽いのはきみだと私は思うぞ。だがしかし、ワッカのこのお喋り好きは助かるなあ。さっきまでの空気の重さが吹き飛んだ。


「ところでフィーリア、バージェガンドに対しては、さっき話した俺とブランドンが出張(でば)るのでいいのか?」

「ん、たぶんそれで大丈夫。冷戦状態に持ち込めれば、あとは……もう()は撒いてるんだよねー。」

「どういうことですか?確か別の策……というようなことをおっしゃっていましたが。」


 いや何で宰相様敬語やねん。まあ無理もないか。創世神と精霊を信仰するこの国で、精霊獣にブチ切れられたんだもんな。


「向こうの皇宮の状況次第でちょっと動きは変わるけど、革命起こして政権交代してもらおうかと思って。」

「「「は?」」」


 まあ、そういう反応だよね。






 バージェガンド帝国の派閥は、大きく二つに割れている。

 一つは主流派である皇帝派。どうもこいつらが開戦に意欲的らしい。皇帝と皇太子と皇太后。そこにわらわらと他の貴族がくっついている。

 もう一つが皇弟である公爵派。皇弟とは言ってもいわゆる妾腹で、こちらは穏健派……と言っていいのかどうかはわからないけど、内政に力を入れるべし、てな派閥なのは間違いない。

 つまり、この二つの派閥が入れ替わってしまえば、開戦は避けられるのだ。


 とは言え、公爵派の勢力はさほど強くない。金と力のある貴族が、こぞって皇帝派に付いてるからね。じゃあどうするか。


 民衆を味方につければいい。


 幸いなことに、内政に注力してるだけあって、民衆の間で公爵の人気は高い。また、地方の貴族には過去に戦争を経験した世代も多くいて、厭戦思想が強め。まあ、今回徴兵や食料供出がかなり強引に行われたようで、それも皇帝派への反発に拍車をかけてるんだけどね。

 地方は戦力があまりないけど、徴兵の様子を聞く限り、潜在的な戦力は帝都にかなりの数がいる。たぶん、地方から徴兵された兵はほとんど皇帝から公爵へ寝返るんじゃないかな。


 公爵を旗頭に、各地方から一斉に反乱を起こす。皇帝派は分散して派兵するか帝都を固めるかしかない。派兵するのに中央の兵はあまり使わないだろうから、外に出すのは地方から徴兵された兵たちになる。

 無理矢理徴兵された平民たちが、自国民に剣を向けるか?答えは否。だからバスティーユは落ちた。んだと思う知らんけど。

 地方から中央へ、革命の波は押し寄せる。兵は離反し、貴族は保身に走る。


 まあ、正直その革命が上手くいくかどうかはわからない。上手く行けば、バージェガンドは政権交代し、開戦がなくなる。

 失敗したら……どのみち国は疲弊するので、開戦どころではなくなる。






 そこまで説明して、ちょっと自己嫌悪。だって他国の内戦を誘導するんだもん。卑怯と言うか卑劣と言うか……


「どうやって誘導するのだ?」

「バージェガンド国内には既に人を送り込んであります。非戦闘員なので、やるのは主に噂を流すこと。中央への反抗を煽って、皇帝の悪評と公爵の清廉さを流布します。真実か否かはこの際関係なく、民意を高揚させることだけ狙います。地方へ行けば行くほど相当搾取されてますから、ちょっと突くだけで一気に不満が広がりますよ。たぶん。」


 長い沈黙。みんな眉間に深い皺が寄っている。


「搦め手……ですね。失敗しても成功しても、我が国には損失は出ない。有効だと思います。」

「俺はあんまり好かんが、我が国に犠牲が出ないならいい手かもしれん。」

「政権が交代すれば、バージェガンドの民にとっても良いのではないか?圧政が終わる。」


 好感触……ではあるのかな?


「ブラン爺はどう思う?」

「……制御はできるのか?」

「ん~、一度動き出したら無理だね。バージェガンドの民衆次第だもん。」

「で、あれば賛成だ。バージェガンドの国の在り方はバージェガンドの民が決めると良い。我々は火種を放り込むだけだ。」


 ああ、なるほど。ブラン爺はそういう考え方をするのか。


 策は採用された。




「ところでフィーリア嬢、なぜバージェガンドの動きに気付いたのだ?かの国とは取り引きはしてはおらんのだろう?」

「ああ、うちの商会員から、向こうの酒が入って来ない、って噂を聞いたんです。」

「?」

「え、とですね、酒蔵が潰れて流通量が減って、国内でも高値になってるっていう噂で……」

「??」

「でもここ二年、飢饉なんかはなくて天候も安定してて……」

「???」


 上手く説明できない。「勘」で押し通してきちゃったからな。


「フィーリア、済まんが儂にもさっぱりわからん。端折らんで詳しく説明できるか?」


 ううう~、諸葛亮孔明の酒と塩のエピ思い出しただけなんだよ~。


「えっと、戦争を始めようと思ったら、まずは兵糧の確保が必要ですよね?で、穀物を集めると、酒造りに回す分がなくなる。酒が高値なのに酒蔵が潰れるのは、例年通り収穫されているはずの原料が入って来ないからです。

 あとは人と馬の動きですが、地方へ行けば不満が多かったのか徴兵の話はすぐ出てきました。馬のほうは、ちょっと危険なのであまり掘り下げられなかったんですが、飼い葉の動きで中央に集められてることがわかりました。

 ついでに農具の質が大幅に落ちてます。まあ農具もぶっちゃけ刃物なんで、良質の鉄が中央に集められるとそうなりますよね。

 あとは……ここ数か月、流民と密入国の数が激減してます。これは、あちら側で国境の引き締めが強くなったってことで…………えと、あの、なに……?」


 気が付いたら、全員に凝視されてた。穴あきそう。


「……フィーリア、鉄はまだしも「酒が入って来ない」というそれだけで、ここまで考えたのか?」

「え、だって、変化には理由があるわけで、これが「バージェガンドで酒風呂が大流行!」とか言うんなら、こんなこと考えないし調べないよ。」

「酒風呂……」


 何なに、なんなのよー!なんでみんなして残念な子を見る目付きになってんのよー!解せぬー!




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