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悪女が嫁に来るらしい

短編よりもうちょっと続く何かです。

微妙に加筆、誤字脱字、カブトムシを修正してます。

語り手により人称が違います。テンションとシリアス度も違います。寒暖差にご注意ください。

では、一番手の領主さまより始まります。

 なー、うちの領地に悪女がくるって。なんでも、王都でやらかして、処罰的に? この地に送るんだってよ。バカにした話じゃね? そりゃあ、大田舎だけどさぁ。領主も畑を耕し、山に獣を狩りにいくようなとこだけどさぁ。

 大田舎ってなにって?大都会の反対な感じの造語かな。うん、今考えた。


 それはいいとして都会のお嬢さん、耐えられる? かわいそじゃね? あと俺との結婚が罰とか俺がかわいそじゃね?

 え、あ、まあ、歴戦の見合い敗者ですけども。

 お土産が悪い? そういうの2回くらいしかやってないし。俺、その時少年よ? 野山駆け回る野生児よ? それにしたってひどいって……。

 いや、その、なんだ、カブトムシもかっけーじゃん。ご令嬢向きではなかったのは認めるけど。でも、見合い相手の弟とかには大うけよ? あと実はお父さんにもウケが良かったのよ。昔欲しかったでかいカブトムシとかで感動されてさ。まあ、奥さんと娘の手前そう言うわけにもいかず、あとでこそこそと話してくれたけど。

 え、まだ交流あるのかって?

 あるよ。繁殖成功したよって報告の手紙くるしさ。というか集まりもあるし……。なにそれって、あー、秘密。うん、まあ、お見合いはうまくいかなかったけど友達は増えたよ。

 だから、あれはあれで良かったよ。多分ね。


 で、それはともかく。嫁が来るのよ。

 この領主館とは名ばかりの小屋に。毎年冬になると潰れんじゃね?と不安になるあの小屋に!

 どーすんのよ。人が増えたらベッド新しく作るしかないのに、部屋狭くて置けそうな気がしない。そうなったら新居つくるしかないし。軍資金? あるわけねーべ。

 うちは資源豊富だから山で丸太切って家建てられんだろ、とか考えてやがんだ。木材は干して使えるまで何年かかると思ってやがるんだ、あいつら。

 ほんとさ、なんだって思ってんの。

 あ、怒るなって? 別に怒ってないけどね……。いや、怒っていいってなによ。その矛盾したやつ。


 まあ、ともかく! こっちの事情はお構いなしにお嫁様はやってきちゃうんだよ。それも一か月後! お知らせが遅すぎる!


 怒られちゃうかな。卒倒されてちゃう? 罵倒とかもう、やだな。バリエーション豊かに罵られるの?

 え、罵られたいのかって? 別にそうじゃないけど、逆によ? 王都追放されちゃうような子がこんな辺鄙な辺境のド田舎で喜ぶわけないじゃないのよ。

 世を儚んでとかするような神経の細さはなさそーだけど。

 知ってんのかって? 噂だけね? 一応、遠目から見たことはあるかな。美人だった、かなー、くらいの遠さ。話によるとド迫力美人だって。俺、なんか、もう尻に敷かれるの確定じゃん。お嫁様の言いなりで、この領地は運営されますのよ、って感じじゃん。

 やる気ぃ? そんなんないよ。全領主を呼ぶ慣例の戴冠式にうっかり、お誘い忘れるようなこんな小領地をどうしろって。全人口100人だよ。その半分老人。隠居には最高ねって誘うからさっ!

 産業らしい産業なくて温泉と旅館だけ。あふれる湯治客しか現金落としていくやつ居ねぇのに。

 婚礼準備、ばっちゃんたちに相談しないとなぁ……。さすがに何もなしはかわいそ過ぎない? 俺も。祝われたい、可愛いお嫁さんをみたい、画家連れてきて描かせたい。

 でも予算がなー……。


 ……え、なに? 隠居したデザイナーがいるから、お嫁さんに最強のドレス作ったるって?

 布は? あ、伝手があるんでと、連絡をとると。湯治フリーパス一年分でいける? いけるのぉ? お針子たちは、温泉水でいいと。高級化粧水並に効く? はぁ、安上がりでいいけど。

 式場はまあ、広場でよくって。食材は、山狩りいく? え、俺も? 熟成期間いるからすぐに。わかったけど。

 装飾は? 木彫りで頑張る!? おま、土産物の熊しかないだろ。これで名の知れた彫刻家? ほんとかよ。

 司祭! 司祭どこから借りて……え、温泉卵売りのじっちゃんが元大司教。それ聞いてない。じっちゃん威厳ある思ってたけど、威厳あってよかった。

 おお、なんか、何とかなりそうな気がしてきた。


 じゃあ、各自頑張って、お嫁様をお迎えして。

 でも、まあ、一か月じゃ無理なとこあるよな……。秋祭りにあわせるのどうよ。ほら、三か月ある。その間に馴染んでもらって……。

 ……なー、ところで、新居は? え、一緒に住め。小さい家も楽しい? いやいや、お嬢様でしょ。俺下僕するの? そう。なんか、それも楽しそーなー気がー。

 それにしても悪女ってなにしたら悪女になんだろ。

 そのあたり聞いてみたいな。


 うん、なんか、楽しそうな気がしてきた。

「おいでませ、お嫁様」

 村の入口にはそんな横断幕がかかっていた。

「なにこれ」

 彼女は唖然と見上げて、それから笑い出した。心の底から始めて笑った気がした。

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