辺境からのお手紙
辺境送りにしてやったあの女から手紙が来た? 荷物も? 荷物は確認しておけよ。毒など送り付けるあほなことはしないと思うが念のためな。
王太子妃に内定した私に対して、嫌味の一つを書いてきたのだろう。負け犬め。あたくしに勝てると思ってるのが間違いだ。
……なに? 辺境快適。ありがとう。もう戻る気はないわ。毎日すべすべになる温泉入って、おいしいもの食べて優雅に暮らしてる!? なにそれ!?
お礼に化粧水に使える温泉水送るって……。
それか、1箱12本入り。
きゃーって虫でも入ってたのか? 違う?
ふぅん?
ただの水ではないか。
いらなくはない。じゃあ、事前に毒がないか確認しないとって、侍女の務めですものって毒とかなんでお前らうきうきで……いや、怖い目しているな。一本ずつ持っていくがいい。そんないいものなのか? テレスの薬と言えば有名? 入手困難、伝手とコネがなければお目にかかれない? はぁ? 知らんな。
手入れに使ってくれる? 明日が楽しみ? ほぉ。
翌日。ぴちぴっちになっていた。
温泉水と鏡の中の自分を見比べぺたぺたと頬を触る。
うむむむ……。
長年の敵と和解するためには何がいるかな? ははっ、今までのことを水に流してというわけではないんだよ。お互いにやりあったんだ。今後も対等に、いや、今度は手を繋ごうってやつだ。お友達、そう、お友達になろう。
だが、いきなりやると相手もつけあがるしな。どうしようか。
まずは、手紙の返事を送ることにしよう。
こちらも快適に……でもないか。辺鄙なところに送れば殺し合いにならず済むとおもったんだがな。思わぬ効果があったものだ。
べ、べつに、心配してなどいなかったぞ。手紙の書き損じ。ないったらないのっ!
その数か月後に、野菜収穫が地獄。控えめに言って、悪夢。屈強な野郎どもを派遣してくれたら、温泉水送りますというSOSが送られることになるとかならないとか。