第二十九話:ノスタルジア
破_「紫苑」は独り、狂い咲く
結局、夏休みに行くことだけ決め、帰る方向が違う二人と途中で別れた。葉山は楽しみができてハイになってたからか「早乙女さんに予定聞いとけよ~」と叫びながら離れていった。
そうして二人と別れた後は早乙女と合流する。一緒にいるところを周りに見られて変な噂が立つと困るため、市の中心部から離れた場所で会うことにしている。早乙女はいつも他の友人と先に学校を出るので、一足先に着いて俺を待ってるだろう。もうそろそろ日の入りの時間だ。暗い中女子を待たせるわけにいかないので、早足で早乙女のところへ向かう。
二人と別れてから10分程歩いた頃、遠方に早乙女の姿が見えてくる。こちらに気づいた早乙女が手を振って近づいてくるので、俺も駆け足になる。
途端、先生との会話が脳裡をよぎる。早乙女はあの事故のことを知らない。だから怖がることは何もない。そのはずなのに、足を踏み出すことに恐怖を感じている。
『私よりあの子のほうが好き?』
違う…違う…そんなわけ、ないだろ。いつ何時もあの子のことを考えてるのに。なんでそんなこと言うんだよ…
『だって将也…私のこと…』
「命苫君?どうかしたの?」
早乙女…?そうか、また一昨日みたいなことが起きたのか。声の主は本当にあの子なんだろうか。だとしたら俺はあの子と再会するべきじゃないんじゃ…
「なあ早乙女…」
「ん?どうしたの?もしかして体調が悪かったり…」
早乙女はあの子と似て優しいから、こんな俺のことも心配してくれてる。
「一緒に行きたいところがあるんだ。ついてきてくれないか」
こんな彼女にこれ以上迷惑はかけたくない。そんな俺の思いとは裏腹に、わがままばかりが口から出てしまう。
「行きたいところ?」
何を勘違いしてるんだ俺は。早乙女にとって俺はただの友達だ。別に恋人になりたいとか烏滸がましい願いは無い。ただ、早乙女が笑ってくれるとあの子に許されてる気がするんだ。
「いや…やっぱ何でもない。忘れて…」
「いいよ、行こ。命苫君の行きたいところ」
…!!信じられない言葉に驚きを隠せない。なんで…なんで早乙女が俺なんかと…出会ってからたった一週間しか経ってないのに、どうしてそこまで…
昼間に押し殺した涙が、また溢れ出そうになってしまった。いや、もしかしたら泣いてたのかも。それでも早乙女の優しさが俺を包んでくれた。
「ここが命苫君の言ってたところ?」
目的地に着くや否や、早乙女は驚いた表情をした。そりゃそうだ。俺だってこんな所に突然連れて来られたら、驚愕するだろう。
「そう。思い出の場所なんだ」
もう手入れすらされなくなった、夕日がよく見える公園。五時頃になると夕焼け小焼けが隅にあるパンザマストから鳴り響く。
そうだ…明日香とよく遊んだ思い出の公園。もう過去になってしまった、思い出の。
「ねえ、なんで私を思い出の場所に?」
そう言って不思議そうにこちらを見つめる早乙女は、無邪気なあの子に、非常によく似ている。俺は彼女の潤った瞳に動揺を隠せなかった。
「だってそれは……」
言い切れずにそっぽを向く。すると早乙女は俺の腕をつかみ
「命苫君~どうしたの~?」
と言い上下に激しく振る。めっちゃ痛いんですけど…
「早乙女に…聞いてほしいことがあるんだ」
それを聞いた早乙女は振るのをやめ、しばらく黙った。やっぱり嫌だよな…分かりきってたことだが目の当たりにすると心が痛む。
突然、俺の体は不自然な力に引っ張られた。
「あそこのベンチに座ろ」
まだ離していなかった俺の腕を、早乙女は右手で引っ張る。空いている左手で例のベンチを指差す。
「え?あ、うん」
結局、早乙女に引っ張られ二人でベンチに座る。隣り合わせで座り、距離が近いせいで緊張する。加えて夕焼けに当たって茜色に染まっている早乙女の頬が、俺の鼓動を高める。
「それで…話したいことって?」
そうだ、話す覚悟はできたんだ。後にどんな反応をされてもいい、嫌われたっていい。早乙女に聞いてほしい、ただそれだけだ。
空気が張り詰める。いつも逃げてきた。逃げて逃げて、それでも後悔は消えない。でもここでまた逃げたら、今まで以上に後悔する。
「聞いてほしいんだ。俺の………」
話し終えた後、早乙女は優しく声をかけてくくれた。
みなさんも優しく見守ってください…
でも次回は期待を裏切るかもしれません!!その時はごめんちゃい




