彼らの想い
◆ sideフィーリア ◆
《みんなぁ、ちょっとこっち来て欲しいんだけど、その前にお願い。こっちにサウデリア王と宰相がいるんだけど、その二人には転移魔法と収納魔法のこと内緒にしてね。あ、魔法陣のことも。》
『『『『了解』』』』
室内に、一気に四体の精霊獣が現れた。狭い。ってか、ワッカさんや、そこテーブルの上なんだけど。
陛下も宰相様もひたすら驚愕してる様子。あんぐりと口を開け、目を見開いてる。
おっと、そうだ。【精霊との会話の魔法陣】渡さなきゃ。ペンダント型のやつでいいかな。ガラリア様は持ってるし、ブラン爺は普通に話せるし。
「陛下、宰相様、これを持っていてください。精霊と会話ができるようになります。精霊獣から借り受けてる特別な物なんで、大事にしてくださいね。解析しようとすると壊れますから。」
ん、これで迂闊なことはできないだろう。魔法陣さえバレなきゃ、多少の嘘は方便、ってことで。
『……で、アタシたち、なんで呼ばれたわけー?王とか全く興味ないんだけどー。』
「まあまあ、そう言わず……。ほらほらヴェント、サウデリア建国王の末裔だよ。」
『興味はない。奴はとうの昔に死んだ。今はそなたがわしの主だ。』
「えー……と、みんな、なんか機嫌悪い?」
『そうではないが、我は今、バージェガンドに派遣した精霊と繋がっておる。気は散らしたくない。』
「あー、ごめんごめん。……珍しくアイナまで機嫌悪そうだけど……」
『そうですね。我が主を手中にして意のままに使おうなど、国ごと滅ぼしても構わないくらいには腹が立っています。』
いっ!?もしかしてみんな見てたの?
『そなたの緊張が我らにも伝わっていたのでな、皆でこっそり覗いていた。で、こ奴らをどうすればいいのだ?ドラゴンどもの餌にでもするか?』
「や、ちょっと待って」
『国を見捨てて出るというのであれば、もちろんお供しますよ。』
「や、そうじゃなくて」
『何だったら、バージェガンドなんかじゃなくて、この国乗っ取っちゃえばいいのよー。手伝うよー。』
「バっ、そんなこと」
『我は先に戻ってもいいか?用がないなら集中させてもらいたい。』
いやアンタら自由過ぎるだろー!
「み……みんな帰りたい……?」
『我は帰りたい。』
『わしは……ほれ、例の子ドラゴンが風魔法を使い始めたところでな。下手くそ過ぎて指導を頼まれた。忙しい。』
なんじゃ、そりゃ。
『アタシは別にいてもいいけどぉ。』
『私も構いませんよ。むしろフィーリアを守るために同席したいですね。』
いやちょっと、アイナのブチ切れなんて初めて見たんですけどぉ。よっぽどさっきの宰相様の言葉が気に食わなかったらしいな。
「あ、えと、みんなごめんね、ありがとう。クダンとヴェントは戻って。ワッカとアイナはここにいてもらってもいい?」
クダンとヴェントの姿が無言でかき消えた。忙しいのに、私のピンチだと思って来てくれたんだなあ。ありがたや。
「アイナどの、セルゲイ宰相も悪意があって言ったわけじゃない。国を想えばこその発言だ。許してやってはくれんか?」
『ブランドンの言ってることも理解できます。が、フィーリアが一番望まない形を押し付けようなど、言語道断です。』
『あのね、ブランドンちゃん。アタシたち、主に理不尽を押し付けられるのが一番嫌いなの。フィーリアちゃんの心が傷つけられるのが一番嫌。』
や、ちょ、待って。そこまで大事に想ってくれるのは嬉しいんだけども。
『権力を持つ人間の横暴を、私たちは多く見てきました。国のため、と言えば、どんな横暴も理不尽もなぜ許されると思うのでしょう。』
「待って待って、宰相様、そんなに酷いことは言ってないよ。それにちゃんと自分で断れるし。」
『家族や友人を人質に取られても、ですか?』
「……え……?」
「ま、待て待て、私はそんなことする気はありません!あくまでフィーリア嬢の意思を尊重して――」
『多く見てきたと言ったでしょう!』
……アイナが、怒ってる……。過去に……何かあったんだろうか?
『フィーリアには、守りたいものが多すぎるのです。それを逆手に取られれば、自らを犠牲にして理不尽が通ってしまうかもしれない。私たちはフィーリアにそうさせたくないのです。』
わー……誰も何も言えねえ……。もしかして、今、怒れる精霊獣に何か言えるのは私だけなのか?
「えー……と、アイナ?私は大丈夫だよ。確かに守りたいもの多いけど、みんなも私を守ってくれるもの。それに……卑怯な手を使われたって、私にはあなたたちがいるじゃない。卑怯なことされたら、そんな奴ら瞬殺して、人質救い出すことだってできるよ。だから大丈夫。」
『……そうねえ。アタシたち四人もいるんだものねえ。精霊獣四人相手にするなんて、自殺志願者みたいなものよね。
ねえアイナ、フィーリアちゃんはあの子とは違うわ。自分でも戦えるし、それがどういう事かもわかってる。だから……先走って過保護にするのはやめましょ。』
ああ……何となくわかってしまった。きっとアイナは、過去に権力によって理不尽な目にあった主を守れなかったんだ。たぶんまだ子供の。
『重ねているつもりは……いえ、そうですね。フィーリアはフィーリアです。すみません、その……』
「いいよぅ。心配してくれたんだもんね。ありがと。」
アイナにぎゅっと抱き着く。ふわふわ。
そのうち落ち着いたら、一人ずつとゆっくり話をしよう。何百年も何千年も生きて、人を見続けてきたんだもん。色々あるよね。んで、いーっぱい話していーっぱい楽しいことしよう。
「さて!紹介もしてなかったね。覗き見してたってことは、みんな陛下と宰相様はわかるよね。えーと、こちらが精霊獣のアイナとワッカです。で、帰っちゃったのが、クダンとヴェント。で、えー…………」
いかん、何喋っていいのかわかんない!こーゆー時こそブラン爺だ!ブラン爺!なに「え?儂?」みたいな顔してんのよ!
「んホンっ、えー、これでフィーリアの力はわかってもらえたかと……陛下っ!」
ちょ…っと!何してんのよ!なんで陛下と宰相様が跪いてんのよ!やめてよ!やめ
「精霊獣どのと、その主フィーリア嬢にお詫び申し上げる。こちらの考えが足りず、押し付けるような真似をして済まなかった。」
「先ほどの発言、誠に申し訳ありませんでした。自分の価値観こそが正しいのだと……凝り固まってしまいました。今後は、フィーリア嬢の意に反することは強制しないとお約束します。」
なんか……結果的に、私、陛下を脅してない?いや、そういうプランも無くはなかったけど、これは何かちがーーーう!




