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第2話 赤毛で埋め尽くされた舞踏会。

「まじかあ、、、、みんな本気だわね?」


10月の定例の王城の舞踏会に訪れたマリエスは、感嘆の声を上げる。


ほぼほぼ赤毛。地毛の方もいるのかしら?色味が薄かったり、濃かったりはあるが、、、あれはかつらかな?という人もちらほら。ドレスは王子様の瞳の色に合わせているんだろう、ほぼほぼブルー。色味は以下同文。


マリエスは、皆さんと同じ志向で、ブルーのドレスを用意していたが、どうもしっくりこない。赤毛のインパクトが強すぎて。


「いっそ、赤のドレスにしたら?いいんじゃないかしら?かえって目立つかもよ?」


マダム・ローズがマリエスのブルーのドレスを脱がせながら、そう囁くように言う。


赤のドレスに、黒の小物。襟もとのレースも、ロンググローブも靴も黒。良い仕上がり。かつらの装着も完璧よ?テキパキと化粧まで済ます。さすがね?


今日連れてきた侍女は、お仕着せの黒い侍女服におとなし目立たないメーク。髪はおさげ。

マリエスは、扇を広げて、ご令嬢達の着こなしを堪能する。


意外と難しい、赤毛とブルーのドレス。それぞれに差し色を入れたり、思い切ってシンプルにして、アクセサリーで個性を出したり、、、、いろいろ。今日の私の赤のドレスを引き立てるために集まった感じねえ、、、大成功だわ!!

しかし、、、こんなに赤毛の令嬢だけが集まるなんてねえ、、、、そんなになりたいものだろうか?ゆくゆくは王妃、とか、、、いろいろと煩わしそうだけどね、、、、


舞踏会が始まって、、、、からも、第一王子は席から立とうとしないし、前のめりになるわけでもなく、肘をついて顎をのっけて、ボーっと見ている様子。まあね、自分から望んでこんなに赤毛の女の子を集めたわけではないわよね?相変わらず、黙っているといい男だわね。金髪碧眼。変態だったのねえ、、、学院時代には気が付かなかったわ。


しかし!驚くことは中盤に起こった!!


執事長らしい髭のおじさまが、恭しくクッションに乗った何かを掲げて入場。

王子の前にそっと置くと、、、、ミュールだわ!!しかも、ガラスの、、、マジですか?


左足用のそれが置かれると、さすがに会場はざわついた。シンデレラさながらだわね。


「えーーーご来場の未婚のご令嬢の皆様に、履いてみてほしいと、、、ルシアン第一王子からのお願いでございます。ご辞退も差し支えございません。順番にお呼びいたします。」


髭のおじさまが、真面目な顔で言う。


ご来場のお嬢さま方は、キャーキャー騒ぎ出した。そう、今日この日のために、みんな足を磨いてきたに違いない。ローズの店も、忙しそうだったわね?


「大公家マリエス嬢。」


そうね、そうなるわよね、、、、


マリエスは楽しそうに赤いドレスをたくし上げて、履いていた黒のヒールを脱ぎ、ミュールに足を入れる。


ミュールは、、、もちろん特注だろう。ガラスの靴なんて、危なくて履けないよね?

クリスタルのようにきらきらと光って綺麗、、、そこに、手入れの行き届いた、形のいいマリエスの左足がそっと入れられる。ひやっとして、思ったより履き心地が良い。


王子は、、、ボーっと見ているだけ。コメントなし。何か一言位無い?


以下同文で、次々とご令嬢が呼び出され、次々と左足をミュールに入れていく。


王子は、、、相変わらず、、、、


「どのような踵をお探しなんですかね?」

こそっと、戻ったマリエスに侍女が尋ねる。マリエスは相変わらず楽しそうに眺めている。

「・・・さあねえ?どちらにしろ、私は跡取りで婿を取るから、関係ないのよね。ふふっ、、、」

「・・・・・」

「ただ、理想の踵、見て見たいじゃない?誰の、どんな踵なのかしら?ワクワクするわね?」


王子は、、、、ミュールに差し込まれた踵は見ているが、差し込んだ本人は見ていない。本物の変態かもしれない、、、、おとなしい、あまり感情を出さない、それでいて抜け目がない、、、完璧な王太子、だった気がしたけどねえ、、、変態か、、、まあ、私には関係ないけど。


辞退したご令嬢もおり、踵探しは終わってしまったようだ。

王子が、髭のおじさまになにやら耳打ちする。


「えーーー今回侍女でお越しのご令嬢方にも、履いていただきたい、とのことでございます。順番にお願いいたします。」


悲鳴が上がる。嬉しいのか、困惑なのか、、、まあ、確かにシンデレラは女中みたいなポジションだったし、、、、高位貴族の侍女は、子爵家や男爵家のご令嬢だったりするしね、、、、しかしねえ、子爵家や男爵家のご令嬢を娶った場合、その子はかなり苦労するだろうねえ、、、教育、一からだし、、、しかも、踵で選ばれるのって、、、


「では、大公家の侍女の方」

「・・・・・?」


マリエスが楽しそうに侍女の背中を押した。

「いえいえ、、、私は、、、辞退で、、、」

「まあまあ、行ってきて、ね?うふふっ。大公家が断ると、先に進まないから。」


渋々、迷惑そうな顔の侍女が王子の前に進み出る。


「失礼いたします。」


お仕着せのフラットな靴を脱いで、薄い靴下も脱いで、、、左足をミュールに入れる。

王子は、ぼんやりと眺めている。


私の侍女が履き終わり、靴下を履き、靴を履き終わると、、、びっくり眼で、王子が彼女を見ているのに気が付く。何かしら?


王子が髭のおじさまに何かささやき、、、、急にこの催しは中止とされた。

何?何?何???


「うふふ、、、あなただったんじゃない?理想の踵?ね?」

「・・・・・」


マリエスが楽しそうに笑う。この子、金髪だけど、、よほど踵が気にいっちゃったのかしら?うふふっ、、、、


ざわざわしながらも、普通にダンスが始まり、赤毛で埋め尽くされた10月の舞踏会は終わった。




*****


驚いた。

目が離せなくなった。


その踵を持った女の子は、、、、金髪だった、、、










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