第五十三話:テスト対策
帰ってきた日常
かくして、俺達兄妹の父親捜しは幕を閉じた。
父親が起こした事件の被害者に因縁を突き付けられるも、夜崎さんと覆面Yの協力によって解決。そこから無事に被害者・楓葉歩と和解することができた。その日の夜にはみんなでパーティーをした。そして、すごく懐かしく感じる家に帰ると、遅い時間にも関わらず母さんが起きていた。怒られるだろうなと思ったが、母さんは「おかえり」と一言、優しく微笑んですぐに寝てしまった。
だがこの一件で負った傷は深く、しばらくの間は麻樹も俺も心身ともに参っていた。
俺は長いこと自分を隠して生活しているので平然を装うのは難なくできたが、父親が殺人を犯し、多くの人を傷つけ、決して少なくない数の命を奪った。そんな非現実的な現実には、さすがの俺も疲弊する。俺でこれなら麻樹なんてもっと辛いだろう。
その後、夜崎さんに色々と支えてもらい、二週間が経つ頃には元の生活に復帰できるようになった。
楓葉の復讐から始まったこの騒動は、数多くの疑問は残る形で終止符を打ったが、それ以上考えたって殆どが俺達には手が届かないものだ。
俺達に出来ることといえば、湖山彩子さんに花を手向けるくらいだ。
なんやかんやであれから一ヶ月が経ち、少し暑さを感じる時期になりました。
もう既に色濃い思い出を作った高校生活、この季節は退屈になる。それはなぜか、鷹住高校の行事の大半が九月・十月の秋ごろに行われる。文化祭に体育祭、三年生では修学旅行など。風の噂によれば球技大会なんてものもあるそうだが、それには極力参加したくない。とまあ、この季節の楽しみといえば夏休みぐらいだろう。と言っても夏休みには俺にとって重要な…
「さぁて将也、これから共に青春しに行こう」
葉山の戯言にもそろそろ慣れてきた季節でもある。これでも通常通りだ。
「馬鹿な事言ってないで早くやれよ」
「とうとう将也まで冷たくなってきた~」
この時期は退屈だ…いや、退屈と言うと語弊がある。そうだ、多くの学生を恐れさせる一大イベント(?)がある。そう、期末考査だ。
「やっぱりみんなで補習は青春の代名詞だよな!!」
「そうならないためにみんなで勉強してんだろ」
今日でテスト一週間前。先月からずっと勉強してないと言い張ってきた葉山もさすがに焦りを感じたようで、今回は葉山主催で放課後の教室で勉強会を開いている。と言っても、俺はさっきから葉山の相手をしてばかりで全然進んでない。真面目に勉強してるのなんて早乙女と尚輝だけだ。
「お前はもっと真面目にやれよ。何のために集まってんだ」
「これだから将也は…勉強会と騙って遊ぶんだよ」
「よし帰るか」
「待てすまんごめんすいませんでした」
見事なまでの掌返しだ。
「さてと…とりあえず提出課題は終わったぜ」
「はぁ!!尚輝おま…」
尚輝の名前が記された、しっかりと丸つけまでされたワークを見て震え上がる葉山。
「はぁぁぁぁぁ!!!!裏切ったな尚輝ー!!」
「だから早くやれってんだろうがバカ!!」
いつもならここで、尚輝は葉山の頭を叩くとこだが今回はそれでは収まらかったようだ。どうやらお怒りの尚輝は、葉山の胸倉を掴み思いっ切り頭突き。
「あ…あばぁ…」
うっわ…痛そう。
「お前は毎度遅いんだよ。だから期限までに間に合わないんだろ」
毎回間に合ってないのか…確かに一切手つけずに遊んでばっかだしな。それもあるだろうけど、一番の原因は…
「それに、いつまで左利きの練習してんだよ」
そう、葉山が遅れてる一番の原因は利き手を使ってないことだ。
先月、楓葉の一件からしばらく経った頃。葉山はいきなり「オレは今日から左利きになる!!」と宣言してから今日までずっと左利きの練習をしている。一ヶ月の継続によってある程度様になっているみたいだが、テスト勉強に支障が出るならやめるべきだろ。
「そもそもなぁ!!お前らが早すぎなんだよ、まだ一週間前だぞ。将也なんか昨日終わらせたんだろ⁉オレは全く勉(略)」
「はいはい。これからはギリギリになって写させないからな」
「えぇ~」
人の写しといて間に合わないのかよ。
「てか早乙女さんは?真剣にやってるけど終わった?」
そういえば早乙女は勉強始めてから一言も喋ってないな。あの子もやるときは周りが見えなくなるくらい集中してたな…
「え?あぁ、ごめんなさい。つい没頭してて…」
勉強にそこまで熱が入ってるところはあの子とは違うかな。明日香は勉強嫌いだったからな。
「早乙女さんは提出課題終わった?」
「課題なら先週のうちに終わらせちゃった」
っ……
「え?」
「は?」
「まじか…」
俺たちは予想外の返答に驚き言葉を失う。流石は早乙女といったとこだが、いくらなんでもテスト二週間前に課題を終わらせるのは早すぎなのでは…と心の中で呟く。
「さっ、優希も早乙女さんを見習えよ」
「うん、葉山君は早く終わらせたほうがいいよ」
「はぁ⁉さては二人ともグルだな。オレは課題なんて絶対にやらな…」
葉山は背中を押され嫌々ながら机に向かわせられる。そこまでして課題をやりたくないのかと内心呆れている。
「また桃香でも呼ぼうか…」
尚輝に耳打ちされ、突然課題に取り組む葉山。一体何を言ったんだ…?
「まっ、これも青春か…」
なぜか葉山の一言に感銘を受ける。確かにな、以前の俺はみんなで勉強するなんて有り得ないことだったからな。そう考えるとこんな日常が送れてるのは…
「あぁ?」
「すいませんした」
…青春、か?
各々が各々のペースで勉強に取り組んでいる。葉山も今日以来、グダグダながらも着実に課題を終わらせていた。
こうして迎えたテスト当日。俺は所々悩みながらもいい線いったのではと自信に満ち溢れる。平均点は超えただろう。
早乙女と直樹も順調にいったみたいで、最終教科の後は晴れ晴れとした顔だった。…葉山に関しては随分落胆していた。まあ妥当だろう。
そして無事にテストは返却された。だが、その結果は驚くべきものとなった。
おかえり青春。おかえり日常。
みなさんどうでしたか?久しぶりの日常回は。
ずっとシリアス路線だったせいでこの小説自体をサスペンスだと勘違いする人がちょくちょく見られます。すいませんでした。
これからはちゃんと四人の青春を書いていきますので、お楽しみに




