第四十三.五話:隠されたY
夜崎加澄はなにを隠す
二人の男女を隔てるカウンターの上には、飲みかけのウィスキーが二つ置かれている。
このバーの店員曰く、ここは簡単に手に入らない酒もタバコもあるそうだ。知る人ぞ知る隠れた名店ってやつだろう。それも、超が付くほどの頭脳派凶悪犯「命苫将人」が経営してたのだから当然といえば当然だ。まあ、僕はお酒よりコーヒーの方が好きだけど。
僕は、対面に座って様々な酒を注いでいる女性に呼び止められてここにいる。
「あの…加澄さん。なんで僕だけ返してくれないんですか?」
つい先刻まで例の命苫兄妹と共に目の前にいる夜崎加澄から命苫将人に関する話を聞いていた。だがその用事は既に済んでいる。僕をここに留まらせた理由が分からない。
「もうこれ以上用は無いですよ。それとも…」
さっきから一切質問に答えない加澄さんを問い詰める。
「一緒に飲もうとか言わないですよね」
彼女は僕の目的を知る唯一の人物だ。そんな無神経なことを言う人じゃないってことはよく知っている。だからこそ僕は彼女の目的が分からない。彼女が持っている情報は、とっくの昔に聞いている。なにを企んでいるのやら…
「ごめんなさいね。どうしてもあなたに会ってほしい人がいたのよ」
僕は彼女の返答に困惑した。顔に出ていたのか、彼女は僕を見て少しだけ口角を上げた。
「いいわ。入って来て」
彼女の呼びかけた直後、店の裏から姿を現したその人物は驚愕するほどの予想外の格好だった。
「加澄さん…これは?」
「これなんて失礼ね。この子があなたに会ってほしい人よ」
加澄さんがそう言う人物は黒スーツを着ていた。もちろんそれにも感じることはあるが、それよりも頭を覆うプロレスマスクが僕に衝撃を与えた。
「はじめまして、・・・さん。ワタクシのことは『覆面Y』とでも呼んでください」
覆面Yと名乗るその人物は、変声機に通した機械質な声をしていた。
「これは皮肉ですか?」
僕は力強く加澄さんを睨んだ。いつまでも目的を達せない僕を憐れんでいるのか。それとも目的のために動いている僕を嘲笑っているのか。とにかく今は彼女が憎かった。
「落ち着いてください。ワタクシはアナタに手を貸したい」
マスクで表情が見えないせいで、余計に気味が悪い。
「加澄さん、貴女はなにがしたいんですか?」
その時の加澄さんは、いつものように綺麗な笑顔を浮かべていた。
「今後ともよろしくお願いいたします。・・・さん、いや、湖山彩人さん」
やっと出てきたぁ!!!!!!
連載当初から出したかった覆面Yがようやく登場した~
まあずっと出てましたけど




