王城の一室 3
◆ sideフィーリア ◆
陛下と宰相様は、言葉が出ずに口をパクパクさせている。
「陛下の第二妃のご実家御用達の商会から、散々嫌がらせを受けているシューベリー商会の商会長リナリア・シューベリーことフィーリア・ダーウィングです。」
陛下の顔が赤くなった。宰相様は対照的に真っ青に。
「いち早くバージェガンドの企みに気付いて進言したにも拘らず、半ば強制的に城に連れて来られて最高権力者二人に詰問されているフィーリア・ダーウィングです。」
二人がプルプルしながら唇を嚙んで俯く。えーと、あとは……
「フィーリア、その辺にしといてやりなさい。」
「はぁい。」
いやあ、煽るって言うより底意地の悪い言い方しちゃったな。反省反省。
二人とも、すっかり黙り込んじゃった。
「陛下、ご覧になってわかるように、フィーリアは聡明且つ自由を愛する少女です。高位の者の下らぬ権謀術数を巡らすのはやめていただきたい。」
ブラン爺が静かに言うと、陛下がふ~~~と大きく息を吐いた。
「……わかった。気を付けよう。」
ん、無事こっちのスタンスが伝わったみたいだね。宰相様はちょっと不満そうかな。
「陛下、このような者を野に放っておくのはどうかと思いますが……。ブランドンの庇護下にあるようですが、城に上がらせ国のために働かせてはいかが――」
「お断りします。」
あ、やべ、食い気味に言っちゃった。
「なっ、断るとはどういう了見だ。」
「どうもこうもないわよ!こうやって自分の口でハッキリ断るために、『不敬御免状』を手に入れたの!私にできることはある程度協力するけど、誰かの傘下に入るなんて真っ平ゴメンだわよ!」
「ぐぬ!だがこうして実際にはブランドンやガラリアの庇護を受けているではないか!王の庇護を断る理由がどこにある!」
「ブラン爺は私のひい祖父ちゃんだし、ガラリア様は大事なお友達よっ!」
ぶふーーーっ!
一瞬の間の後、ブラン爺とガラリア様と、なんと陛下までもが一斉に噴き出した。
「ぶひっははは、確かに俺はフィーリアの友達だ。その縁で後見をしているが、決して上下関係なんかじゃない。いやむしろ、上か下かで言えば、フィーリアのほうが上だがな。」
「ちょっとガラリア様っ!誤解を招く発言しないでよ!私の印象悪いじゃない!」
「いや、何を今更。」
ガラリア様、ずーっとぶひゃひゃと笑っている。くっそ、楽しそうだな、おっさん。
「セルゲイ、フィーリアを取り込みたいのはわかるが、それをやめてくれ、と言っているんだ。儂はフィーリアの後見はしているが、それはフィーリアの自由のためと考えている。あまり詰まらんしがらみを押し付けるようであれば、フィーリアは国を捨てる、と言っている。」
おーい!ブラン爺!そこまでぶっちゃけちゃっていいんかい。あ、ほら、ガラリア様までびっくりしてる。
「フィーリアっ!本気か?国を捨てるだとっ?」
あああほらあ、ガラリア様直情型なんだから、こうなっちゃうんだからぁ。
「お前が国を捨てたら、精霊獣様はど――」ぼぐっ!
……口塞ごうとして、殴っちまったわ……。私のせいじゃないよ。コレ、ブラン爺とガラリア様が悪いんだからねっ!
「……今、聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするのだが……。ガラリア、精霊獣とはどういうことだ?」
「ほらあ!陛下にも聞こえてたじゃないのよ!」
「す、すまん。ついうっかり……」
「うっかりじゃないわよ!セルガに言いつけてまたパックンしてもらうわよっ!」
あーもう、コレどう収拾つければいいのよ……
「……フィーリア、もう陛下にも全て話してはどうだ?」
「……っっ!」
「セルゲイがこんなことを言ったばかりだしな、警戒するのは当然だ。だが、お前が平気で国を捨てられるだけの力がある、と示すのも、さっきのバージェガンドとの話ではないが、有効な圧力なのではないか?」
ぅう~~~くそぅ、一理ある。一理はあるがな!
「……どこまで……?」
「精霊獣様と属性魔法……でどうだ?」
属性魔法……つまり転移魔法や収納魔法のことは話すな、ということか。あーあと魔法陣か。うあー、メンドクセ。
「……えーとですね、実は私、精霊の最上位……いわゆる精霊獣と契約してましてですね……」
シドかジョナ兄がいたら代わりに説明してくれるのになあ。クレイグでもいい。こういう説明、超苦手!
「せい……れい獣が、四体……?」
「ぜ……ん属性……?」
まあそりゃ信じ難いよね。てかなんでガラリア様までそんな顔してんのさ。
「いや、その、俺は全属性のことは初めて聞いた……」
あれ?そうだっけ?えーと、ドラゴンの巣で精霊獣全部見せて…………ホントだ!言ってないわ!転移も、何なら収納も知ってるけど、属性のこと話してない!
「ゴメン、言い忘れてた。」
「忘れ……まあいい。身内扱いと思えば……そうか?」
「いや、ホントごめんて。」
だってぇ、あん時子ドラの一件で、色んな事がグダグダだったじゃない。見逃して、ね、ね。
「……いちゃいちゃしてるところ済まないが……」
「いちゃいちゃなどしておらん!」
いや何でブラン爺が返事すんのよ。しかも陛下に半切れって。
「ジョシュアや護衛についていた分隊長からも、そんな報告は上がっておらんかったぞ。アイツらは知らんのか?」
「ああ、知ってますよ。ただ王子と護衛二人には守秘契約結んでもらったんで、言えなかっただけです。あ、ちなみにその時の護衛の一人とうちの姉がもうすぐ結婚するんですよ~。」
「へ、陛下、そう言えば、捕縛された従者二人がそのようなことを言っていたと……。犯罪者の戯言として報告書には記載されませんでしたが……」
あ、そう言えば、あの馬鹿二人には契約させてなかったっけ。
「ジョシュアが……知ってる……。フィーリア、嬢、その、良ければ精霊獣様に会わせてもらえないだろうか?どうも俄かには信じられないのだ……」
「……まあ……構いませんけど……」
てかなんで私の能力知るたびに、どいつもこいつも「嬢」付けになるんだ?キモチ悪くてしょうがない。




