第ニ十八話:先見の明
Σας ικετεύω να με συγχωρέσετε.
不思議な出来事から二日後、今日も俺は相談室で先生と話している。いつもと異なり昼休みに俺が先生を呼んだ。
「それで、不思議な出来事ってのはなんだ?」
あの後俺は、あれは夕凪の幻と関係があるのではという考えに至り、先生に伝えようとした。だがその日の昼から昨日まで出張に出たと聞かされた。そして先生が戻ってきた今日、やっと話すことができる。
「はい…いつも通り二人で弁当を食べて教室に戻ろうとした時に、窓が開いてることに気づいて閉めようとしたんです。そしたら視界が真っ暗になって声が聞こえたんです。あの子の声が…」
正直なところ、ただの勘違いだって思ってる。もし現実だったとしてどうして今になってそんなことが…
「それが夕凪の幻に関係があると…?」
あれは本当に一瞬のことだからそうなのかは分からないが…
「見たんです。当時のまんまのあの子の姿を…」
カーテンと見間違えたのかもしれない。ヒラヒラと風で煽られていたそれは、あの子のワンピースによく似てたから。でも夕凪の幻に近づいてあの子と再会できるなら…話せることは話しておこう。
「………」
相談室に沈黙が走る。先生は下を向いて何かを考えている様だった。きっとお互い思い出しているのだろう…忘れることのできない人の姿を。
体が静けさに慣れてきた頃に、沈黙を破ったのは先生だった。
「なあ将也…お前の心が許すなら…」
大きく間を空けて続けた。
「あの事故のこと…お前の口から話してくれないか…?」
俺はしばらく何も考えなかった。体が自然と思考を止めてるんだろう。そうじゃないと…正気を保てないから。思考が再開し初めに浮かんだのは、強い憎悪と、先生への嫌悪だった。
俺は先生を鋭く睨んだ。当てようのない怒りを込めて。だが目に入ったそれが、負の感情を掻き消した。申し訳なさすら感じる、真剣な眼差しを向ける先生の姿が。
「せんせ…俺…」
目尻が熱くなるのが分かる。俺は必死に涙を堪えた。
「今じゃなくていい。お前がその気になったらでいい。無理させてまで聞こうとは思ってないよ」
言い終えた先生は、俺の頭に手を乗せる。
「きっとお前を恨んじゃいないよ」
それ以降は何も言わず、先生はドアに向かう。引手に手をかけところで「授業遅れるなよ」と呟いて部屋を出て行った。
先生が退室したのを確認し、思わず俺は床に崩れ落ちた。顔が熱くなる、気持ちが溢れ出る。さっきまで堪えていたものが体の中で暴れているように。
「うっ…」
それを止めるのには、道化の俺でも苦戦を強いられた。
帰り道でも俺は呆然としていた。尚輝と葉山はそんな俺を心配そうに下校している。
「な、なぁ将也…どうした?」
葉山が声をかけてくれたが、今の俺に返答する気力は無い。というよりも生気が無いという方がより正確だろう。
「どーせまた怒られたんだろ」
一昨日あの後、授業に遅れた挙句、生意気な態度で挑んだせいで、放課後その時の授業担当に説教を受けて二人と帰れなかった。尚輝そのことを言っているんだろう。まあもっとも、毎日のように色んな教師から怒鳴られてるが。
「それでよ、空亡のなんとかってやつは…」
「夕凪の幻だバカ」
いつもより当たりの強い尚輝に、優希はてへぺろっとだけ返した。屈強の精神とはこのことか…羨ましい。
「なあ将也、それ今度確かめに行こうぜ」
相変わらず優希はパワフルだな……
「はぁ⁉」
直前までの憂いを上回る程の驚きで、思わず変な声を出してしまった。その横で尚輝が苦い顔をしている。ほんとに奇想天外な奴だな全く…一応、誉め言葉だよ。
「確かめるにしたっていつ行くんだよ?」
「う~ん…そうだよなぁ」
考えてなかったのか…ついでに自由奔放も加えよう。
「夏休みとかでいいんじゃね?」
あんなに嫌そうにしていた尚輝が意見を述べる。そのせいか、俺たちはしばらく沈黙を続けた。
「…いいな!!夏休みに行こうぜ」
「はっ⁉マジで行く気か?」
なんだかこの騒がしさにも慣れてきたな…あの時、道化になることを選んだ俺にこんな温かさ……いいのかな…?
「なっ⁉いいだろ将也」
「えっ…?」
「だからさ、夏休み、四人で海行こうぜ!!そして夕凪の赤星を確かめに…!!」
「幻だっての」
優希は尚輝に頭を叩かれてもニコニコと俺を見る。こいつらといると許されたって思えてしまう。
それに先生の話が本当なら…あの子にもう一度会えるんだ。叶わないと思っていたことが起こるかもしれないと考えると、胸がムズムズする。
「みんなで海か…楽しそうだな」
「だろぉ」
「お前は水着の女子を見たいだけだろ」
その為に道化じゃない俺になったって、ちょっとくらいならあの子もきっと許して…
こいつら4月に夏の予定立ててやがるぜ…
どうでもいいけどギリシャ語ってなんかカッコイイ
たしかアラスター(復讐者)もギリシャ語でした




