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道化の心を奪うのは  作者: ゆーま(ウェイ)


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Break&memory:知るべきもの

「風が強い日はあまり外に出るなって、ばあちゃん言ってたな…」

昨日の大雨が噓だったかのように、太陽が雲の切れ間から顔を出す。さらに、梅雨時期特有のジメジメとした湿度が夏が近づいているのを実感させる。今日の空には怪しい雲は見当たらないので、昨日のようにゲリラに苛まれる心配はないだろう。

結局、傘を早乙女に渡した俺は、家に着いた頃にはビショビショになっていた。そのせいで麻樹に笑われるし、財布の中身はぐしょ濡れになるしで最悪だった。

昨日のことを思い返している間に、教室の前まで来ていた。だけど、俺はすぐに教室に入らず、あることを思い出していた。

そういえば、昨日のあの人…同じクラスだって言ってたよな。

昨日、突然の雨天に苛まれて為す術がなかった俺に生徒会の貸し出し傘の存在を教えてくれた救世主。まぁ結局びしょ濡れになって帰ったんですけど。

あの人の名前、出席簿になら載ってるかな。

廊下と教室を隔てるドアを開くと、真っ先に目に入ったのは、目が合った瞬間に微笑んでくれた早乙女だ。そしてその次に目に入ったのは、遅刻して怒る先生でも、遅れてきた俺をクスクスと笑う葉山でもなく…

窓側の一番後ろ、ホームルームにも関わらず一人机に突っ伏せている昨日の彼だった。


           *****


うちは父も母もいて、母方の祖母と祖父に僕を含めた五人家族だった。小さい頃から今もずっと、家族仲はいい方だと思う。

父と母は、いわゆる「普通の夫婦」といったところだろうか。言い方を変えると、とても家族っぽい。普段は仲がいいけど、そこそこな頻度で喧嘩もするし、互いの好みも把握していてプレゼントなんか渡したりしてる。僕はそんな父と母が好きだ。だけど、親としてではなく人として好きという意味だ。

僕はいつも、父と母を客観的な立場で語る。それは常に両親を子の時点で見ていないからだ。

それには歴とした訳がある。


小学二年生の時だったかな。じいちゃんが脳梗塞で亡くなった。葬式のこととかはあんまり覚えてないけど、すごく悲しかったのを覚えてる。

それから家族は四人になった。相変わらず父と母は仲良しのままだった。母はしばらく落ち込んでいたけど、数日が経った頃にはいつもの調子に戻っていた。さすがに空元気だってことは分かってたけど、それを口に出すのは野暮だろう。

変わったのは僕とばあちゃんだ。

いままでの僕とばあちゃんは「一般的な家族」の関係だった。それなりに仲が良いってことだ。

ばあちゃんは無口な性格で、じいちゃんの前でも口を閉じていたけど、いつもじいちゃんの肩に寄りかかっていたからそれでいいと思っていた。

けど、じいちゃんがいなくなってからのばあちゃんは、僕の前でだけよく喋る人になった。

若い頃のじいちゃんの話、子供だった頃の母の話、母が父を連れてきた時の話。いずれも昔話だった。その中でも僕が興味を惹かれたのは、若い頃のばあちゃんの話だった。

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