第16話 またね
弟が国元に帰って、おじいさまの所から学院に通うことになった。
おじいさまには、一緒に屋敷に来るように言われていたんだけど、、、、折角始めた商売もまあまあ、良い感じだったので、母から離れて実力を試したいのもあったし。
コツコツ貯めた貯金で、小さい店を買った。他国民には登記が出来ないので、おじいさまの名前にしておいた。
18やそこらの小娘に客商売は厳しいでしょ?という母のアドバイスを受けて、25歳のマダム・ローズ、になった。赤毛だった私は大きくなって母の言った通り金髪になったが、母や弟と同じ、黒髪にしてみた。泣き黒子もつけた。
小さい頃からいいお友達だったマリエスが、お客様第一号。そして、彼女が口コミで広げてくれたおかげで、結構繁盛した。何事もなく、過ぎていくはずだった。
あの、、、銀髪の子《《ルーカス》》に会うまでは、、、
そう、気になっていた。連絡は出来なかったけど。
ルーのことを話題に出すと、、、父も母も、、、とても悲しそうな顔をした。
聞いてはいけないんだろうなあ、と、子供心に思った。
ルーのお父様は、別荘にいる間、ひと月に一度は必ずやって来て、一日ルーと過ごした。そうして、、、次の年のキンモクセイの花の降る中、ルーは父親と帰って行った。
短かった髪は整えられ、にっこり笑って、、、またね、と手を振った。
またね、、、
あの子の掌の傷は、消えなかった。
それから間もなく、私たちは一家で隣国に越した。苗字も変わった。
父上は、王城の財務方の仕事をしていたが、大きな商社に就職した。
母は、もともと好きだった化粧品の開発と販売を。かえって生き生きしていた。
私と弟の教育は変わらなかった。ゆくゆくは、おじいさまのところに弟を養子に出す話が決まっていたんだろうと思う。
またね、、、
あまりに冷たいルーカスの手を取って、温める。ルーなの?、、、何となく思っていたのよ、、、小さいルーは、こんなに大きくなったのね?
手のひらの傷は、、、消えなかったのね?
懐かしくて、泣きそうだった。
一生懸命温めた。いつかと同じように、、、あなたが、暖かい光に包まれますように、、、
またね、、、
*****
「・・・思い出さないままでいてほしかった、、、」
「・・・・・」
「王妃様は、、、、お元気で?」
「あれは、、、もう誰の声も聞こえない、、、私は不貞をしてはおりません、、、、と、それだけを言い続けている。」
「ご実家から連れてきた教育係に、、、、不貞を疑われて、、、、銀髪は陛下の曽祖父の色が出ただけでございましょう?」
「ああ、、、あれが、、そのことで追い詰められていたことも、私は気が付けなかった。あんなことになるとは、、、、」
「・・・・・」
「フリッツが、、、弟が、、金髪だったのが、、拍車をかけてしまった、、、、」
「そうですね、、、あの日、別荘で見て、、年頃より小さく、栄養状態も悪く、、、体中傷だらけで、、、あの手、、、驚きました。髪も、、、無理やりはさみを入れたような、、、」
「・・・・・」
「小さい頃のことを忘れていても、自分の髪色はお好きになれなかったようですね、、、いつも、金色に染めていらした。」
「・・・・・」
「金髪のルシアン様は、堂々となさっておりました。王妃様が望んだとおりの、王子然と。」
「・・・・・ああ、、、、本当に、、、、実の母親に、そこまでのことをされた記憶が、、、」
「・・・・・陛下、、、、ありのままを、受け入れるしかございません。」




