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12 ちぃちゃんおいで!

前回の「11 のあの秘密」では、不完全な状態で投稿してしまいました。

既に修正しています。御迷惑をおかけしました。

「えっ!?」


 ユイは怪訝な顔で、俺を見る。

 突然の方針転換に、俺が裏切ったと思ったのだろう。


「勇者の仲間になって戦えと言っている訳じゃない。だが、君たちはなるべく勇者のそばにいるべきだ。聖属性の勇者や聖女なら、のあを導くことが出来るかもしれない」

「でも……」

「やはり、嫌なのか?」

「カイルさんも、聖属性……」


 ――俺?


「あー……、そう言えば、そうだったな」


 すっかり忘れていた。


「しかし、俺ではなぁ……」


 自分で言うのもなんだが、そんな器では無い。


「それに、聖女は中央政府の重鎮でもあるんだ。だから聖女に相談すれば、支局長や異能管理局のことも、売られていった異能者たちのことも、何とかなるかもしれないぞ」


 俺に話したくらいだ、聖女にならアニーの秘密を明かしてもかまわないだろう。

 いろいろ考えたが、結局これが最善策なのではないだろうか? 


 そして、しばらく思案に暮れていたユイが口を開く。


「一緒に来て」


 勇者に会う事には納得したのだろうか、ユイは俺に同行を求めた。


「勇者の下にか? もちろんそうしてやりたいが、俺には契約が……『魂の契約』の事も知っているんだったな?」

「うん」

「なんとか出来るのか?」


 ヨーコは「方法はある」と言っていたはずだ。


「みんなと相談していい?」

「ああ、そうしてくれ」


 ユイの視線が宙を漂い、前世たちの話し合いが始まった。



 ――『魂の契約』は、文字通り魂を対価とした契約だ。


 契約の魔道具に取り付けられた魔水晶へ、契約者自身の魔力を流し込むことで、契約は成立し、一方的に契約を破棄したり、魔道具を破壊すればその契約者は魂が枯れ果て命を落とす。


 左腕を負傷し、冒険者への夢を見失った16歳の俺は、借金も抱え途方に暮れていた。

 そんな俺に支局長が提案したのが、30年間の専属契約だった。


 俺が異能管理局に入局する際、まとまった支度金を用意するのに、魂の契約が必要だと言われたのだ。


 今思えば、俺は騙されていたのだろう。

 

 契約期間は、まだ20年以上残っている。だが俺は、これ以上この目を悪事に利用されるつもりは無い……。

 


「――真央さんに代わるね」


 前世たちとの話し合いを終えたユイが、そう言うと目を閉じる――。



 ――神々しい光の輝きは、無色透明に変わり、その周りに虹色に光る球が浮遊している。


「……マオか」


 机をはさみ視線が交差し、小さな部屋に緊張が走る。


 マオは無言のまま、胸の前で右手のひらを上に向けて軽く広げ、


「お願い……」


 すると、その手から一つの虹色の玉がどこかへ飛んで行った。


「信じてもいいのか?」

「今は殺しません。勇者に会うまでとりあえず保留にします」

「そうか……ユカはどうなんだ、納得しているのか?」

「ユカは、ユイに怒られてすっかりしょげていますよ」


 マオはそう言って、楽しそうに小さく笑ってみせた。

 その微笑みに、現世で見つけた彼女のささやかな幸せを見た気がした。


「やはり君たちは、手を汚すべきじゃない。それがノアのためでもあると俺は思う」


 アニーの中で、彼女たちが穏やかに暮らすことが大事だと、俺は考える。

 これは、ノアの情操教育の問題でもあるのだ。 


「考えておきます」


 そう一言だけ言うと、マオは目を閉じる――。



 ――そして、アニーのオーラは淡い緑に変わった。

 これはテイムの属性を持つホタルのオーラだ。


 ホタルは椅子から立ち上がり、窓の前まで行くと、大きく息を吸い込んだ。


「ちぃちゃーん、きーちゃんたちー! おーいでぇぇぇー!!」


 そう叫ぶと、ホタルは席に戻りニコリと笑う。


「何を呼んだんだ?」

「きーちゃんたちに、ちぃちゃんを連れてきてもらうんだよ」 


 ちぃちゃん? きーちゃんは突貫鳥の名だったはずだ。 


「誰にもケガさせないでって、お願いしたから大丈夫だよ。少し時間がかかるから、待ってて」

「待っていればいいのか?」

「うん、そうだよ」


 今は、ホタルを信じよう。


「それじゃ……その間、俺と話をしないか?」



 ……ホタルが呼んだ何かを待つ間、俺たちは異世界の話をした。


 ユイとユカが前世の家族で行った『夢の国』という場所の思い出は、なんとも不思議な話だった。


 彼女たち、特にチカが、前世で何度も勇者として魔王を討ち取ったという話には度肝を抜かれたが、それは二次元の出来事であって、現実では無いらしい。

 チカは「オタクですから」と言ったが、やはり意味が分からなかった。

 

「……それでね、『ゴムゴムー』って、ぶっとばすんだよ」


 ホタルは嬉々として、二次元の驚くべき異能者たちの話をしている。


 ――二次元とは一体何だ?


「――あ! 来た!!」


 俺が二次元について尋ねようとした時、ホタルが窓の外へ指をさす。

 俺はその指先が示す方へ目を凝らした。


「んー……――――!!」


 そこに見えたのは、空を飛ぶ地竜の姿だった。


 おそらくあの時の個体であろう地竜の巨体が、空を駆け徐々にこちらへと向かってきているのだ。

 言うまでも無いが、地竜には翼など無い。地を駆けるからこそ地竜なのだ。


 そして、管理局の上空辺りまでやって来た地竜は、ゆっくりと地上へと降下する。

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