第4話 カモミールティー。
「よく眠れてる?」
「あ、、はい。お、お陰様で。キンモクセイ?の香りで、な、なんだかゆったり眠れる気がします。」
「そう?安眠の効果があるのよ。良かったわ。あなた、、、いつも疲れた顔をしているから。」
あの、変態王子の部下が、時々お菓子を持って訪ねてくるようになった。
今日は、プチケーキ。王室御用達のお店だ。
この子は、、、緊張しているのかと思っていたけど、もともと吃音なのかな?
本来女性用の美容サロンだから、珍しいものがたくさんあるらしく、キョロキョロしている。男性客も無いわけではないが、なにせ、年頃の?女一人でやっている店だから、危なそうな人は事前にお断りしている。
「あ、、、あれは何ですか?」
「つけまつげ。種類もいろいろよ。着けると目が大きく見えるのよ?」
「こ、これは?」
「色見本。今、イメージカラー選びが流行っているみたいでね?ドレスの色もだけど、口紅の色とかもね。」
と、お茶を入れながら説明する。
この子は、香り付きの紅茶も好きそうなので、今日はカモミールをブレンドしてみた。優しい香りだ。これも、、、脱力系の香りだわね。
「ほら、、、、自分の好きな色と、似合う色って、違うのよ。同じ人もいるにはいるけどね。はい、お茶。お砂糖は3つでいい?」
「・・・は、はい。」
この年で、お砂糖3つはさすがに恥ずかしいのか、少し照れた顔もなかなかカワイイ。ルーカス、と名乗ったこの子は、1か月に2.3度やってくるようになった。
閉店間際の、暇になった時間帯。
「な、なんだか、お、、、、落ち着きます、、、ローズさんの店、、、」
かわいいこと言うじゃない。ふふっ、、、
小さい部屋が、カモミールの香りに包まれる。
*****
教えてもらった花の香りが気に入ったので、王立植物園に問い合わせをする。一本だけあった。花がない時季には、なんてことない常緑樹。
説明を受けた通り、国内、というより、この大陸にはほとんど生育していないらしい。気候が合わないのだろう、と、聞いた通りの説明だった。
「愛好家が育てている場合があるかもしれませんが、大体において私有地でしょうから、探すのは大変だと思われます。」
ふむ、、、、
公務は相変わらず忙しい。執務室で日をまたぐなど、日常だ。
華国から取り寄せていた香油が届く。
何を勘違いしたのか、侍従長が喜んでいた。
瓶をあけると、柔らかな花の香りがふんわりと、夜に溶けていく。