昨日の敵は今日の友!?
仇敵。
この名がふさわしい女。それが、シャーロット・ガルベス公爵夫人。その娘エリシア・ガルベスにお茶会に招待された。
さぞや嗤うのでしょうねと思いながらも立ち向かわねば女がすたると受けて立つことにした。
真面目が取り柄のような男に嫁いで25年。子に恵まれず苦悩した日々もあったが、可愛らしい娘と息子がいれば幸せだと思っていた。
その娘が、王太子妃の立場を巡って争い、敗北したのは最近のことだ。
あんな男勝りの女にと悔しい思いをしたが、敗北は敗北である。王太子の見る目のないと嫌味も夫の前だけで言うことができる。
なにが澄ました顔で、あの男にはローラはもったいない、だ。最初に婚約の話を持ってきたのは夫である。候補にあがったのならば、と娘の教育には人一倍気を使っていたのを知っている。選ばれるのは娘であると信じていたはずだ。
悔しい。
とっても、悔しい。
その思いがどうにも抑えられず、実家に帰ることにした。姉さん、どこいったの? というトンチキなことを言い出す息子の胸ぐらをつかむ前にだ。
どこで教育を間違えたのか。棒を振り回すのが危ないと剣術を習わせたのが間違いだった。もうちょっと情緒が育つような趣味を持たせればよかった。
まったく、わかってない男ばかりだ。
可哀想なローラはまあ、仕方ありませんわと肩をすくめて嫁いでいった。不憫で仕方がない。
ここは母が頑張って早く戻ってこれるようにするしかない。
それにはまず、王太子妃に内定したエリシアの懐柔しかない。
そうして、やってきたお茶会は様子が違った。
まず、執事が出迎えをしてくれた。心底ほっとしたように、だ。
怪訝に思いながらもお茶会の部屋へ案内される。
行き先は、侯爵家ご自慢の温室だった。季節を先取りしたように咲き誇る花々は美しく、異国からやってきた鳥もいると聞いたことがある。
財力だけでは維持できない権威の象徴。
うちでは無理だ。質実剛健を家訓としている。
それだけではなく、文武両道。可憐さはお呼びでない。
数代にわたって才女は出ても王妃は出ないわけである。前代には女騎士もいた。
覆せないなと諦め気分で奥へ進む。
だいたい、猟師の娘を貴族の養子にして妻にするような男が夫である。助けてもらったお礼にしても過分だろう。そのあたりの計算ができてない。きれいなお嬢さんを嫁にしていれば、王太子妃も奪い取れただろうに。
まったく、なってない。
お茶会の場は整っていた。
王太子妃になる予定のエリシア、その取り巻きと言われる令嬢が2人、さらに侍女が3人。それから怪しげな衝立。
あまりに場違いなのでお茶などの用意を隠す目的なのかと思えば、お茶の用意は別にされている。可憐な茶器が品よく並んでいる。
ようこそおいでくださいました?
お待ちしてました。ここに? って主賓の席なのだけど。
回りくどいお話は嫌いと伺いましたから率直に?
和解したい。
正気?
ローラさんとは和解しました。
……あの子もなにを考えているの? ならば王都に戻して、それはだめだと。
私の方には手紙の一つも……ああ、実家に帰っていると伝えていなかったわ。それはいけない? 荷物が届いているかもしれない。
え? 至急確認してほしい? 手紙を今? ……そ、そこまで鬼気迫るなら書くけれど、そんなすごい荷物なんてあの田舎からは来ない。
来る? すっごいのが、ある?
な、なに!? 迫ってくるの!
ああ、これ、知っているわ。テレスの薬。入手困難なのよね。うちでも年に数本手に入れるのがやっとで。
……産地?
え? あのド田舎、極めて辺境が!?
ぜひとも友好を築いて、婿から巻き上げていただきたい? 顔も見たこともないのだけど……。
わ、わかったわ。
その熱意に免じてどうにかやってみましょう。あまり期待しないでね。
それから、和解するにはそれなりにお互いの誠意というものが必要よね?
ねぇ? シャーロット?
衝立の向こうで無言でガッツポーズを取る清楚系侯爵、うっかり衝立を倒し、固まる。
頭痛そうな娘エリシア、腰に手を当てて高笑いを決める悪役系侯爵夫人。おろおろする周囲の人々。
と遠くから望遠鏡でそれを観測した、それぞれの夫がそこにいたりする。




