第六話:焦燥
くぅぅ…
小さい頃はよく考えたものだ。
なんで星に手が届かないのか。高速道路はどうして透明なのか。子供はどうやってできるのか、とか。
けれど真実を知ってしまえば、星が遠いことも、高速道路が透明でないことも。えっ…あ、うん。子供の作り方も。
どれも当たり前だったかのように、日常に浸透し、現実となる。何も知らなかった時は、全てが幻想で現実で、日常だった。
『生き物は死んだらどうなってしまうのだろう』
そんなことすらも、絶対に分かり得ないこととして、現実となり、日常に溶け込んだ。けど誰もそのことに気づかない。現実だと考えていたものが実は幻想で、幻想であるはずのものこそが現実である。それすらも分からないけど。
なんて…何語ってんだよ俺。ダッセー、なんて…
言えないよな。もう。
*****
「…ろ‼︎…きろ‼︎」
なんだよ、うるさいな…折角いい雰囲気で語れてたのに。
遠くから朧げに聞こえる声で俺は目が覚めた。
「起きろ‼︎起きろ、将也‼︎」
突然名前を呼ばれたことに驚き、俺は勢いよく上半身を起こした。
辺りを見渡すと、全く見覚えのない場所にいた。
一体何があったんだ…チンピラ男に殴られて死を覚悟したとこまでは覚えてる。
そこから何があって、こんな所に…
「まさかここが死後の世界か…」
次の瞬間、俺の体は勢いよく飛びついてきたナニかと衝突し、ベッドに押し戻された。
「グハッ…か、身体中が…痛い…」
「よかった…本当によかった。ぐすっ…」
俺に飛びついてきた物体は涙声で、ずっと「よかった…」と言っている。
「あぁ…でも本当に良かったよ。一瞬呼吸が浅くなってたから、死んじまうと思ったぜ。」
2人とも、俺の無事を喜んでくれている様だ。
なんだか、胸がモワモワする。が、悪い気分ではない。ん…?2人?ていうかこの声、聞き覚えが…
「だけど…もっとビックリなのが、早乙女さんがこんなに感情的になるなんてなぁ…」
えっ、はっ…待て待て待て。冷静に状況を把握しろ。
俺が横たわってるベッドに横に立っている金髪ピアスは、今日知り合ったばかりのクラスメイト「葉山優希」だ。
それで、俺が助けたのは、早乙女で…葉山の言う通りならば、今抱きついているのは…
「さっ…早乙女さん‼︎いつまでそうして…‼︎」
途端に、顔が熱くなった。気温が高いわけでもないのに、顔だけが異様に熱くなり、心拍数が上昇しているのが分かる。ついでに耳まで熱々だ。早乙女の吐息がハッキリ聞こえる。スゥスゥと…なんとも可愛らしい。
え、スゥスゥ…?それって…
「ちょ…えっ、早乙女さん‼︎寝てるし‼︎起きて、ここで寝るな!」
この人…一度寝るとテコでも起きないな。
けどまぁ…相当心配してくれたみたいだ。安堵で疲れが出たんだろう。
「おいおい…まさかお二人さん、もうそんな関係になってたんですかぁ。それならばしゃーない。お邪魔虫は退散しますか」
「待って待って待って‼︎別にそんな関係じゃないから‼︎だからなんとかして‼︎」
「安心しろよ。ここは早乙女さんの家で、誰もいないらしいから。ごゆっくり〜」
「だから本当に違うんだってば‼︎頼むから助けてくれ、葉山‼︎」
まさか、こんな事になるとは…色々と突っ込みたいところはあるが、今はそれどころじゃない。
頼む、助けてくれ葉山。
「はいはい、分かったよ。ただその前に…」
葉山の声色が変わった。一気に空気が重たくなる。
「一つお前に、聞きたいことがあるんだ」
それは構わないけど…この状態で⁉︎
それを、声に出したのと同時だった。
葉山のたった一つの質問で俺は、自我を保てなくなりそうになった。
「伏原喜介って分かるか?」
ふくはらきすけ
俺はこの名を絶対に忘れることはない。
そして今日という日も、忘れすことはできないだろう。
結構陰謀論とか好きでよく見るんですけど、『実はこの世界は作られた世界』ってのを見て、「これは面白そうだ」とビビッときちゃいました。




